ステレオの音質はケーブルを変えれば変化するけれども、それは「システム全体の総合力」の結果であって、交換した「ケーブルの音」では有りません。
確かにケーブルを交換したから得られた「音質」かもしれませんが、システム全体との「位相」の補完がうまくいったと云えるだけです。どのシステムも「同じ音質」になるとは限りません。
「伝送ロスを極小化」したケーブルの場合は違います。こちらは確実に「音質アップ」を期待できます。
ところで「音質」には客観的に普遍の「音質グレード」があります。個人の好みに左右されない「絶対的音質」です。「音数の多さ」等はこの部類に入るでしょう。個人的に好き・嫌いではなく万人が受け入れることのできる「管理指標」のひとつです。
ケーブルに電特特性を添付することを以前から考えていましたが、現実的に音質」を現す電特指標がまだ無いのが現状です。
若い頃食品会社で「官能検査」(味見)を受け持っていた経験があります。延べ8年間官能検査を経験しました。そこで得た物は「測定器では参考資料的なデータしか出ない」と言うことです。レトルトカレーを36品目の材料で1バッチ(1トン)の単位で製造して、出来上がり検査を人間の「舌」(ベロメーターと呼びます)で判断します。始めた頃は「大きな変化」しか掴む事ができませんでしたが、毎日100回以上官能検査の「採点」をし続けてきますと4年もしますと凄い「スキル」が身に尽きます。「何が何キロ足りない」と具体的に特定できるのです。人間がやることですので「投入ミス」は時々発生します。それをベロメターターは一瞬で感知します。機械で裏付けをするとその通りなのです。ただ機械では特定の味覚の代理指標しか出ませんし、時間もかかりすぎます。ベロメーターでは一瞬で判断できますが機械では翌日までかかる場合も多々あります。
同じことが「嗅覚」や「音」にも言えます。特に「音」は「電特重視」のメーカーほど「殺人兵器的な音」を出してきます。オーディオは音楽ですので「愉しめる」事が大切です。「時間の芸術」ですから一瞬一瞬を電特で調べたところで「そのときのその場の状態がそう測定されただけ」の話で、時間をずらせばすぐに違う測定値になります。
「電特重視」のお話をされる方は「木を見て森を見ず」の感を受けます。そもそも「時間の芸術」を総合的に判断できる測定器は無いと言うのが個人的見解です。
耳を鍛えて「官能検査」をやれるくらいの実力を持つようにしたいものです。そうすれば「未知の領域」の音質に踏み込んでいけるでしょう。良い音は客観的に判断できる物だと思っています。単なるマスターベーションの世界から抜け出して「音質」のグレードを上げていかないと進歩はありません。私は「進歩」を意識します。