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『わたしはロボット』

2012年08月09日 | 読書日記ーSF

アイザック・アシモフ 伊藤哲訳(創元SF文庫)


《あらすじ》
西暦2003年、しゃべる可動ロボットを世に送った人類は、その50年後にはポジトロン大脳をもつ読心ロボットを誕生させた。人間自身より強く、信頼がおけ、しかも人間に絶対服従するロボットたち。だが彼らが人類にもたらす未来の姿とは? 巨匠アシモフ自身が考案した、高名な《ロボット三原則》にのっとって綴られる、機知あふれる連作短編集。SF史上に輝く、傑作中の傑作。


《この一文》
“「スティーヴン、わたしたちは人間性の窮極の善がどのような運命を人間に課するか、どうしてわたしたちに分かるはずがありましょうか?」”







あまりにも有名な小説。しかし私はこれまでの挑戦ではいつも最初のエピソードで脱落していたので、本書が連作短編集であったということも今回初めて知りました。そして、最後まで読んでみると、どうしてあんなにつまずいていたのか理解し難いほどに読みやすく、面白いお話でした。

9つの物語が連なって語られています。人類がロボットが生み出した初期の時代から始まり、ロボットの進化とともに人間社会の変化していく様子が描かれていきます。これは面白い。

まず、【ロボット三原則】とは。


 【ロボット工学の三原則】

1.ロボットは人間に危害を加えてはならない。また何も手を下さずに人間が危害を受けるのを黙視していてはならない。

2.ロボットは人間の命令に従わなくてはならない。ただし第一原則に反する命令はその限りではない。

3.ロボットは自らの存在を護らなくてはならない。ただしそれは第一、第二原則に違反しない場合に限る。





この【ロボット三原則】に基づいて設計されているロボットの行動が時として人間には不可解に思える場面があり、人間はそれぞれのシチュエーションの中でどのようにそれを理解していくことになるかというドラマが面白い。パウエルとドノヴァンのコンビがいつもいつもトラブルに巻き込まれてしまうのが気の毒で笑えました。
ロボットたちは常に【三原則】に縛られて行動するわけですが、人間の思うように動いてくれないとき、どうしてそうなるのかを推理していくところや、問題が解明されてスッキリするところなんかは、推理小説でトリックが明かされたような爽快感がありますね。

また、人間によって作り出されながら人間よりも優秀な存在としてあるロボットへの、人間自身の複雑な感情が描かれるところも興味深い。愛情があり、不信感があり、軽蔑があり、嫉妬、羨望があり。もしも人間が実際にこんなロボットを手に入れたら、どんな風に振舞うことになるんでしょうね。やっぱり便利で偉大な発明品として利用しながら、一方で自分たちを凌駕する能力を持ったものに自尊心が傷つけられたりするんでしょうか。




私は「逃避!」「証拠」「避けられた抗争」の、9つのうちの最後の3編が特に面白かったです。
ロボットとともにある社会。そんな社会がいつか到来するのかなあ。