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もやもや日記

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『ロシア民話集(上)』

2006年07月14日 | 読書日記ーロシア/ソヴィエト
アファナーシエフ 中村喜和編訳(岩波文庫)

《内容》
ロシアのグリムと称えられる民俗学者アファナーシエフ(1826-71)編纂の民話集からえりすぐりの78篇をおおくりする。イワンのばかとその兄弟、蛙の王子、火の鳥や灰色狼など、ロシア民話におなじみの人物・動物はみなここに登場する。ロマン・ヤコブソンの解説「ロシアの昔話について」を付載。(全2冊)


《この一文》
” 四人がそろって旅に出た。どれほど旅をつづけたことだろう、やがて四人は昼なお暗い森にさしかかった。森の中には鶏の足の上に小さな小屋が立ち、たえずぐるぐるまわっていた。イワシコはこう言った。
 「小屋よ、小屋よ。森に背をむけ、こちらを前にしてとまれ」
   --「熊の子、ひげの勇士、山の勇士、樫の勇士」より ”


ストルガツキイの『月曜日は土曜日にはじまる』のシリーズを読んだとき、この《鶏の足の上に立つ小屋》にはじめて出くわしました。それから井戸から水を汲み上げると桶の中に泳いでいる《人間の言葉を話すカワカマス》にも。
私はロシアの民話をほとんど読んだことがなかったので、それらの本当の面白さが分かっていませんでしたが、今ふたたび『月曜日~』を読み返したらきっともっと面白いと思えるに違いありません。


さて、民話というのはどこの国のものでもある程度は突拍子もない展開になるのかもしれませんが、私はこのロシア民話集を読んでみて大変に驚かされました。まったく先が読めません……。そして、登場人物があまりに強烈すぎます。面白くて、面白くて仕方がありませんでした。なんてシュールな話ばかりなんだろう。さすがロシア。

上に引用したのは、私が上巻のなかでもっとも気に入ったお話のひとつです。主人公のイワシコは、お父さんが「熊」(森に住んでいて、村から娘さんたちがやってくるとお粥をふるまってくれる。でもお粥を食べなかった娘は強制的に嫁にならなければならないらしい)でお母さんは「蕪」(子供のいないおじいさんとおばあさんの家のかまどの中で突然人間の女の子になった。熊の家でお粥を食べなかったので、やむなく熊と暮らす羽目になった)です。そこからしてもう普通じゃありません。剛力の熊の子イワシコは、力が強過ぎて村の子供と遊ぶと大惨事を引き起こしてしまうので、村から追い出されます。そして旅の途中で出会った三人の勇士と《鶏の足の上に立つ小屋》へと辿り着きます。

《鶏の足の上に立つ小屋》というのは、他の物語にもよく登場するので、ロシアではかなり一般的なものとされているのかもしれないと思いました。その小屋の中には大抵は《ヤガーばあさん》と呼ばれる老女(魔女らしい)がいることになっているようです。ストルガツキイの『月曜日~』のなかでも、この《鶏の足の上に立つ小屋》と呼ばれる建物には管理人のおばあさんがいました。そういうものだったんですねえ。
ところで、この《ヤガーばあさん》が結構怖い。《骨の一本足のヤガーばあさん》は、鉄の臼にまたがり、鉄の杵を漕いで現れます。登場人物は大抵はこの《ヤガーばあさん》にめった打ちにされます。怖いですねー。でも、ごく稀にすごく親切なこともあって、それはそれで怖いような気にもなります。

とても面白かったので、K氏に朗読してあげたら大喜びしていました。民話であるせいか、これは読んで聞かせると面白さが倍増するようです。言い回しがいちいち笑えます。どうぞお試しあれ。


《鶏の足の上に立つ小屋》の他にも、願い事を叶えてくれる《カワカマス》、《不死身のコシチェイ》などなど、これがそうだったのか!とようやく基礎的な知識を身に付けることができたように思います。あとは下巻を読んで、さらにロシア文学への理解を深めたいところであります。それからまだ『ハンガリー民話集』というのも手もとにあるので、それも読んでみるつもりです。ちら読みした限りでは、こちらも相当面白い。ああ、他の「民話集シリーズ」も揃えて買っておけばよかったです。しまったー。