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筒井康隆 (新潮文庫)
《内容》
キャデラックを乗り廻し、最高のハバナの葉巻をくゆらせた“富豪刑事”こと神戸大助が、迷宮入り寸前の五億円強奪事件を、密室殺人事件を、誘拐事件を……次々と解決してゆく。金を湯水のように使って。靴底をすり減らして聞き込みに歩く“刑事もの”の常識を逆転し、この世で万能の金の魔力を巧みに使ったさまざまなトリックを構成。SFの鬼才がまったく新しいミステリーに挑戦する。
《この一文》
“ ここで突然、鎌倉警部は回転椅子をくるりとまわし、読者の方へ向きを変えて喋りはじめた。「さて、読者の皆さん。ここでわたくしからひとこと皆さんにご挨拶申しあげます。この小説は、このあたりでちょうど前半を終ったところでありますが、賢明な読者諸氏の大方におかれましては、この事件の犯人の犯行手段及び密室のトリックがいかなるものであるか、もうすでにちゃんとおわかりのことと存じます。なにぶんこの作者、本格推理など書くのは初めてのことですから、文中へ伏線をたくみにまぎれこませるなどといった芸当はとてもできぬらしくて、今までの部分で謎の解決に関係のある事件のたいていのデータはまっ正直に投げ出しております。……」
―――「密室の富豪刑事」より ”
『ロートレック荘事件』に続き、筒井先生のミステリ小説です。
それにしても、『ロートレック』のときほど込み入ってはいないものの、こちらの『富豪刑事』もまたなんともメタな……。面白いじゃないですか。とにかく、登場人物が突然「読者への言い訳」をしはじめるのが笑えます。「ミステリってあまり書いたことがないんですけど、がんばりました!」みたいな。こういうとぼけたところが素敵なんですね、筒井先生は。
全部で4つあるお話の中では「ホテルの富豪刑事」が私は一番面白かったです。
《内容》
キャデラックを乗り廻し、最高のハバナの葉巻をくゆらせた“富豪刑事”こと神戸大助が、迷宮入り寸前の五億円強奪事件を、密室殺人事件を、誘拐事件を……次々と解決してゆく。金を湯水のように使って。靴底をすり減らして聞き込みに歩く“刑事もの”の常識を逆転し、この世で万能の金の魔力を巧みに使ったさまざまなトリックを構成。SFの鬼才がまったく新しいミステリーに挑戦する。
《この一文》
“ ここで突然、鎌倉警部は回転椅子をくるりとまわし、読者の方へ向きを変えて喋りはじめた。「さて、読者の皆さん。ここでわたくしからひとこと皆さんにご挨拶申しあげます。この小説は、このあたりでちょうど前半を終ったところでありますが、賢明な読者諸氏の大方におかれましては、この事件の犯人の犯行手段及び密室のトリックがいかなるものであるか、もうすでにちゃんとおわかりのことと存じます。なにぶんこの作者、本格推理など書くのは初めてのことですから、文中へ伏線をたくみにまぎれこませるなどといった芸当はとてもできぬらしくて、今までの部分で謎の解決に関係のある事件のたいていのデータはまっ正直に投げ出しております。……」
―――「密室の富豪刑事」より ”
『ロートレック荘事件』に続き、筒井先生のミステリ小説です。
それにしても、『ロートレック』のときほど込み入ってはいないものの、こちらの『富豪刑事』もまたなんともメタな……。面白いじゃないですか。とにかく、登場人物が突然「読者への言い訳」をしはじめるのが笑えます。「ミステリってあまり書いたことがないんですけど、がんばりました!」みたいな。こういうとぼけたところが素敵なんですね、筒井先生は。
全部で4つあるお話の中では「ホテルの富豪刑事」が私は一番面白かったです。
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