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『七瀬ふたたび』

2006年09月03日 | 読書日記ー日本
筒井康隆(「筒井康隆全集 第17巻」所収 新潮社)


《あらすじ》
火田七瀬は人の心を読むことの出来る精神感応能力者。普通人に紛れ、息をひそめて生きている七瀬の、彼女と同じように超能力者である者との出会い、そして闘い。


《この一文》
”神様。なぜ超能力者をこの世に遣わされたのですか。人類を試すためだったのでしょうか。それなら、もしそうだとしたら神様、人類はまだまだです。”



『時をかける少女』を借りに図書館へいったら、すべて貸し出し中でした。やはりブームが来ているな…。かわりに『七瀬ふたたび』を借りました。タイトルを聞いたことがあったので。『富豪刑事』でもよかったんだけど…なんとなく。
筒井康隆を読むのは、これがほとんど初めてのことです。テレビや映画(話題の『日本以外全部沈没』)にゲスト出演されている氏の姿を拝見しては、ただの愉快な小説家のおじさんというイメージしかなかったのですが、私が間違っておりました。筒井先生、ごめんなさい。面白かったです。とっても。

物語の後半はなんだかハード・ボイルドな展開なのですが、そのなかで七瀬や仲間の超能力者が、自らの存在意義などを問うたりして、読みごたえがあります。SFって面白い。でも、たぶんSFでなくても面白い。能力を持ちながら受け入れられない、むしろ能力を持つが故に受け入れられない者の孤独。他者を、彼らが存在することによって社会が変化してしまうことを恐れ、抹殺をはかる者。その大義を得ることによって自らこそ選民であると信じ、目的の遂行のためには仲間を駒のように操る者。そういうのは、規模の大小、状況の違いはあれど現実にいくらでもあることです。それゆえに、上に引用した七瀬の叫びは心を打ちます。熱い。なんて熱い人なのでしょう、筒井康隆という人は。


同じ本のあとのほうに収録されたエッセイを読んだら、やはり最初のイメージ通りの面白い人でした。私は意外性のある人が好きだ。そういうわけで、筒井康隆という人を好きになりました。『時をかける少女』を予約してるのが来る前に、次は『富豪刑事』を読んでみよっかな。