土曜日は古寺を歩こう。

寺勢華やかな大寺も、健気に法灯を守り続ける山寺もいにしえ人の執念と心の響きが時空を越え伝わる。その鼓動を見つけに…。

蘇我馬子創建の龍泉寺。池泉回遊式浄土庭園は必見です。

2010年06月16日 | 大阪の古寺巡り
大阪に生まれ育ち今も住みながら、よくよく考えてみると、大阪の古寺古刹巡り
はほとんど記憶にありません。僅かに四天王寺と観心寺くらいのものでしょうか。
大阪府下にも聖徳太子や行基さん、空海さんの由緒伝承を語る古寺が数多くあり、
有史以来の故地やそういった名刹、古刹が名を残し、府下各地に点在しています。
最古の官道といわれ大和と河内を結ぶ竹ノ内街道、間には金剛葛城生駒の連山、
そして二上山を神と仰ぎ往古、数知れぬ人々の往還を果たしたこの道の大阪側に
も、時代を経た多くの寺々が散在しています。歴史の時々に名を留めた有名無名
の人々が創建に関わり、歴史の翻弄を受けながらも以来連綿と時空を紡ぎ、法灯
を今に伝える古寺の数々。大和の大寺には質量とも適わないにしても、河内東側
の山懐に抱かれ、幾多の物語に包まれた大阪の、そんなお寺を時には訪ねてみよ
うかとふと思いました。明日から雨という予報の前日12日に富田林の古刹、龍泉
寺、観音寺、瀧谷不動明王寺を訪ねました。

龍泉寺浄土式庭園に咲く睡蓮。


[ 龍泉寺 ]
高野山真言宗 牛頭山龍泉寺(りゅうせんじ)。
富田林市の南、龍泉地区嶽山中腹に在る地泉回遊式浄土庭園を備えたお寺です。
寺伝によると推古天皇の勅命により、蘇我馬子が創建したと伝わります。蘇我氏
の寺院創建伝承は仏教黎明期、大和飛鳥周辺に多く伝承されていますが、山越え
の西にというのは比較的珍しいのでは。
その後、南北朝期の楠一族の根拠地としてこの地はあり、楠木正成が先の嶽山山
頂に龍泉寺城を築いたことから、以後の災禍に翻弄されたと伝えています。今、
周辺はみかん畑や果樹園が取り囲み龍泉寺城跡へのハイカーも多いということで
す。

敷き石伝いに参道を歩きます。




八脚仁王門と偏額。立派な門で、左右に阿吽金剛力士が控えています。




仁王門を抜けると正面に本堂が見えます。手入れの行き届いたきれいな植栽は、
今盛りと緑を競っています。


本堂とその偏額。




本堂内部と荘厳された須弥壇。中央お厨子に本尊薬師如来が坐しています。
本堂は閉ざされていましたが、内格子扉の一か所が破れていますのでそこからど
うぞ御覧になって下さいとお寺の方のお許しで10センチ位の破れから覗いたもの
です。さすがにご本尊のお顔をはじめお像はシャドウ、脇侍の二像も目には届き
ませんでした。


聖天堂。


鐘楼。


手水舎。水が枯れているのでしょうか、石をくり抜いた水盆に水はありませんで
した。


境内右手に広がる地泉回遊式浄土庭園は、あまり手を加えず自然をそのまま生か
した庭園。静寂を楽しめます。


浄土式庭園の放生池の睡蓮。


放生池中央の中之島に弁財天を祀る弁天堂。
この弁天さんの由緒に空海さんが出てきます。湧水しなくなったこの池のため、
七昼夜の祈祷と法力で清水満々と湧き出したといいます。牛頭竜王を鎮守とし中
央の島に弁財天、左に叱天、左に聖天を祀ったそうです。


雨井戸。放生池周回の道なかばにあるお堂。
空海さんが湧水祈願をした時、雨乞いの秘法を修して霊験を得、雨乞いの井戸と
して伝承されている井戸。


人の営みに欠かすことの出来ない水にまつわる伝承を色濃く残し、やはり空海さ
んの偉業を伝えつつ法灯を守ってきたこの地のお寺に相応しい寺景と浄土庭園の
飾らない自然の姿を堪能しました。ただ、蘇我馬子や空海さんの匂いは感じるこ
とは出来ませんでした。

明日につづく!