(2015.08.15訪問)
お盆休みも残すところあと一日、久々に洛西大原野を訪ねました。
大原野十輪寺は、あの女たらし、いや平安のプレーボーイ在原業平が、晩年、山深い森閑としたこの地に隠棲し、往時
を懐かしんだのか、偲んだのか、貴族として政治的には恵まれない身を儚んだのか、はたまた世の女性に対する痛烈な
反省をしたのか定かではありませんが、平城天皇の孫として皇統に連なる高貴な身分をこの地に隠しながらも優雅さを
失わず、時の天皇や皇族のお供をし、歌を詠み、風流を楽しむ、これが隠棲かという生活の後、この地で没したと伝わ
っているそうです。いいなぁ、男の鑑だよ……。
そう云うお話が残る十輪寺、またの名、業平寺に在原業平を偲んでみたのでした。
▼参道。
[ 十輪寺 ]
●山号 小塩山(おしおざん)
●寺号 十輪寺(じゅうりんじ) 通称 業平寺(なりひらでら)
●宗派 天台宗(てんだいしゅう)
●勅願 伝 文徳天皇(もんとくてんのう)
●開基 伝 文徳天皇(もんとくてんのう)
●開創 伝 嘉祥三年(850年)
●本尊 延命地蔵菩薩(秘仏) 毎年8月23日ご開帳
▲拝観料 400円 御朱印300円
▲拝観時間 9:00~17:00
▲西京区大原野小塩町481 電話 075-331-0154
▲ JR東海道線「向日町駅」阪急電車「東向日駅」下車 阪急バス66系統「小塩」バス停下車スグ
▼山門。
十輪寺縁起(十輪寺パンフより抄出)
十輪寺は嘉祥三年(850年)文徳天皇の皇后藤原明子の安産祈願のため伝教大師作延命地蔵菩薩を祀り、めでたく皇子(清
和天皇)が誕生、文徳天皇は延命地蔵菩薩を本尊としてこの寺を開基。
その後応仁の乱で寺運衰退、寛文年間(1661~1673年)藤原北家流左大臣花山院定好が再建。
▼寺名木札。
▼庭園。
▼蹲踞。
▼大樟樹。十輪寺の神木、樹齢八百年。
▼鐘楼。寛文六年(1666年)建立。
▼梵鐘(迷わずの鐘)。決心がつかず迷っている時、この鐘を撞くと、決心がつく不思議な鐘。なんですが鐘を撞く方法
があるんです。方法あるんですが少々アホらしいので書くの止めます。
▼本堂。桁裄三間、梁間三間、寄棟造、桟瓦葺、一間向拝付。四面の屋根が緩やかなカーブで鳳輦形(天皇の儀式用の
車)をした珍しい形状。寛延三年(1750年)再建。
初めてお目にかかった全く珍しいお堂形状で外形、内部構造ともおそらく他に例は無いと思います。感動しましたヨ。
▼本堂屋根前面の珍しい破風。
▼本堂正面。
▼内陣の荘厳。
▼独特の天井設えの梁に架かる扁額。シンプルないい額ですが、まったく読めません。
▼内陣須弥壇。本尊延命地蔵尊は後ろのお厨子に、お前立として延命地蔵軸が架けられています。
本尊延命地蔵菩薩は秘仏で毎年8月23日一日のみご開帳されるそうです。
須弥壇前面の二体の仏像、エキゾチックチックしません? スリランカ寺院との縁でのスリランカ釈迦仏だそうです。
▼天井は非常に複雑な形状で、梁や頭貫、長押などの彫刻が見事です。
天井形状はボクなんぞ説明できません。聞くところによると、お堂そのものが神仏習合の名残があるのだそうです。
架かる天蓋、少々場違いも愛嬌としときましょうか。
▼本堂。
▼高所からの本堂。鳳輦形の屋根の形状がよくわかりますネ。
▼本堂と書院を繋ぐ渡り廊下。左の太い幹は業平桜。
▼渡り廊下から突き出ている大きな桜……、
▼これが業平桜。樹齢約二百年の枝垂れ桜、凄いですネ。
凄いですけど、樹齢二百年の枝垂れと業平さんの生きた平安初期、相当時代差があるように思うんですが……。
無粋なことは言わぬが「桜」花!
★写真はネットからもらってきました。
このお寺、業平さん晩年を過ごした寺と伝え、命日の五月二十八日は、「業平忌三弦法要」が行われているそうです。
業平さんが詠んだ古今和歌集の歌(このお寺で詠んだ歌ではありません)
世の中に 絶えて桜の なかりせば 春の心は のどけからまし
ついでにこのお寺で詠んだ歌
大原や 小塩の山も けふこそは 神代のことも 思ひ出づらめ
意味は適当に解釈してくださいネ。
▼在原業平が塩焼きの風流を楽しんだと伝えられる塩竈の跡。
▼業平墓。小さいながらも形の良い宝篋印塔、塔身に梵字が刻されていますが勿論読めません。鎌倉期。
平安プレーボーイの業平さん、意外に小さいお墓ですが、これが女性に人気があるようです。
▼御朱印です。
この暑い中お盆のお墓参りの人すらいない、閑かな古刹でお寺の奥様としばしお話を……。
このお寺、2014年春のJR東海「そうだ京都、行こう」キャンペーンで紹介されたのですが、この時のエピソードなど
中々興味深いお話でした。あいだは省きますが、このキャペーン程、近隣住民の賛同を得られなかったキャンペーンも
珍しいものだったそうで、何しろ十輪寺は善峯寺登山道の中途、曲がりくねった細い道に面して在しています。ココへ
大挙撮影隊が来るんですから大変です。
これ以上書くと差し障りがあるのでこの辺で……。
それでは次の名刹へ参りましょう。
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