半透明記録

もやもや日記

『ラブロマ』(全5巻)

2006年01月09日 | 読書日記ー漫画
とよ田みのる(講談社アフタヌーンKC)


《あらすじ》

「根岸さん、好きです。俺と付き合ってください。」から始まる星野君と根岸さんの直球ラブロマンス。

《この一文》

”……あんたの言ってたこと
 ちょっとわかったわ

 普通って刺激的ね  
       ーー第2巻より ”


まんがです。
たまたま何かの偶然で、普段は読まない雑誌を読むと、大当たりの作品にでくわしたりします。それがこの『ラブロマ』の第1話でした。無名の新人の投稿作がアフタヌーンの四季賞を受賞して、その受賞作が掲載されていたのでした。私はその面白さにひっくり返るほど驚いたのを今でもよく覚えています。その後、アフタヌーン誌上で連載が始まり、先日ついに単行本第5巻にて最終回を迎えました。面白かったなあ。寂しいけれど、面白かった。

さて、『ラブロマ』の面白さはどこにあるのかといえば、それは「何気ない日常」のなかの「率直さ」をひたすら描いているところでしょうか。まあでもそれくらいだったら大したことはなさそうと思われるかもしれませんが、お待ちなさい。この作品には、高校生の男の子と女の子の恋愛というありふれたテーマでありながら、他の作品とは明らかに違う凄さがあります。何が凄いのかというと、「率直さ」が凄まじいのです。これは読めばすぐに分かることですが、とにかく直球です。涙が出るほどです。根岸さんと星野君は第1話ですぐに付き合い始めます。どこまでも率直な二人(特に星野君)には、恋の駆け引きなどはありません。付き合うとは、お互いを理解し合うとはどういうことなのかを、ひたすら模索してゆくという物語です。自分を分かってもらいたくて、相手を分かりたくて、勇気を振り絞ってむき出しの心をぶつけ合う二人。こんな風に人と関わることなど出来るだろうか、いやもしかしたら出来るのかもしれない。勇気を出しさえすれば。考えてみると、誰か好きな人がいたとして(友人でも恋人でも)、その人に対して気持ちを隠さなければならないというのはどういうわけでしょう。理解し合いたいなどとは誰に対しても思うようなことではないわけで、もしそう思える相手がいたとしたら、勇気がないばかりにチャンスを逃すのは非常に惜しいのではないでしょうか。そんな盲点を鋭く突く名作です。

これはおそらくファンタジーとしても一級品です。(注:私の考えるファンタジーとは非現実でありながら、「もしかしたらあるかも!」と思えるような世界のことです)
魔法もお城も不思議な品物もなにもないけれど、普通の生活のその中にあって、手に入りそうで入らないような、でも本当に望みさえすればいつでも手に入るはずの世界。何でもない日常の中にある幸福を見つけられそうな気持ちになる傑作です。

読み返すたびに私は赤面と涙が止まらないではないですか。

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