ストルガツキー兄弟 山田 忠訳 (早川書房 SFマガジン1971/3)
《あらすじ》
生物の成長過程と同じように卵の機械が住居に成長するーーこの画期的な発生工学の実験を妨げたものは?
《この一文》
” アシマーリンはまどろんでいた。そして、アライドの白雪の頂上
に立って、青い空に見入っているような感じでいた。時々、それを
見上げることができ、その空は青く、驚くほど地球的な空である。
その下へ、帰って行く空である。 ”
とうとうこういうレアものにまで手を出すほど、深みにはまってきました。
中毒ですね。
さて、この作品は1961年『黄金のハス』というソ連SF作品集に収録された
兄弟の初期短篇だそうです。
びっくりするくらい普通のSF小説でした。
本当に普通っぽい。
このころはまだ、ストルガツキイ特有の、あの不可思議な感じは備わって
いなかったのでしょうか。
ともかく、非常に読みやすいものの、分量の短さも手伝って、
まあぼちぼちといった感想です。
しかし、もう一度読み返してみたところ、やっぱ結構面白かったです。
その土地の環境に合わせて成長する機械の卵を孵す実験を千島列島で
行うのですが、上手くいくかと思われた矢先、卵は大爆発を起こします。
それは、地中に埋められていた人類の過去の愚かさを示す遺物によって
引き起こされたのでした。
人類の発展を妨げようとするふいに現れてくる力ーー、以後の作品にも
通じるといえば通じているような気もします。
ところで、この古雑誌は「現代ソ連SF最新傑作選」の特集を組んでいて、
私がまだ知らない他のソ連SF作家を勉強できそうです。
他に現段階で読み終えたものでは、ドニエプロフの「予言者」という話
は結構面白かったです。
描写も美的で、かなりロマン的でした。
磁気が人間の心理に影響を与えているのか否かーーという内容です。
この人の名前は忘れていたのですが、「カニが島を行く」という話を
読んでみたいと思っていたところで、同じ人の作品に思いがけず出会って
ちょっと感激でした。