半透明記録

もやもや日記

『死のロングウォーク』

2013年12月31日 | 読書日記ー英米

スティーブン・キング
沼尻素子訳(扶桑社ミステリー)


≪あらすじ≫
近未来のアメリカ。そこでは選抜された十四歳から十六歳までの少年100人を集めて毎年五月に〈ロングウォーク〉という競技が行われていた。アメリカ・カナダの国境から出発し、コース上をただひたすら南へ歩くだけという単純な競技だ。だが、歩行速度が時速4マイル以下になると警告を受け、一時間に三回以上警告を受けると射殺される。この競技にはゴールはない。最後の一人になるまで、つまり99人が殺されるまで、昼も夜もなく競技はつづくのだ。体力と精神力の限界と闘いながら、少年たちは一人また一人と脱落し、射殺されていく。
彼らは歩きながら、境遇を語り、冗談を交わし、おたがいを励ましあう。この絶望的な極限状況で最後まで生き残るのははたして誰なのか――。


≪この一文≫
“もうちょっと生きのびる。もうちょっと生きのびる。もうちょっと生きのびる。しまいに言葉は意味を失い、音の羅列にすぎなくなった。”





一年の締めくくりにはふさわしくない一冊であると思います。しかも、今年はほとんど読書ができず、よってなんの感想を書くこともできなかったのに、よりによって最後へ来てこの一冊について何か書くことになるなんていう酷い展開に我ながら気が滅入っています。

そう。気が滅入っています。本当に滅入っています。読んでいる間もずっと滅入っていました。だけど、ああ、ああ。何かが強く「書け! 書け!」と叫んでいるような気もするのです。しかし、何を書けと言うのだろう。

残酷で、残酷で、残酷な物語です。ほんの5日間ほどのあいだに、99人の少年が無残に、無様に死への道のりを歩かされ、果たして無残に無様に死んでいくというお話です。そしてそれはただ単に大衆の娯楽のために催されるひとつのショーでしかないという、残酷極まりない設定。胸がむかつく。このかたまりを手でつかんで取り出せるのではないかと思えるほどのむかつきが、喉の下あたりをいったりきたりしています。

だけど、ああ、ちくしょう。ひどい、ひどい、なんてひどいんだと言いながらも、私は途中でおりることもできず最後まで引っ張られるようにして読んでしまった。なんてこった。なんてことだ! なんなんだ、なぜなんだ!?

人生そのものも、こんなふうなものであるだろうか? そうだな、あるいは。いやそんなことはないはずだ。最初は陽気に、友達もできて楽しく、たまに衝突しても一時のことで。しかしそのうち少しずつ顔ぶれが減り始め、いつか自分が最後の一人になる。あるいは、いや「確実に」、自分は最後の一人とはならず、途中で脱落するただの一人となるのだろう。この歩き続ける少年たちとの違いは、苦しみや恐怖が数日間に凝縮されているかいないかくらいのものなのだろうか。

特別に理由があったわけでもないのになんとなく〈ロングウォーク〉に参加してしまった主人公。どうしてだか分からないままここまで来てしまった私。私は少しおじけづいているのかもしれないな。何も考えずに歩けばいいのだろうか? 

年末年始の読書に無意味なものはありません。この1冊を選んだことにもきっと理由があるのです。これが来年の私のテーマになるだろう。

何も考えずに歩けばいいのだろうか? いや。








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