ミハイル・ブルガーコフ 法木綾子訳(群像社)
《あらすじ》
(第一の書)
二十世紀を代表するヨーロッパの大都市にして<第三のローマ>を
自称してきた政治と宗教の中心モスクワ。その都心の公園に現れた
二人の文学者と見知らぬ外国人との間で始まった無神論談義がみ
るみる文学界の頂点に立つ編集者の首をチョン斬る様相になるや、
話はにわかに二千年の時を越えイェルシャライムの宮殿のローマ総
督ピラトと囚人イェシュアの会話をたぐりよせる。外国人の黒魔術
師一行の登場で突如狂いだしたモスクワの文化芸術の権威、その権
威によって全精力を傾けて書いたイエスの時代の小説を葬られた
作家とその彼を巨匠と慕う女性マルガリータの狂わされた人生--
現代文学の運命を象徴するブルガーコフの代表作、ついに新訳で登場。
《この一文》
” 聖歌隊の音頭取りはアルバート広場に向かって飛ばして行くバスにひらりと飛び乗ってずらかった。追跡する相手を一人失い、イワンは猫に注意を集中し、見ると、この変てこな猫は停留所に止まっている《A》と書かれた電動車のステップに歩み寄り、悲鳴を上げる女性を厚かましくも押し退け、手摺りにしがみつき、果ては蒸し暑くて開けてあった窓から女性の車掌の手に十コカペイカ銀貨をねじ込もうとまでした。
イワンは猫の振る舞いに度胆を抜かれ、角の食料雑貨店の辺りで呆然と立ちすくんだが、それよりもはるかに驚きだったのは車掌の振る舞いだった。市街電車に入り込もうとする猫の姿を目にするなり、彼女はわなわなと怒りに打ち震えながら叫んだ。
「猫はダメ! 猫連れはお断り! しっ! 降りないと警察を呼ぶよ!」
車掌も乗客も誰一人、事の本質に驚こうとしなかった。問題は猫が電車に潜り込もうとしているということではない、そんなのはまだ序の口で、問題は猫が支払いをしようとしていることなのに!
---[第一の書]より ”
私の好きな本ベスト5には確実に入るであろう傑作中の傑作です。
図書館で2度借りましたが、今日とうとう大枚をはたいて(大袈裟)購入いたしました。
とっても満足です。
これでいつでも読み返すことができます。
これほどまでに私の好みにぴったりとあてはまる物語は他にちょっと思い付きません。
つまらない部分が全くないのです。
登場する人物が皆、あまりにも個性的かつ魅力的。特に大きな黒猫のベゲモート(時々「猫顔の男」の振りをするお茶目な大猫)が最高。
そして、話の構成が最高! 何か所か矛盾するところがあるものの、そんなことが気にならないくらいに面白いのでした。
この感動を名作の言葉を借りて表現するならば、このように言えるでしょうか。
「(立ち上がる)不滅です!(両手を前にさしのべる)不滅です!」
(カレル・チャペック『ロボット』より 全然関係はないけど)
《あらすじ》
(第一の書)
二十世紀を代表するヨーロッパの大都市にして<第三のローマ>を
自称してきた政治と宗教の中心モスクワ。その都心の公園に現れた
二人の文学者と見知らぬ外国人との間で始まった無神論談義がみ
るみる文学界の頂点に立つ編集者の首をチョン斬る様相になるや、
話はにわかに二千年の時を越えイェルシャライムの宮殿のローマ総
督ピラトと囚人イェシュアの会話をたぐりよせる。外国人の黒魔術
師一行の登場で突如狂いだしたモスクワの文化芸術の権威、その権
威によって全精力を傾けて書いたイエスの時代の小説を葬られた
作家とその彼を巨匠と慕う女性マルガリータの狂わされた人生--
現代文学の運命を象徴するブルガーコフの代表作、ついに新訳で登場。
《この一文》
” 聖歌隊の音頭取りはアルバート広場に向かって飛ばして行くバスにひらりと飛び乗ってずらかった。追跡する相手を一人失い、イワンは猫に注意を集中し、見ると、この変てこな猫は停留所に止まっている《A》と書かれた電動車のステップに歩み寄り、悲鳴を上げる女性を厚かましくも押し退け、手摺りにしがみつき、果ては蒸し暑くて開けてあった窓から女性の車掌の手に十コカペイカ銀貨をねじ込もうとまでした。
イワンは猫の振る舞いに度胆を抜かれ、角の食料雑貨店の辺りで呆然と立ちすくんだが、それよりもはるかに驚きだったのは車掌の振る舞いだった。市街電車に入り込もうとする猫の姿を目にするなり、彼女はわなわなと怒りに打ち震えながら叫んだ。
「猫はダメ! 猫連れはお断り! しっ! 降りないと警察を呼ぶよ!」
車掌も乗客も誰一人、事の本質に驚こうとしなかった。問題は猫が電車に潜り込もうとしているということではない、そんなのはまだ序の口で、問題は猫が支払いをしようとしていることなのに!
---[第一の書]より ”
私の好きな本ベスト5には確実に入るであろう傑作中の傑作です。
図書館で2度借りましたが、今日とうとう大枚をはたいて(大袈裟)購入いたしました。
とっても満足です。
これでいつでも読み返すことができます。
これほどまでに私の好みにぴったりとあてはまる物語は他にちょっと思い付きません。
つまらない部分が全くないのです。
登場する人物が皆、あまりにも個性的かつ魅力的。特に大きな黒猫のベゲモート(時々「猫顔の男」の振りをするお茶目な大猫)が最高。
そして、話の構成が最高! 何か所か矛盾するところがあるものの、そんなことが気にならないくらいに面白いのでした。
この感動を名作の言葉を借りて表現するならば、このように言えるでしょうか。
「(立ち上がる)不滅です!(両手を前にさしのべる)不滅です!」
(カレル・チャペック『ロボット』より 全然関係はないけど)
本当に、これは面白く、また完成度の高い小説ですよね。ここに込められた燃えるような情熱を私は読むたびに感じては、泣きそうになってしまいます(/o\) 実に美しい!