土曜日は古寺を歩こう。

寺勢華やかな大寺も、健気に法灯を守り続ける山寺もいにしえ人の執念と心の響きが時空を越え伝わる。その鼓動を見つけに…。

[ 雑感 ] 東大寺開山 良弁さんに会いに開山堂へ

2008年12月28日 | 奈良の古寺巡り
●先ずは法華堂へ
12月16日は良弁僧正忌。恒例の法華堂執金剛神像特別開扉の日です。数少ないお寺行脚の友人N君と東大寺を訪れた。平日のせいか拝観者は多くなく、お像としばらく対峙し、じっくりお会いできたのは幸運だった。法華堂正堂北面のお厨子に北向きに立つ珍しい配置のお像。秘仏ということで年1回の開扉のためか状態はすこぶる良好、塑像であるにも関わらず欠損部分が殆どなく、僅かに髻の元結紐両端の針金芯が目に付くぐらい。東大寺前身、金鐘寺の堂宇の一つだった今の法華堂に祀られていたといい、爾来、1250年に渡る歴史の時間を連綿と紡いで、今に至る経時の変化にも耐えた天平彩色の見事な残色。朱、緑、黄、紫、黒等の彩色と精美で繊細な甲の文様、華麗な豪華さは造像時いかばかりか…。
執金剛神は金剛力士(仁王さん)と同尊と云われ、像形は真に武装金剛力士、肌面の筋肉の凹凸、特に憤怒の形相、無言の怒号、血管のリアルな浮き出し、今にも金剛杵が右手から放たれようとするる刹那のポーズ、人体観察力と洞察力に秀でた仏師がこの時代間違いなくいた事実、往時の現世利益、鎮護国家を願う信仰心(と思いたい)から湧き出てくるけた外れのパワーを見る思いがし、[全身全霊]とか[執念]といった言葉が形になった様なそんな気がします。
このお像は良弁さんの念持仏の由緒があるといい、阿形金剛力士の像形。本来、金剛力士は上半身裸形が多くたまたまこの法華堂にはもう一対の武装金剛力士が祀られているので珍しいお堂と云えるかも知れませんね。
執金剛神に拝した後これほど長く滞留したのは始めてというくらい須弥壇周囲を数回巡りました。通常北面は閉じられているのでこの機会は貴重、須弥壇左右斜め後ろから17体のお像の後ろ姿を見ることが出来た幸運も併せて頂きました。N君、入堂後全く無言、執金剛神像の前から離れようとはしません。「もう行くよ。」「う~ん。」感嘆!なのか、返事なのか?

●次に開山堂へ
10月5日にも開扉されましたが行きそびれて今回が初入堂です。東大寺開山で初代別当良弁僧正をお祀りしたこのお堂は、二月堂前の白壁の中ひっそりと建つ小さなお堂。なぜか西向きに建ち、正面内陣に良弁僧正坐像がお厨子の中に安置されています。首が太く、両肩の張りは法衣を纏ううえからもガッシリした体躯、お顔の表情も特に眼と真一文字の口は強固な意志とパワフルな行動力が窺え、聖武天皇の信頼を一身に受けた壮年期の気迫が拝するボクたちにもビンビン来ます。小さいお厨子の中なので窮屈そうで少々お気の毒な気もします。小さなお堂ですが内陣の周囲を外陣が囲み、周回出来るようになっています。
★発見しました!★
前掲開山堂パンフレットの良弁さんの写真ともう一方の良弁さんの写真、較べてください、どこか違いますね。そう如意の角度です。どちらの写真が当初の持ち方なんでしょうネ。大多数はパンフレットの方ですが。
そこで問題! [なぜ良弁さんの如意の持ち方の違う写真があるのでしょうか。]
?木造の良弁さん自らその日の気分で如意の持ち方を変えている。
?開山堂良弁さん担当の僧侶の方のユーモア。「今回の写真はこれでゆこう」てな感じ。
?撮影したカメラマンの感性。直すのを忘れた。
?誰かのワルサ。
さて答えは……。末尾に

●そして俊乗堂へ
このお堂も全く初めての入堂、奈良太郎と称される大鐘を吊す豪快な大鐘楼の前にあるお堂、開山堂に較べて大きいお堂です。平家、平重衡の南都焼討でこっぴどくやられた東大寺を復興させた勧進聖、重源上人(俊乗房重源)を祀るお堂。重源さんのお像はお堂中央南向きに安置された小さな像高、風貌からして好々爺、充分お歳は感じますが、どこに復興という大事業を成し遂げた力があるのだろうと思うぐらいの肖像です。86歳示寂直後に快慶が彫したといわれており(恐らく非常に重源さん本人に似ているのではないでしょうか。快慶は重源さんを師として親交があったといいます。)運慶快慶をはじめ鎌倉仏師大活躍の中、彼らを叱咤激励し、一方大仏殿や南大門を初め数多くの堂宇再建と大寺院復興プロデューサーとして事を成し遂げた超人の鮮やかな生き様を感じさせてくれるお像にボクには見えます。
聖武天皇や鑑真さん、行基さん、良弁さんたちの事跡が今に伝わるのはひとえに重源さん無くしては残り得なかったのでは。
今日はこの東大寺と興福寺、薬師寺を巡り唐招提寺を外から南大門越しに大修理を終えた金堂を眺めてスタンダードお寺仏像巡り終了。
N君に、「どうやった。」N君またも「う~ん。」そして「奈良時代はお金がかかりますなァ。」
   
答え。判りません。一度お寺に聞いてみます。