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『栞と紙魚子』

2011年09月09日 | 読書日記ー漫画

諸星大二郎(朝日新聞社)


《内容》
奇々怪々な人々が棲息し、摩訶不思議な事件が頻発する胃の頭町を舞台に、女子高生コンビの栞と紙魚子が大活躍する、諸星大二郎の異色シリーズの待望の文庫版。


《この一文》
“「えーと…どこかで会いましたか……?」

「菱田きとらです。去年の撲殺社のパーティーでお会いしました……」

「あ……あの詩人が二人と評論家が一人血まみれで病院に運ばれたパーティー……」”





文庫版の『栞と紙魚子』の2巻と3巻を持っています。夏前のことでしたが、なんとブックオフでそれぞれ100円で売られていて、速攻で救出してきました。私はあまり諸星大二郎さんの漫画を読んだことはありませんが、kajiさんによると、この『栞と紙魚子』がすごく面白いらしいということだったので。買ってきて読んでみましたが、なるほど、面白い!



面白い。

それはたしかに面白いのですが、どこがどのように面白いのかと言えば、ちょっとうまく言えません。異常。異常ですね。異質とも言えるか。不気味だけれども、それほどには恐ろしくない不気味さと(ときどきすごく恐ろしいけれども)、奇妙なユーモア。主人公の女の子たちの周りでは次々と奇怪な事件が起こるのですが、何が奇怪なのかしまいには分からなくなるほどに、物語が全体として奇妙です。ちょっとついていけない。どこから突っ込んでいいのやらサッパリです。しかし、面白い。うーん、変だなあ!

まず、2巻の最初からしておかしな感じでした。栞さん(注:美少女)が、「行き倒ればったり(行き当たりばったり)」とか「ノリかけたウニ(乗りかけた船)」などとやたらめったらと駄洒落を連発し、えっえっ?? と思う間もなく、蔦屋敷の友子さんは包丁を振り回しながら「人肉バーベキューパーティー」と叫び回っているし、怪しい「キクラゲ男」が登場するわ、クトルーちゃんは川の上を走っているわ、段先生はそれを追いかけてるわで、もう何が何やら。世界が異常過ぎて、唖然とします。

もうひとりの主人公である紙魚子(しみこ)さんは古書店の娘なので、2、3巻のなかには古本を題材にしたお話もたくさんありました。本に食われそうになったり、本の渦に飲み込まれそうになったり、古書にまつわるものはどこか怨念めいた物語が多いですね。本を無限に集めて積んでしまうような人にはヒヤリドキリとする場面多数。


この栞さんと紙魚子さんですが、レトロな服装をしているし、舞台である胃の頭町もどこか懐かしい雰囲気のする町並みであったので、私はてっきり古い時代の作品なのかと思っていたら、なんと3巻の冒頭では携帯電話で話す紙魚子さんに遭遇! びっくり。どうやら現代らしい。巻末の初出を見たら、諸星さんがこれらを描いたのは、2000年前後のことでした。つい最近じゃないか……異空間すぎて分からなかったわ。時代を超越していますね。


さらに、登場人物のほとんどすべてが風変わりで、とくに変わっているのが「段先生一家」でしょうか。作家の段先生と、その奥方、お嬢さんの三人が、とにかく変わっています。

段先生は普通の中年男性に見えますが、奥さんが凄い。巨大な顔だけの人物です。コマに大きな顔だけが登場するのですが、それが段先生の奥さんなのです。何者なのかは分かりません。2巻から読み始めた私は「これは1巻から読まなきゃ分からないのかな?」と考えましたが、kajiさんに聞いたら1巻から読んでも分からないだろうとのこと。なるほど…… しかし、愛らしい性格の、たいへん魅力的な人物でありますね。
娘のクトルーちゃんもかなり激しい感じ。雷に打たれたりしてました。そしてパワーアップ、みたいな。でもいつも元気溌剌ほがらかで、愉快な人物です。

そして、その段先生に一方的に熱烈な思いを寄せている女流詩人の「きとら」さん。きとらさんが凄過ぎて、私は圧倒されました。すさまじく突飛な人物設定です。代表作は『殺戮詩集』……ふふふ、ははは。段先生を追いかけて(ストーキング)、野宿、ムルムル(←公園などで見かける謎の生物)の鍋を食べて生きています。パワフル過ぎるな。いやー、すごい。青空ムルムル鍋パーティーの話は爆笑だったわい。撲殺社とか絞殺社といった出版社と関わり合いが強いようですね。なるほど!!




さてと……まとまりません。私にはまとめられません。まとめられるわけがない。とにかくものすごいものを読んでしまったようです。連作短篇集なので、気軽に楽しく読むことができます。
私としては2巻の『魔書アッカバッカ』が面白かったな。それから『きとらのストーカー日記』が最高だった。『頸山の怪病院』は、私はこういう怖い夢を見たことがあるので、メチャクチャに恐ろしかったです。他のお話も気になるので、今度この『栞と紙魚子』のシリーズは全巻揃えることとしよう。








『百鬼夜行抄』(1~6巻)

2011年08月02日 | 読書日記ー漫画

今 市子(ソノラマコミック文庫 朝日新聞社)



《内容》
妖魔と共存する飯嶋家の愉快で怖い日々を、恐怖とユーモアを絶妙にブレンドして描いた人気シリーズ。







kajiさんからお借りして、文庫版の1~6巻を読みました。これは大変に面白いのですが、私にはあまりに恐ろしい物語も多く含まれており、しばらくは夜の闇やドアの隙間などに怯えて暮らすことになりました。こわいよ~~!


怖くて、感想を書くために再度ページをめくろうという気になれません。すごく美しいお話もあったので読み返したいのですが、うっかり怖いページを開くんじゃないかと思うと、なかなか勇気がわきません。うーむ、どうして私はこんなに臆病なのだろうか…。だって心霊とか吊られたお人形とか隙間から飛び出す腕とかそういうのが怖いんだよー。ううっ、怖い…!!

というわけで、怖くて読み返せないので、ここは記憶を頼りにして軽めの感想を書いておこうと思います。


このシリーズの名声はかねてから聞いておりましたが、読んでみて、なるほど面白いということはよく分かりました。まず何と言っても登場人物が魅力的です。誰も彼もがそれぞれに存在感を持ち、その異様なありようが、異様でありながら不思議と魅力的なんですね。


主人公の律(りつ)は、祖父の言いつけで、幼い頃は女の子として育てられる。その祖父は著名な幻想文学作家であったが、もう亡くなっている。生前は目に見えないはずのもの達と深く付き合った人だった。成長した律は現在は高校生で、祖母と母、そして父とともに暮らしているが、その父もまた実はとうに亡くなっていて、彼の体のなかには今は別のものが棲んでいるのだ。そんな不可思議な飯嶋家の物語です。律はおじいさんからその能力を強く受け継いでいて、しばしばおかしな事件に巻き込まれてしまいます。



変なことばかり起こるのに妙にのんびりした律もいいですが、私はその従姉の司(つかさ)ちゃんを好きになってしまいました。異常に方向音痴なところも可愛い。律を大学受験に送る際、道に迷って山梨まで行ってしまったのには大爆笑でした! はははは!

それから、律に仕える小鳥二羽も可愛いですね。尾黒と尾白。この鳥たちがものすごく可愛い! 青い鱗の話が、これまで読んだ中で私は一番面白かったです。このお話は全然怖くなかったから。姫(=司ちゃん)のために酒の肴を調達しようとする二羽が可愛いぜ…!!

あ、夜刀さまの話は最初は怖かったけど、オチは素敵だったなあ! 晶ちゃん(もうひとりの律の従姉)と三郎さん関係の話も面白かったし。それから妖怪になってしまった犬のマルもやたらと愛くるしかったなあ。あ、おじいさんの若い頃のお話も壮絶だったけど面白かったなあ。



全体的に、幻想的で、絵柄も美しく(←表紙をご覧になればお分かりのように)、とても面白い作品であります。もう少し怖くなければ、私は何度も読み返したいところなのです。しかし、怖いのだ。

とくに恐ろしかったお話は、箱庭の話で、箱庭の中の小川に橋をかけたら、鉈を持った影みたいなのに追っかけられるやつ。怖くて眠れなくなりましたわ。それから、人間の形をした果実の話や、盗んできた仏像だかを返しに行く話。それから、天井から人形がぶらさがってたりする話もめちゃくちゃに怖かったですね。これはよく分からない部分があったから、ほんとうなら読み返したいところでしたが、怖過ぎて無理でした。いいか、分からなくても……。



そういうわけで、怖い話が多いです。私にもっと耐性があれば、きっと更に深く楽しめたであろうと思うと少し残念ですね。しかし、長く続いているこのシリーズには、続きが気になるエピソードもいくつかあり、怖いですが、わりとアッサリとした作風のおかげか私でも読める限度ギリギリくらいの怖さなので、ちょっとずつ先を読んでいければいいなあと思っています。











『どいつもこいつも-花の自衛隊グラフィティ-』(全4巻)

2011年06月07日 | 読書日記ー漫画

雁須磨子  原案・取材:川崎利江子
(花とゆめCOMICS 白泉社)



《内容》
日本一のお気楽なWAC(婦人自衛官)朱野と、愉快な仲間達が巻き起こす、アーミーガールズ・スーパーコメディ。




やっぱり雁須磨子さんはコメディがいいと思うんですよね。私は去年の春くらいに雁須磨子さんを知り、それ以来いくつかの漫画を読んでみたわけですが、やっぱりコメディ要素を含んでいる作品が好きです。この人はとても繊細な世界を描き出しますが、それが明るい方向へ進むといいんですけど、暗い方向へいくと、私はなんだかこう立ち直れなくなるようなダメージを受けてしまいますね。しかし、それだけ表現の幅の広い優れた作家であるということでもあるのか。




さて、これは久しぶりに声を出して笑った漫画でした。私はこういうお話が大好きであります!

WAC(ワック)と呼ばれる婦人自衛官を主人公にした自衛隊コメディです。とにかく面白かった。登場人物が主人公の朱野(あけの)を筆頭に全員とても魅力的かつ印象的です。そして、もちろん自衛官を主人公として自衛隊の一部署を舞台としているだけあって、自衛隊についての知識のためのページも確保されていたりする。それも面白かった。自衛官。体力・規律・鍛錬。素晴らしいですね。

朱野も乙犬もまだ二十歳そこそこ。朱野と同室の江口は24歳くらい。みんな若いんです。この作品の舞台は2000年前後ですが、いまもこういう若い自衛官が鍛錬の日々を送っているのかと思うと胸が熱くなりますね。とくに今年は自衛官の方々は各地で大変な活動をなさってますし、本当にご苦労様です。


物語は、主人公の朱野が自衛隊内部で配られるミニコミ紙のアンケート取材を受けるところから始まります。「どうして自衛官になろうと思ったのか?」その質問に朱野はハッキリと答えられない。自分ではその理由を恥ずかしいと思っているのです。
そして、同期で上司でもある男子隊員の乙犬(おといぬ)にもそれを知られたくない。隊に情熱と愛情を強く抱いている乙犬に知られたら、きっとがっかりされるのではないかと、「どいつもこいつも詰まらない理由で来やがって、なんだ、お前もか」と失望されるのを怖れて。


自衛官であるとはどうあるべきか、という真剣なテーマが扱われることも多いのですが、日常的なおかしなエピソードもたくさんあり、それが猛烈に面白いのです。

たとえば、朱野と乙犬の上官である立花二曹(長身のハンサム、だがやや無愛想で不器用)と、その宿敵である綾瀬三曹(広報部。朱野を異常に可愛がっている超絶美人)とのやりとりには毎度爆笑させられます。誤解がもとで(?)普段から可愛がっている朱野をなぐってしまったことのある立花二曹を嫌い、嫌がらせを続ける綾瀬三曹。この人の陰湿な嫌がらせの数々が、いちいち面白いんです。

朱野と乙犬、そして江口らが海へ行く計画を立てるのですが、自動車がないので立花二曹にいつものように運転をお願いする。立花二曹は乗り気でないもののやはりいつものようになんとなく一緒に出かけることになるのですが、海へ着いてみると自分たちがそこにいることを知らないはずの綾瀬三曹とその恋人の岡二曹(立花の上司)がにこやかに立っていた。

この海水浴のエピソードは、最初から最後まで面白かったですねー! ガルシア=マルケスの「美しい水死人」のネタも出てきて驚いた。そして笑った。美女好きの私はもちろん綾瀬三曹が大好きです。すてきだわー。

それから、野球大会の話や、みんなで富士山へ初日の出を見に行く話もおかしかったなー! あはは、あはは!!



全部で4巻しかないのが惜しいです。もうちょっと続いても良かったんじゃないかなー。さらっと始まってさらっと終わっているところが良いとは思いますが、あまりにも面白かったので私はもっと読みたかった。それだけがこの作品の残念なところです。とっても面白かった!!









先月読んだ漫画

2011年04月02日 | 読書日記ー漫画





3月に発売になった漫画を2冊読みました。
まずは、『君に届け』(第13巻)。




震災の日に発売になっていたのですが、しばらく買えないでいたうちに、近所のコンビニでは品薄になっていました。何軒かまわって、どうにか入手。こんなとき、やっぱり本屋さんがないと不便だと痛感。でも、歩いて行ける距離に本屋さんとか、まあ贅沢な話ですわね。

それはさておき、13巻でも、爽子さんは可愛かったです。風早くんの家族の面々が登場してました。お父さんは意外な感じ。これからどのくらい、このほのぼのペースで連載が続くのか、さすがにちょっと気になってきた。どのへんで終わるのがベストなのか、難しくなってきたよなー。(終わりのことなんて、考えたくないんだけども…)




もう1冊は、『もやしもん』(第10巻)。
いつものことながら、前の9巻からは、だいぶ間があいた気がする。話がどこで終わっていたのか、記憶もだいぶおぼろげでした。たしか、マリーがなんか電話で、どっか外国で、遥さんがいつもの3人組を引き連れて飛行機で……。という感じでしたよね。

で、13巻は、結構面白かったです。ゴスロリ黒の蛍くんとゴスロリ白のマリーがいよいよご対面となりましたが、その一連の流れがすごく可愛くて面白かったです。川浜3兄弟もとうとう出て来たし。でも3兄弟はもっと出番が多くてもよかったのではないだろうか。ちょっと残念。

あとは、ここまで全巻を通してずっと〈空気〉だった主人公の沢木の、ようやく主人公らしいエピソードがありました。でも、正直言って、沢木ってこういうキャラでしたっけ?? なんだかとっても、やっつけ感というか、取って付けたような青春物語という印象が拭えませんでしたね。展開も異常に早かったし。。。作者の石川さんは、ほかにもいくつも連載を抱えてて、もやしもんまでは手が回らないのかしら。沢木なんて、初期とは顔も全然違うしね! こんなカワイイ奴じゃなかった。いやまあいいけど。

13巻は、通常版ではなくて廉価版のほうを買ってみました(←K氏が)。コンビニに置いてある漫画みたいな、軽くてつるつるした表紙の本でした。
『もやしもん』は、単行本の製作にこだわりがあっていいですね。早々に大豆インクとか再生紙を使用してみたりとか、今回のような簡易版でエコを目ざしてみるとか、そういう試みは面白いと思う。しかし、そろそろ農大のほうへ話を戻してほしいかなあ。
あと、石川さんは早く『純潔のマリア』の2巻を出してくれ!



今月は、なにを読めるかな?


『ONE PIECE』(巻61)

2011年02月09日 | 読書日記ー漫画




ちょっとした手違いで、61巻を入手するのに手間取ってしまいました。やれやれだぜ!



それはさておき、61巻。この一冊で、思っていたよりもずっと物語が進んだので驚きました。バラバラになった麦わらの一味がやっと再結集。ウソップやロビンさんもひさびさに登場ということで、私は嬉しい。しかし……2年経って、一味の面々のルックスもそれぞれに変更されているわけですが、……ロビンさん。。。あれはないわ~~; いや、ロビンさんはどういう格好でも素敵だけど、でも、でも……!! デザイン決定までのラフがいくつかおまけコーナーに掲載されていましたが、私はあのギザギザ☆ショートヘアーのロビンさんが一番良かったと思うんですの。西武警察みたいな真黒サングラスにオールバックだなんて、ロビンさんのクールな美しさが台無し!(←いやまあ…これはこれで恰好良いし、台無しってほどでもないかもしれないけど、でもでも)

尾田先生、どうか今後どこかでまたロビンのデザインを考え直してください。おかっぱ時代が懐かしい(´;ω;`) レザーのボンデージ風味のイカしたロビンさん、カムバック!! CP9のあたりのマントかぶったロビンさんは、最高の美しさでしたよね!! うぅ、しくしく。

他の人たちも、けっこう変わってました。サンジさんのまゆ毛のグルグルが逆回転してました。あとは…ナミさんが可愛い系から美女方向へグッとシフトしていました。いいね…これからはナミさんの時代か……!
でも、チョッパーとルフィは全然変わってなかったな。あと、ブルックも(これはしょうがない)。ウソップも噂されていたほど変わってなかったや。



で、今回ももちろん面白かったのですが、私が思うに、やはりここ数巻は、どうもコマ割りが細かい。たぶん、尾田先生には描きたいことがたくさんありすぎて、でも物語も進めなきゃならないしで、コマを小さく割ってでも描き込んでしまうのだろうなぁと推測。いつか無事に連載を終えて、暇になったら、番外編で「実はこのときは、こういう物語があったのです」的なものを描いて欲しいですね。
ともかく、描き込みがすごくて、このところ娯楽漬けになって1冊の漫画本に対する執着度をすっかり下げてしまっている私はなかなかじっくり読むことができません。キャラが多すぎて把握しきれないし、小ネタが多すぎて理解しきれない。舐めるように大切に一冊の本を読み込んだら、もっと楽しめるんだろうなぁ。と、ちと反省もしました。漫画って、何度も読むから面白いっていうところがあるのになぁ。うん、今度ここ数巻分をまとめて読み返すかな。







『純潔のマリア』(第1巻)

2010年11月21日 | 読書日記ー漫画

石川雅之 (講談社アフタヌーンKC)




《あらすじ》
魔女マリアは争いを嫌い、毎夜サキュバスを遣わしては戦争をかき回す。しかしマリアの度重なる派手な行動により、大天使ミカエルに目をつけられ――。


《この一文》
“ヤハウエは6日でこの世界を創り 一日休んだ

 こんなに世界は美しいのに
 何故 人の心はこんなに愚かなのかしら

 あと一日も ヤハウエは休まず働けばよかったのよ ”




『もやしもん』の石川雅之さんの漫画。『もやしもん』は農大を舞台にしたためになる知識系の漫画であるのに比べ、こちらは魔女が主人公のファンタジーでした。中世フランスが舞台のようですが、平然とドラゴンなんかも出て来る。それだけでなく天使までさらっと登場する。……面白いではないか! いいよ、いいよ! 私はこういうのが好きですよ!

「人間の愚かさ」や「信仰と救い」といったことをテーマとしているようですが、石川さんらしく、あまり重くもならずおかしみに溢れていて気楽に読めます。とりあえず、今のところは。この先ものすごくドロドロした展開になるというなら、それはそれで楽しみ。
それにしても、サキュバスとしてマリアに使役されているフクロウがいちいち可愛い。石川さんの描く鳥キャラって見た目がすごく可愛いんですよね、雲みたいに丸々のっぺりとしていて。フクロウの姿は間抜けに可愛らしくても、そこはやはりサキュバスなので、仕事の時にはものすごい美女に変身する、というところがまたたまりません。インキュバスとしてスカウトされたオスのフクロウもいるのですが、そちらも美少年に変身するのでたまりません。ああ、変身ってロマンですねー。


第1巻ということで、まだあまり物語は進んではいませんが、非常に続きが気になる面白さでありました。第1巻は2010年の2月に発売となったようですが、うーん、2巻はいつ出るのだろう? 『もやしもん』もなかなか新刊が出ないような気がするので、これもまた待たされそうな予感……。






『ONE PIECE』巻60

2010年11月04日 | 読書日記ー漫画

もう60巻かー。
物語もようやく中盤らしい。



《この一文》
“失った物ばかり数えるな!!!
 無いものは無い!!!

 確認せい!!
 お前にまだ
 残っておるものは何じゃ!!!  ”







『ONE PIECE』の最新刊が本日発売ということで、早速買ってきて読んだわけですが……


 もう、マジ泣きっスよ!!(ToT)ノワ~


しくしく泣いていたら、時間ばかり過ぎてしまいました; てへへ。いやしかし、ワンピってほんと面白いよなぁ。特にこの60巻目は、物語の前半と後半のちょうど間に位置するらしく、陽気でワクワクするような友情と勝利に満ちた冒険譚から、いくらか思想的な問題提起や愉快なだけではなく陰りのある物語へと移行しそうな雰囲気が感じられました。



(以下ネタバレ注意!)


ここ数巻の展開では、読者はこれまでのように仲間の一人がその過去に負った悲しみを乗り越える様子を読むのと違って、現在進行形で登場人物が悲劇に直面する状況に付き合わなくてはならなかったわけで、しかもその中心人物が主人公のルフィであることに少なからず驚かされたのではないかと思います(私は驚いたぜ!)
また、これまでワンピ的展開としては「過去の回想以外では、決して人が死なない」ヌルイ漫画だと囁かれたりもしていましたが、ここへ来てざっくりとそれを裏切られ、読者はかなりのショックを受けたはずです(私はかなりショックを受けたんだぜ!! てか、エース…白ひげ…嘘だと言ってよ…(ToT)もしかしたら…と願っていたんだがなぁ……お墓のシーンでは心が折れたYO!)


(ネタバレ、ここまで)



そういう点からしても、ここのあたりのこの盛り上げ方は尾田先生さすがだな、という感じでした。単行本の帯には「2億部突破!」とか書いてあって、一体どんだけ売りなさるんだ; と感心してしまいますが、まあ売れますよね、これは。だって面白いんだもん。

というわけで、60巻は内容的にもかなり密度が高くて、読み応えがありましたよ。本格的に「世界」との対立が始まったようで、私はワクワクを止められません。どうなるのかしら、これから。ドキドキ。腐った貴族階級や、それを打倒しようとする革命家なんかが出て来ちゃってて、意外と思想色が強くなりそうな予感…☆ まさかこんな展開になるとはな。想像もしてなかったぜ。

それから今回は久しぶりに麦わらの一味が登場していたのも良かったですね☆ ロビンさん! ウソップ! はやく合流してほしい!!!


あー、はやく続きを出してくれ~~ッ!!











漫画合宿に行ってきた(本編)

2010年10月31日 | 読書日記ー漫画

漫画合宿で実際に使用された
手書きのリスト。
…ゴクリ(/o\;)



先日の漫画合宿の模様をまとめてみました。ユキさん、kajiさん、私(ノト)の3人が選んだ6冊(選考テーマは「自分が影響を受けた漫画」ということで)を以下に掲載しておきます。

それぞれの感想については、各自がリスト上の各作品について書き込んだ文章をそのまま載せてありますが、コメントがないものもあったので、それについては私の独断でお二人の会話に基づいて再構成したものもありますのでご了承くださいませ! (誤りや追加などありましたらご指摘願います☆)

というわけで、以下!


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 ☆☆☆ 第一回 漫画合宿 ~漫画を6冊持ち寄ってみた~ ☆☆☆
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

___________________________
 ★ ユキさんの6冊 ★


1.『I’s(アイズ)』(全2巻) 庄司陽子
 (ひとこと紹介文)ヒューマンドラマ。

 

kaji「ハードでシリアス。よみごたえあった。ハッピーエンド?で良かった。」

ノト「心が引き裂かれるようなトラウマがあって、実際に引き裂かれたとして、それでも核となり得るような「その人」というのは存在するのか? 人格ということについて考えさせられるハードなドラマでした」



2.『つげ義春コレクション』より「大場電気鍍金工業所」 つげ義春
 (ひとこと紹介文)青春。

 

kaji「なんてゆーか、この突き放された感じがたまらんなー」

ノト「たった13pの作品なのに、心が折れそう…なにこの冷たい悲哀は。でも絵がすごくいい。こんな漫画を描きたい」



3.『おひっこし』 沙村広明
 (ひとこと紹介文)青春。

 

ノト「なるほど、青春! すごくなじみの日常感があるような気もしましたが、作品中のユーモアは独特で面白かった。同時収録の「少女漫画家無宿」のノリはサイコーですね!」


4.『惨劇館』より「消える首」 御茶漬海苔
 

ノト「こわい…御茶漬海苔先生の自画像(?)が超こわい…。お話はなにかすごく大事なことを訴えられたみたい(人を信じろ、みたいな)だけど、こわくてよく思い出せません」



5.『惨劇館』より「童鬼」 御茶漬海苔

 

ノト「絵…絵がこわい。人間の心は時々おそろしい。おそろしくて悲しい」


6.『カリクラ』(第1巻) 華倫変

 

ノト「得体の知れぬ迫力があった。作者が駄作と言っていた「燃えよアニメ!」が一番よかった…みたいな;」




___________________________
 ★ kajiさんの6冊 ★


1.『夢幻紳士〈幻想篇〉』 高橋葉介
 (ひとこと紹介文)“夢幻紳士シリーズ” かっこいいですよ。

 

ユキ「絵が好き。少し迷った気分におちいる感覚が心地いい」

ノト「まいった! まいりました、しびれました! もうダメ! 素敵すぎる! うお~~~!!! なんて美しい絵! ロマンチック! たまらん!」



2.『ロストハウス』より「ジィジィ」「ロストハウス」 大島弓子
 (ひとこと紹介文)世界の終わりを大島弓子が描くとこうなる。

 

ユキ「「ジィジィ」:世界の終わりをいつも感じてたい気分に/「ロストハウス」:自分もそうなりたい」

ノト「大島作品はすごく美しくてハッピーエンドだと思うのに、同時にとても胸が痛むというのは、どういうことなのでしょうか?」



3.『妖怪ハンター(水の巻)』より「産女の来る夜」「鏡島」 諸星大二郎
 (ひとこと紹介文)何だかわからんけど…勢いがあるのが諸星テイスト。
 

ユキ「「産女の来る夜」:ハッピーエンドに感動。「鏡島」:少しゾクッとくる。パラレルワールド感」

ノト「(渚、しっかりおし! と言いたくなりますね←文庫全体の感想)独特の雰囲気。不気味なこともあまり怖さを感じさせないのが諸星作品の不思議!」



4.『神隠し』より「黄泉比良坂」 山岸凉子
 (ひとこと紹介文)暗いし救いもないけど、何かいいんです!! これ!

 

ユキ「救いようがない気持ちは、どこかで自分と重なるものも感じるからおそろしい」

ノト「あれ? 意外と明るくて爽やかなラスト! 激しい情念もここまで突き抜けると美しいと思います」



5.『百日紅』(上・下) 杉浦日向子
 (ひとこと紹介文)めっちゃ好きで、おわってほしくない世界…

 

ユキ「粋やな~~~。お栄さんがかっこいい」

ノト「一瞬で江戸の時間と空間。あの時代はたしかにこんな感じのはず。お栄さんが描いた地獄絵の屏風の話が良かったなぁ」



6.『夢幻紳士〈逢魔篇〉』 高橋葉介
 (ひとこと紹介文)物語の構成のうまさが神!! 絵はちょっとグロ注意です。

 

ノト「夢幻が素敵すぎてどうにもなりません。瞳が美しすぎる…。多角的な視点で幾通りもの始まりがあり、それが最後で最初のシーンにぴったりハマるのが圧巻。映画のよう。2005年の世界でこのようなことが行われていた(このような漫画が描かれていた)なんて!!」




___________________________
 ★ ノトの6冊 ★


1.『ひとりにしないで』収録「僕の夢を見てくれ」 相模なつき
 (ひとこと紹介文)「僕の夢を見てくれ」は最高の夢のお話。
  → 当ブログ過去記事は こちら


 

ユキ「全部が現実になれば…っていう夢のように感じたお話」

kaji「「夢」の話ですねー!! 途中から現実か夢かわけわかんなくなる感じ。少女マンガで読めるとは。最後もなんか…夢オチっぽい」


2.『蛍火の杜へ』 緑川ゆき
 (ひとこと紹介文)「蛍火の杜へ」は最高のロマンス。
  → 当ブログ過去記事は こちら


 

ユキ「「蛍火の杜」という話がすごく印象的。成長し続ける自分と一定に収まる者と。切ない」


3.『Papa told me』(第11巻) 榛野なな恵
 (ひとこと紹介文)思い出の中の人はいつも美しい(特にep.45)

 

ユキ「切ない。それにつきます。でもこういう一瞬のトキメキだったり期待だったり。それが好きかも」

kaji「こんな名作があったんだー」


4.『ラブロマ』(第1巻) とよ田みのる
 (ひとこと紹介文)超直球ラブロマンス!!
  → 当ブログ過去記事は こちら

 

ユキ「明るくて楽しい。やっぱこういうのはいいね」(←以上、ノトによる実況)

kaji「星野くん萌えだ!! 笑えるけど感動する」


5.『窮鼠はチーズの夢を見る』/『俎上の鯉は二度跳ねる』水城せとな
 (ひとこと紹介文)2010年の個人的瞬間最大風速! 愛とは何か!?
  → 当ブログ過去記事は こちら

 

ユキ「え…BL? ええ~…BLは初めて…。……。ハッピーエンドでよかったやん!」(←以上、ノトによる実況)

kaji「ちょっと衝撃ですね(汗)濃い、濃いです、男と女よりも。恋愛は地獄だー?」


6.『虫と歌』 市川春子
 (ひとこと紹介文)珠玉の幻想短篇集。
  → 当ブログ過去記事は こちら

 

ユキ「「日下兄妹」は何度も読み返してしまった!」


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


という感じでした。今回の反省点としては、まず「6冊は多かった!」ということがありますが、上のリストを御覧のように、3人のそれぞれの好みや性格をほんのりとうかがわせるようなセレクションになっていたり、また自分では選ばないような漫画を初めて読むことができたりしたことは、実に興味深くまた勉強になりました。こういう試みは面白いですよね。

それで、これは私の雑感ですが、ユキさんの1冊目『I’s』とkajiさんの1冊目『夢幻紳士〈幻想篇〉』は、(以下ネタバレ注意!) ともに多重人格を扱ったものですが、それに対するアプローチの仕方が、前者はより現実的に、後者は幻想という装置を通して、と対照的なのが私には面白かったです。やはりこのお二方はよく似ている……(⌒_⌒)

それから、御茶漬海苔先生の『惨劇館』については、私は「ホラーはダメです! 絶対ムリ! こわいっ…」と泣き言を叫んでいたら、kajiさんが「大丈夫、御茶漬海苔はそんな怖くないよ(⌒_⌒)」と励ましてくださったので、どうにか読めました; たしかにそれほど怖くはなかった(いや怖かったけど、まあ…)です。

全体的にユキさんのセレクションは、精神修行のようなハードなものが多く(しょっぱなの『I’s』からして激シリアス)、なかなか鍛えられました。うーん、凄かった! 全部が全部、私が読んだことのないものばかりでとても勉強になりましたよ。

kajiさんの『夢幻紳士』の2冊は、美しくてビビりました。高橋葉介は一度読んでみたかったのでありがたかったです。『夢幻紳士』の夢幻さんは、まるで私の〈夢の人〉のような美しさで、もう参りましたね。kajiさんのセレクションもkajiさんらしさが現われているかと。

そして私の6冊ですが、何と言うか「色ボケなんか?」と突っ込まれても仕方がないようなラブロマンス偏重、キラキラと透明で美しいロマンスや幻想漫画を中心に選んでみました。しかしその中に『窮鼠』と『俎上の鯉』という地雷を仕込むあたりが私の底意地の悪さ。。。ふふふ。ユキさん、驚かせてしまってほんとスミマセンでした!

個人的な総括としては、私とkajiさんは割と読む漫画の傾向は近いものの、その読み方や視点に違いがあり、kajiさんとユキさんもまた読む漫画の傾向は近いが読み方や視点に違いがあり、しかし私とユキさんとは選ぶ漫画はものすごく違うのに、感動するポイントは驚くほどに一致する。という感触でした。面白い!


今回の漫画合宿では、すべての漫画それぞれについて深く話し合うだけの余裕を持てなかった(とにかく読み切るだけでヘトヘトに;)ので、次回はもう少し分量を減らそうということになりました。

まあしかし、こうやってお友達と好きな漫画を共有できるというのは楽しいものですよね! 時間があるときに、あの作品のどういうところがどんな風に好きで、どういう影響を受けたのかを個別にうかがいたいと私は思っています。

ユキさん、kajiさん、どうもありがとうございました♪♪





『いばら・ら・ららばい』

2010年10月26日 | 読書日記ー漫画

雁須磨子(講談社)




《あらすじ》
茨田あいさんは、とんでもなく美人でスタイルもいいけど、とんでもなく生きていくのがむつかしそうな人でした――。繊細だけど棘もある…バラの心を持つ女の子たちの物語。

《この一文》
“美しいものが 私のまぶたを そっとなぜると ”



『のはらのはらの』で好きになった雁須磨子さんの漫画。これは連作短編集。

あらすじにもあるように「棘が」あるので、私は最初読んだ時にはグッサーっとささりまくって、痛くて、それ以後なかなか読み返すことができませんでした。何ヶ月か経って、ようやく読み返せた; やっぱり刺さる、でも慣れてきたぞ。

なにが刺さるかというと、このお話に登場する女性はみな、美人も可愛い人もそうでない人も、みんなそれぞれに別の誰かに憧れたり羨ましかったり妬ましかったりして、同時にそういう自分が情けなかったりみじめだったりするんです。あんなふうに素直で可愛かったら自分だってもっと…と思いつつ、ついつい卑屈になったり自虐に走ったり、うっかり失言したり、他人の言葉がいちいち皮肉に聞こえたり、そんなふうにしか考えられない自分をまた嫌になったり。
こういう心情は私にも馴染みのあるもののような気がして、とにかく読んでいて辛かったです。「しまった、今のは失言だった」とか「ひょっとしてさっきのは皮肉だったんだろうか」とか、結局は自己完結するしかないようなささいなことについて際限なく反復して転げ回ったりは、私もよくやります。そう言うときのことをよく思い出せる感じのお話でした。

でも、痛くて気の滅入るような思いの合間にも、美しくて暖かいものは時々現われてくるので、悩んだり転げ回ったりするのも、つまるところそういう綺麗なものを得たいがためだと分かるのです。綺麗なものとうまく付き合いたいのに、彼女たちはそれができなくて転げ回ってしまうのかもしれません。

連作の中には、明るくて可愛くて優しい度上(どのうえ)さん、ものすごい美人なんだけれど言動が粗雑で人とうまく付き合えない茨田(いばらだ)さん、自他ともに認める可愛らしい容姿を持つ故に恋人には事欠かないけどいつも何か不満な石田さん、容姿への自信なさからか自分にも他人にも厳しい評価を下してしまう平良さん。といういくつかのタイプの女性が登場するので、読者はその中の誰かの言動に「ああ…ある、あるね、そういうのって」と同調できるかもしれません。

私が同調したのは平良(ひらら)さんという女の子。美しいものを眺めたりするのが大好きで、物事の背後に隠された美しさを発見したいと思っているのに、そうやって美しいもののことを思えば思うほど、自分自身がいかにそれから遠くかけ離れているかということも思い知らされて、うなだれて卑屈になってしまう。どうせ私なんて、そもそも私のごときが…と常に自虐状態。うぅうぅ、なんて自虐的なんだ(^_^;) 特に平良さんは客観性と洞察力が鋭いゆえに容赦なく他人を批評してしまう反面、逆にそんな自分への嫌悪感にも深く潜り込んでいるのが、読んでいてとても辛かったです。

求めるものはほとんど手に入れられない平良さん。なにも自分のものにはならない。でも、本当は手に入れようとする勇気がないだけではないのか。ちょっと素直になれば、ほんのちょっと自分にも他人にも優しくなれれば、自虐に走る前に少し落ち着いて周りを見渡せば、彼女にだって美しいものはやってくる。何より、彼女の「美しいものを美しいと思える心」は、表面には見えなくても紛れもなく、そもそもの最初から美しかったんだ。というような結末(私の個人的解釈ですが)には心が癒されましたね。いやはや良かった。平良さんのバイト先の同僚の橋さんという女の子がまたいいキャラクターでした。とにかく平良さん関連のお話は胸に迫るものがあります。


もっと綺麗だったら、もっと可愛かったら、もっと明るかったら、もっと優しかったら。ないものをねだって、きりもなく傷だらけになって、でもそれはただ、自分が好きになった誰かが、同じように自分のどこかにも素敵なところを見つけてくれて私を好きになってくれないかな、というそれだけのことなのかもしれません。孤独なんだ、ちょっと寂しいんだ。憧れて、羨んで、妬んで、見下して、傷つけられたり傷つけたりしても、時々は暖かくて美しいものがそっと手を触れたりするから。それが欲しくて。


雁須磨子さんはやっぱり面白い。実は他にも何冊か買ってあるので、おいおい感想を書いていきたいと思います。





『amato amaro アマート・アマーロ』

2010年10月23日 | 読書日記ー漫画

basso(茜新社)




《あらすじ》
経済学者ヴィットーリオ・コンティが男と関係を持った理由――。
経済学者で政治顧問、ヴィットーリオ・コンティ教授はボディガードでバイセッスアーレのアルマンド・パガーニを挑発する。「男とやってみたい。お前が付き合ってくれるなら、試してみたいんだが?」冗談のような口ぶりにアルマンドは怒り、拒絶するのだが…。表題作シリーズのほか、特別描きおろし「カッラーロの秘書」を加えた待望の第二弾。




basso(オノ・ナツメ)さんの漫画が面白い…。私は今ちょっとハマりかかっています。うーむ、いちいちお洒落で素敵なんだなぁ。じわじわきますね、なんか。とりあえず、絵柄が個性的すぎてちょっと…と躊躇していた頃の私をひっぱたいてやりたい気分です。もっと早くに読んでおきたかった。まあ、いいけど。


前作『クマとインテリ』の続編ということですが、前回登場した人物は物語のあちらこちらにチラッと出て来る程度で、新しくコンティ教授という人を主人公にしています。一応BLのカテゴリーに入るのかもしれませんが、ほとんどそういう感じではなかったです。で、引続き舞台はイタリア、眼鏡、スーツで教授。なるほど。(´∀`)


コンティ教授は新聞になかなか過激な論文を連載していて、そのことが原因で脅迫を受けています。教授は親友のメディア王ジーノの新聞で連載をしている関係で、ジーノからボディガードとしてアルマンドが派遣されてくる。主要な人間関係はこんな感じです。

コンティ教授を中心に、3人の間の友情と愛情(恋愛のような)の狭間、といった複雑な心理が描かれていたかと思います。それが、すっきりした結末を迎えたのかというとそういうわけでもないのですが、とにかく全編を通してさらっとお洒落に面白いので、私は思わずぐおっとなりました。

うーん、なんかじわじわくるんですねー。「アマート・アマーロ」のコンティ教授とボディガードのアルマンドはいずれもあまり表情を現わさないタイプなのですが、そこはかとない哀愁というのでしょうか、時々顔を覗かせる孤独というのでしょうか、そういうものが何気ないコマでうまく表現されています。面白い。面白い。けっして激しい物語ではないのに、ちゃんとドラマチックで良い。

同時収録の「ジェラテリーア・ディ・マルチェッロ」のジェラート屋にたむろする3人組のお話(これは同じ3人組の話が『クマとインテリ』にも収録されていた)が面白かったですね。3人がそれぞれに、生活の中でちょっとした失望や挫折に落ち込んだりして、また今日もマルチェッロのジェラート屋に集まってくる…というお話。
それから、ショートストーリー「パルティータ」。飯を食いながらサッカーのゲームを観ていたのに突然テレビが映らなくなってしまったので、お向かいの開いている窓からそのうちのテレビをこっそり覗き込む、というお話も良かった。

こういう何気ない日常の面白さを描けるところが、たぶんこの人の作品の魅力の大きな部分を占めているんじゃないかと思います。少なくとも、私はこのような、毎日のちょっとしたことを楽しく切り取る眼差し、何気ない動作にちょっとしたドラマを盛り込める能力というのに惹かれます。すごく魅力的です。とても私好み。面白いよう。


というわけで、bassoさんの面白さに気づいた私は、オノ・ナツメ名義(この方はBLはbasso名義で、それ以外はオノ・ナツメ名義で出されているようです)の『リストランテ・パラディーゾ』と続編『GENTE』(1、2巻)も買ってきたのでした。こ、これもなんかすごく面白かった! レストランのお話なんですけど、イタリアっていいなぁ、という気分になれますね。そしてやはりドラマチックでじんわりと面白いです。いいね、いいですね。
『GENTE』は連作短編ですが一応全3巻でまとまっているらしいので、最終巻を買ってきたらまたあらためて感想を書きたいと思います。