土曜日は古寺を歩こう。

寺勢華やかな大寺も、健気に法灯を守り続ける山寺もいにしえ人の執念と心の響きが時空を越え伝わる。その鼓動を見つけに…。

修禅寺、修善寺温泉のど真ん中。

2017年08月19日 | 静岡の古寺巡り






(2017.08.14訪問)


願成就院で運慶さんの手腕にホレボレし、その運慶仏をタンノウして修善寺温泉のホテルに向います。チェックイン後、次に訪ねた
のは修善寺温泉の名刹修禅寺です。弘法大師空海が大同二年開基したと伝わる古刹ですが、鎌倉期の源氏にまつわる血なまぐさ~い、
暗~い話が残る古刹でもあるんです。頼朝の弟の範頼と、頼朝の息子で鎌倉幕府二代将軍の頼家が当寺に幽閉されこの地で殺害、裏
で北条家と北条政子の暗躍で知られているお話、そんなお話が残る修禅寺は温泉地のど真ん中に山門を構えています。

ちなみに正岡子規がこんな歌を詠んでます。
此の里に 悲しきものの 二つあり 範頼の墓と 頼家の墓と





▼参道石段、石段手前の桂川に架かる赤い橋虎渓橋が何とも印象的でした。(赤い橋虎渓橋、あまりに印象強く写真撮り忘れ)







            [ 修禅寺 ]
            ●山号 福地山 (ふくちざん)
            ●寺号 修禅寺 (しゅぜんじ) 正称 修禅萬安禅寺 (しゅぜんばんなんぜんじ)
            ●宗派 曹洞宗 (そうとうしゅう)
            ●開創 大同二年 (807年)
            ●開基 弘法大師空海 (こうぼうだいしくうかい)
            ●本尊 大日如来坐像
            ▲静岡県伊豆市修善寺964 電話 0558-72-0053
            ▲拝観料 境内自由 ご朱印300円
            ▲時間 8:30~16:30
            ▲http://shuzenji-temple.com/
            ▲新幹線「三島駅」乗り換え伊豆箱根鉄道終点「修善寺駅」下車 バス修善寺温泉行き終点下車徒歩5分
             新東名高速長泉沼津インターから伊豆縦貫道、伊豆中央道、修善寺道路、修善寺インター約30分
             東名高速沼津インターからR1、R136、修善寺道路、修善寺インター約45分





            ▼石段下の石柱。







修禅寺縁起 (修禅寺HPから抄出)
大同二年弘法大師によって開創され、以後四百七十年間真言宗として栄えました。鎌倉時代、中国から蘭渓道隆禅師が入山,臨済宗
に改宗。臨済時代は二百数十年間続きました。室町時代、北条早雲が隆渓繁紹禅師を遠州石雲院から招請、曹洞宗に改宗。江戸期文
久三年伽藍や宝物焼失、明治以降本堂をはじめ伽藍を再建。開創千二百年記念事業で慈照閣の建設や本堂、山門修復で仁王門が完成。





▼仁王門。両袖のガラス格子の中に仁王さんがいます。

       





▼木目鮮やか仁王門の扁額。例により全く読めません。

      





▼阿形仁王さん。像高183cm、一木造り。ガラス格子越の撮影は苦労しますネ。







▼吽形仁王さん。像高183cm、一木造り。怖いことも何ともないですネ。







▼やはり温泉地の古刹は人気が高いようです。







▼手水舎。さすが温泉地の古刹、龍の水口からは温泉が出てるんですヨ。







▼ユニークな石積みの基壇に建つ鐘楼堂。見上げると覆いかぶさるような屋根に圧倒されます。







▼鐘楼で二軒垂木も珍しいのに組み物も多重、しかも中央は格天井です。梵鐘が心無しか弱々しく見えるのはボクだけかナ。







▼本堂です。







▼これは読めます。







▼三陣構えの堂内は意外と広く、オール丸柱が簡素な荘厳の中で重厚さを演出しているようです。







▼内陣です。







▼須弥壇は御簾内を照明されているようで、お像が見えますがハテこのお像は何方?







            ▼本尊大日如来坐像 (重文)。像高103cm、膝幅73cm、玉眼、漆箔、桧寄木造)
             仏師実慶。奈良円成寺の運慶作大日如来とよく似ています。
             HPによると須弥壇に安置と書かれていますが、御簾奥の厨子内に安置されているのでしょう。
             御簾内に見えるお像はお前立ち像なのか、しかしどう見ても仏像には見えないんですがネ。



             (本尊写真は修禅寺HPからお借りしました)





▼本堂屋根正面の千鳥破風と唐破風、絶妙のコンビネーション。







▼大玄関。







▼こんなダルマさんもいます。







▼幹径50cmはあろうか百日紅の古木。花はもうお仕舞ですネ。







▼信徒会館慈照閣。







▼慈照閣の大広間。







▼慈照閣前に十六羅漢石像が並んでいます。







▼ご朱印です。







▼桂川に架かる虎渓橋の横に独鈷の湯。例により空海さんが錫杖でトントンと地面を打つと温泉が湧き出るお話の湯です。




これにて修禅寺 オ シ マ イ

修禅寺もまたごくごく小さいお寺です。今は鎌倉期の悲話哀話など微塵も感じることはありません。
手水舎で清めの手洗いでビックリ、思わず手を引っ込めました。さすが温泉地のど真ん中のお寺、なんと温泉が引かれているんです。

一泊後、下田街道を南下、天城峠と浄蓮の滝を目指す予定でしたが朝から生憎の雨降り止まず。
ホテルマン曰く「この雨では天城峠は止めた方がいいですよ」の言葉でウチの奥さんの顔を見ると大不満そう。
「帰ろか」「……」「帰ろ」「……」そして「シャクやけど」の一言でもと来た道を引き返した今回の伊豆旅行でした。

ボクは満足でしたけどネ。





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願成就院、憧れの運慶仏に会う。

2017年08月17日 | 静岡の古寺巡り





(2017.08.14訪問)


伊豆の修善寺から浄蓮の滝と天城峠を見に行こうとウチの奥さんが云うので、これは幸いと行ってきました。
例により盆休みの三日前くらいにいきなり云うので、修善寺温泉の2~3ホテル候補で最初にかけた電話で一発決定。
「ホテル取れたぜ」「いつ」「14日」「あッそう」それでオシマイ、あとは出発のみ。





▼今夜ここに泊まります。修善寺温泉「鬼の栖」というホテルです。







かねてから、伊豆の願成就院と云う名のお寺を是非訪ねたいと常々思っていたところ、いい具合にこの盆休み実現したんです。
新東名高速を長泉沼津インターで下り、下田街道を南下、修善寺手前伊豆の国市に願成就院があるんです。「ホテル着の前に一軒寄
るとこがある」と奥さんには一言お断りをして運慶作国宝五体に会いに行きました。






▼さすが運慶、この睨みを見たか!

 





[ 願成就院 ]
●山号 天守君山 (てんしゅくんざん)
●寺号 願成就院 (がんじょうじゅいん)
●宗派 高野山真言宗 (こうやさんしんごんしゅう)
●創建 文治五年 (1189年)
●開基 北條時政 (ほうじょうときまさ)
●本尊 阿彌陀如来坐像
▲静岡県伊豆の国市寺家83-1 電話 055-949-7676
▲拝観料 400円 ご朱印300円
▲時間 9:00~17:00
▲伊豆箱根鉄道「韮山駅」「伊豆長岡駅」徒歩15分。 
 国道136号線沿い三島・修善寺間の中間地点。





▼切り妻、桟瓦葺きの簡素な山門。今日程ドキドキして山門を潜ったのは初めてです。







願成就院縁起 (願成就院HPから抄出)
この地で源氏再興の旗揚げをし鎌倉幕府を開いた源頼朝の奥州藤原氏征討の戦勝を祈願して、幕府初代執権で北條政子の父、北條時
政が建立し「願成就院」と称したことに始まります。幕府の事蹟を伝える歴史書には、三代執権北條泰時の頃までの様子が詳しく記
されています。時政が建立した大御堂と南塔、二代執権北條義時が亡父時政供養として建立した南新御堂、三代執権北條泰時による
北條御堂と北塔の建立など、堂塔伽藍の造営は北條氏三代にわたります。貞応元年「定額寺」とする宣旨が朝廷よりくだされ、この
地に守山を借景として、中之島のある大きな池を配した「浄土様式」の壮大な寺院が北條氏の氏寺として造営されていました。





            ▼寺号木札。

       





▼山門から大御堂が見えます。

      





▼左に石仏が集められています。







▼六地蔵もいます。







            ▼左の細道を行くと開基北條時政の墓。
             北條時政 (1138〜1215年) 平安後期~鎌倉時代の武将。



保延四年生まれ、北条政子の父。鎌倉幕府初代執権。政子と結婚した源頼朝の挙兵をたすけて幕府創設に寄与。文治元年京都で守護
地頭設置の勅許をえる。頼朝の死後二代将軍源頼家を廃して源実朝を擁立し実権をにぎる。さらに後妻の娘婿平賀朝雅を将軍にしよ
うとして失敗、伊豆に退隠した。建保三年一月六日没、七十八歳。





▼鐘楼。境内唯一朱の建物。







            ▼参道左右に建つ大石灯籠。







            ▼境内東端に空海さん修行像。







            ▼十三重石塔。







さていよいよ運慶さん作、五体の国宝仏に会います。

▼大御堂。このお堂に五体の国宝仏が祀られています。
 一歩堂内へ、思わず声を上げてしまいました。こりゃ凄いワ、今思うと、須弥壇前を行ったり来たり何度往復したことか。







▼中央 阿弥陀如来坐像 (国宝)。像高142.0cm、寄木造り、彫眼 。文治二年 (1186年) 造像。
 圧倒的な量感が凄い、安定感と云うか安心感が沸々と湧き出る感じ。残念なことに五体中一番破損度が酷く、特に前方で組む説法
 印の指の破損はお気の毒な感じがします。お顔と体躯の安定感はさすが運慶。



            (阿弥陀如来坐像写真は願成就院HPからお借りしました)





▼最も見たかったのがこの毘沙門天立像 (国宝)。向って右側。像高148.2cm、寄木造り、玉眼 。文治二年 (1186年) 造像。
 この毘沙門さん、毘沙門天像のスタンダードと云ってもいいでしょう。この精悍な顔つきを見て下さい緊張感が漲っています。い
 つも思うんですが、こういった戦士像の甲冑のデザインや全体の造形、細部のディテールデザインにいたるまでやはり運慶さんた
 だ一人の制作なのかナ。



            (毘沙門天写真は願成就院HPからお借りしました)





▼不動明王三尊像(国宝)。寄木造り、玉眼 。文治二年 (1186年) 造像。
 不動明王 像高137.2cm、右、矜羯羅童子 像高74.4cm、左、制吒迦童子 像高83.5cm。
 きかん気の制吒迦童子と少しすっトボケた矜羯羅童子を両脇に不動明王の眼光鋭い念怒の形相は煩悩を断ち切ってくれる大迫力を
 いやが上にも感じます。それにしても二童子の対照的な表情や動きには恐れ入りました。



                  (不動明王三尊像写真は願成就院HPからお借りしました)

五体の像に磁力を感じるように、正面、斜めからと右に行ったり左に行ったり、、とことん拝見とばかりジックリ運慶さんの技に見
惚れました。 ※各お像の像高表示は、願成就院のホームページとパンフレットとで違いがあるため、このブログではホームページ
の数字を採用しています。





▼放生池。













▼本堂です。檀家さんだけにしか入堂は許されないそうで、茅葺きの大きな建物です。寛政元年(1789年)建立。







            ▼本尊阿弥陀如来坐像。像高86.8cm 玉眼、鎌倉前期、作者不詳



            (本尊写真は願成就院HPからお借りしました)





▼本堂。







▼境内です。







▼ご朱印です。これぞご朱印の筆跡、上手い!







願成就院はごくごく小さいお寺です。言っちゃ失礼ですが、こんな小さなお寺に運慶仏が五体も? ホントかいなという思いと期待
ワクワクで山門を潜りました。サラッと境内を巡り、運慶仏を祀る大御堂に一歩入ったインパクトが凄い、いつも写真で見るしかな
く是非会いたかった五体が目の前の須弥壇に並んでいるんです。あのイヤラシいネットとかガラスのガードがなく目の前に祀られて
いるんです。ブラボーな祀り方に敬意を表し、納得の運慶仏拝観の願成就院でした。伊豆まで来た甲斐がありました。

これにて願成就院 オ シ マ イ
次に訪ねるのは修善寺の「修禅寺」です。





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