石黒正数(講談社)
《あらすじ》
外天楼(げてんろう)と呼ばれる建物にまつわるヘンな人々。エロ本を探す少年がいて、宇宙刑事がいて、ロボットがいて、殺人事件が起こって……?
謎を秘めた姉弟を追い、刑事・桜場冴子は自分勝手な捜査を開始する。“謎”推理が解き明かすのは、外天楼に隠された驚愕の真実……!?
奇妙にねじれて、愉快に切ない――石黒正数が描く不思議系ミステリ!!
『それでも町は廻っている』の石黒さんの漫画。
読む前にパラパラとページをめくってみたら、なんだかシリアスそうな内容だなあとちょっと躊躇われたのですが、読んでみると思いのほかコメディだったのでキャハキャハ笑いながら安心して読み進めていったら、最後の最後ではやっぱりズドーンと気の滅入るようなシリアス展開となり、いやー、あなどれない一冊でしたね。
しかし考えてみると、それが石黒さんの作風なんでしょうか。『それ町』でも、おとぼけギャグ回があるかと思えば、ゾッとするような怪奇風味もあり、おとぼけに見せかけた残虐ミステリなんかも描かれていましたしね。それから急にSFだったりとか。
この『外天楼』も同じような感じで、すべての物語は繋がっているのですが、お話によって雰囲気がガラリと変わります。少年時代のたわいない思い出のひとこまから始まって、宇宙刑事ミステリ、ロボットSF、密室トリックと物語は続いていき、後半はそれらを踏まえて、高名な人工生命学者が殺される事件を巡るSFサスペンスになだれこんでいきます。先に進むに従って、お話のトーンは暗くなっていきましたね。
私が気に入ったのは、第4話「面倒な館」。まるで『それ町』の歩鳥のようにミステリオタクな女刑事が登場します。「外天楼」で男の死体が発見され、密室殺人事件として捜査が開始されるのですが、かなり強引なトリックが用意されていて笑えました。これは愉快でした。しかし、そのあとでまさかあんなことになるなんてなあ……
これほどに質感の違うそれぞれの物語を、最後でうまく結びつけてしまっているところは見事です。私としては、最後はできるならもっと明るく終わってほしかったですが、うん、面白かったです。