徒然地獄編集日記OVER DRIVE

起こることはすべて起こる。/ただし、かならずしも発生順に起こるとは限らない。(ダグラス・アダムス『ほとんど無害』)

ロンドン・コーリング ザ・ライフ・オブ・ジョー・ストラマー

2011-01-14 05:49:48 | Documentary
ロンドン・コーリング ザ・ライフ・オブ・ジョー・ストラマー
Joe Strummer: The Future Is Unwritten
2007年/アイルランド・イギリス
監督:ジュリアン・テンプル
出演:ジム・ジャームッシュ、アンソニー・キーディス、ジョン・キューザック、ジョニー・デップ
<伝説のパンクバンド“ザ・クラッシュ”のフロントマン、ジョー・ストラマーの生涯に迫るドキュメンタリー。U2のボノをはじめとするミュージシャン、映画スター、映画監督、ザ・クラッシュの元メンバーらのインタビューと貴重な未発表映像で構成する。>(「キネマ旬報社」データベース)

パンクの代表選手と誰もが認められながらも、当のパンクに対して負い目や暗い過去を持っていた、天才でもスーパーマンでもなかったジョー・ストラマーの魂の道程を辿る音楽ドキュメンタリー。しかしクラッシュという、いろんな意味で騒々しいバンドを知らなくても充分伝わるであろう内容。ただしジュリアン・テンプルの演出は貴重な素材と豪華な証言者を山ほど詰め込んだ上に、かなり演出上のギミックを詰め込んでいる。特に前半。それが彼の作品って言えば作品なんだろうけれども、その辺りはドキュメンタリーとしては観辛い構成になっている。しかも、この手のドキュメンタリーとしてはわりと長尺。まあこれだけ素材があれば、とは思うが。

個人的には女優のカーラ・セイモアと最後に会った時に言ったという言葉が最高す。
もちろん原題の<The Future Is Unwritten>という言葉が、いかにも晩年の…というかパンク以前から死の直前までの彼の魂の変遷に象徴している。ただ<Unwritten>と言いつつ、結局、人間って原体験に戻ってきちゃうものなのかもね、とか。
本当にロックバンドの<フロントマン>の典型を体現した男だと思う。

2010年が終わらない

2011-01-13 04:49:39 | SHIMIZU S-Pulse/清水エスパルス06~10
ドラスティックな変革を迎えた清水。12日、ついに健太エスパルスを支えた両翼の移籍が発表された。
早い時期から噂が出ていた淳吾、12月に入って名前が挙がり、まさかとは思っていた兵働、そしてこの一週間ほどで急に具体的になった一樹。まず一樹の場合はこの変革(チャレンジ)の時に、この決断をするというのがまったく意味不明で、理解に苦しみ、呆れもしている。
淳吾は……天皇杯決勝後にゴール裏と口論をする姿をYOU TUBEで観てこれも呆れてしまった。いくら理由があったとはいえ、ちょっとお話にならない。
問題は昨季のキャプテンを務めた兵働だ。スポーツ紙の移籍報道に対して「ガセ」と話したという情報もあり、天皇杯の勝ち上がりで、そして決勝前後のコメントでも残留のニュアンスを残していた。しかし移籍コメントやブログを読む限りでは予想以上に早い段階で決断していたようで、決勝直後(しかも終了直後だ)の報道で感じたように、キャプテンからしてこれではゲーム前からチームはすでにバラバラだったのではないかと改めて思ってしまう。フロントの問題を指摘する声もあるが(そして憶測の域は出ないが、それは何となく理解できる)。

定型文でいくらでも綺麗事は言える。彼らはコメントで揃いも揃って<成長>を口にしている。
しかし彼らはリーダーだった健太の下で、最後まで紳士だったフローデの下で、寡黙な兄貴分だったテルの下で、西部の下で、そして圧倒的なスターだった伸二の下で、このチームで求められていたような<成長>はできなかったのか。これは他サポが煽り気味に言う<逃亡>ではない。自分が本当にチームの矢面に立たなければならない局面で無責任にも<逃げた>としか思えないのだ。現時点では。もちろん彼らにも、清水エスパルスで何も成し遂げられなかった挫折感はあるだろう。健太がチームを去るという、チームのひとつのサイクルの終わりも自覚しているだろう。しかし、それにしても、である。特に兵働については(半ば覚悟していたとはいえ)予想外だったし、残念としかいいようがない。
今週中にSの極みで彼のインタビューが掲載されるらしい。移籍話はまたそれを読んでから改めて。
2010年シーズンはまだ終わらないなァ…。

藤本淳吾選手 名古屋グランパスへ完全移籍決定のお知らせ
兵働昭弘選手 柏レイソルへ完全移籍決定のお知らせ
原一樹選手 浦和レッズへ完全移籍決定のお知らせ

ちなみに彼らが去った後の戦力についてはまったく悲観はしてません。悪しからず。

(1月14日追記)
Sの極みのインタビューを読んだ。
イチやテル、西部の話をするならば、要するに「清水というクラブを支える気がない」ということだろう。
君は一体清水で本当に「成長」してきたのか、訊きたいものである。

金の話をするならば、スポンサーに限界がある以上、やはりこのチームはタイトル(賞金)を獲るしかなかったのだ。「優勝を目指すがギャラが上がるので優勝しない方針」はかつて強化部長の口から漏れた、悩ましい清水の現状なのだけれども(これはこれで、サポやファンを馬鹿にした実に腹立たしい方針なのだが)、少なくとも、タイトルを獲ったのならばクラブと交渉する資格はある。夏過ぎから交渉を始め、12月の柏からのオファーを受けるまで悩み続けても仕方がない。しかしタイトルは獲れなかったのだ。
君はプロスポーツの世界に生きる男ではなく、結局サラリーマンだったのか?
とても「ありがとう」等と言える心境にはなれない。流行りの0円移籍で、この男は何も残さずチームを去る。

タイトルを獲り続けることで、勝ち続けることで、賞金を稼ぎ続けることで、チーム、そしてクラブの求心力を維持し続ける鹿島アントラーズは本当に素晴らしいクラブだと思う。いや、マジで。
健太のチームもそうなるべきだった(なれる可能性はあったと思う)。
そうなっていたら、こんな呆れた事態にもならなかっただろうし、情けない話を聞くこともなかっただろう。
今季、ゴトビ監督が率いる清水は本当にチャレンジするチームに「変わる」だろうよ。
このチームが一番「成長」できて、「チャレンジ」できるチームだと信じている。
そして、そこで、本物の男(プロ)が育ってくれることを願っている。

あ、具体的には書かないけど静岡県の抱えている危険性を理由に移籍を決断したのならば兵働さんに謝罪する用意はありますよ(笑)。

欲求不満のナビゲーター/「ブラインドネス」

2011-01-13 03:32:23 | Movie/Theater
ブラインドネス
Blindness
2008年/カナダ=ブラジル=日本
監督:フェルナンド・メイレ
出演:ジュリアン・ムーア、マーク・ラファロ、伊勢谷友介、木村佳乃
<突然、視界が真っ白になって失明する伝染性の奇病が世界中で蔓延。一切の介護もなく精神病院に強制隔離された患者たちは…。F・メイレレス監督による震撼サバイバル・パニック・サスペンス!ノーベル賞作家ジョゼ・サラマーゴの寓意に満ちた傑作小説『白の闇』を「シティ・オブ・ゴッド」「ナイロビの蜂」の俊英監督が映画化、極限状況下に置かれた人間たちが本性をむき出しにする熾烈なサバイバル模様を描いた衝撃作。>(シネフィルイマジカ

と、解説を読んでしまうとパンデミックネタのパニック・エンタテイメントのようにも見える。事実、ネット上のレビューはこの手の宣伝文句に釣られて観てしまったであろうレビュワーの恨み節の嵐。賛否両論は当たり前、それだけ物語の設定がキャッチーなんだと思う。前提として<謎>の解明やヒーロー、ヒロインの活躍で<奇病>が解決するような展開を望んでいると完璧に肩透かしを食らう。
しかしそれは主題ではないので仕方がない。作品では誰もが<謎>から逃れることができないのだ。むしろ、観る者を終始イラつかせる<唯一目が見える主人公>はストーリーを判り易くするためにナビゲーターとして設定されたのかとも思える。彼女は<世界>を救う神ではなく、愛する旦那に寄り添う人間でしかない。ということで、彼女の何がイラつかせるかといえば、<唯一目が見える>くせに、憤りながらも感染者の凌辱や暴力をただ受け入れてしまうから。しかし彼女は結局何もできないのだ。<唯一目が見える>からこそ、彼女はこの暴力に溢れた<世界>では、圧倒的に孤独で、ヒロインにもなれずに、無力感を味わうだけのナビゲーターになるしかない。
それは結局観客と同じ視点なのだ。何もできない彼女は、<目が見えない>感染者だらけの<世界>でイライラし続ける。

前半は理不尽に隔離された施設での陰湿で破滅的、エゴ剥き出しの密室(隔離)劇がこれでもかと描かれる。そして後半、<解放>された感染者は、既に破滅してしまっていた本当の世界でゾンビのように廃墟の町を徘徊する。そのまんま、誰もが思い浮かべるであろうロメロ的なゾンビ描写。
描かれるのは破壊と再生。オレは、解放までぐいぐいストレスを溜めた挙句の、唐突な再生のラストシーンで鳥肌が立ってしまったクチなので全然オッケー。ジュリアン・ムーアと同化しました。
ただし最初に再生するのがあの人というのは何だかなあとは思うがw
あと木村佳乃の脱ぎっぷりの悪さを批判していた人がいたけど、完全に同意です。

原作も読んでみたい。

2011年初辛口について/アジアカップ・ヨルダン戦

2011-01-10 00:31:17 | Sports/Football
以前、某格闘家に話を伺ったとき、彼は「私たちはNGができない勝負の世界に生きているんです!」と凄みを利かせて言い放った。彼は自分の生きる世界を「真剣勝負」の世界だとアピールしたわけだ。
生死の問題になりかねないリングの上で、身体を張って生きる当事者にとってはそれは確かなのだが、もう一方で興行の世界では「見せる」という所作、そして、いくら何でも一発勝負の殺し合いではないのだから「継続」の思考(演出)が必要となる。一発勝負で完全燃焼してしまうのはアマとしか思えない。
今回勝てなくとも、負けないのがプロだろう。どんなに苦しもうと修整しながら最終的に勝てばいいのである。

格闘技興行の世界はある意味エンドレスで複雑怪奇な世界だが、サッカー(タイトル)にはゴール(優勝)がある。
セルジオさんが「これで予選突破は難しくなった」とツイートするのは、上記の格闘家と同じ種類の、営業トークの類だとは思うが、また一喜一憂に一喜一憂する四年が始まったと実感した。

オカはやっぱり素晴らしかった。

序曲以前/「ファイナル・カウントダウン」

2011-01-08 08:23:30 | Movie/Theater
ファイナル・カウントダウン
The Final Countdown
1980年/アメリカ
監督:ドン・テイラー
出演:カーク・ダグラス、マーティン・シーン、キャサリン・ロス、チャールズ・ダーニング
<1980年。航行中の原子力空母が突然の嵐に巻き込まれ、1941年12月7日の真珠湾攻撃直前のハワイ沖にタイムスリップ。まさに日本軍が奇襲をかける寸前だと知った乗組員たちは、最新鋭戦闘機F14によるゼロ戦との戦闘に突入するが…。>(シネフィル・イマジカ)

似たような設定の映画や漫画は観たことがあるような…だが、この作品、公開当時は大作扱いだったような気がする。さすがに海軍省とグラマン社の協力を得ただけあって原子力空母<ニミッツ>艦上の描写はかなりの迫力がある。しかしタイムスリップしたニミッツを待ち構えている歴史的事実は重く、深く、アクション満載なエピソードにも関わらず(のはずなのに)、大雑把な艦内ドラマに終始してしまっている観は否めず、結局原子力空母と戦闘機のバトルを描きたかっただけじゃないの?と思えたりして。
しかもマーティン・シーンの設定があまりにも謎すぎる。
こういう作品を観ると思い出すのが、設定は大袈裟なんだけど結局火山が噴火しただけのパニック“巨編”『地球崩壊の序曲』なんだよなァ…。ということで、1980年にはすでにオールスターパニック映画の時代は終わっていたのだった。『ファイナル・カウントダウン』の場合はどっちも中途半端なんだけど。
軍ヲタの皆さんならばそれなりに楽しめると思います。

悪意のスパイラル/「激突!」

2011-01-08 07:28:38 | Movie/Theater
激突!
Duel
1971年/アメリカ
監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:デニス・ウィーヴァー、ジャクリーン・スコット、エディ・ファイアストーン、ルー・フリッゼル
<ごく普通の男が車でハイウェイを走行中、無謀運転する大型タンクローリーを少々強引に追い越す。だが、それを機に大型タンクローリーに執拗に追いかけ回され…。>(シネフィル・イマジカ)

今更説明無用な作品ではあるのだが、何回目かの鑑賞。
シンプルでスピーディーな構成故に40年の時を超えても、現在にも通じる悪意のあり方。普通のサラリーマン(借金の取り立てのためにカリフォルニアに向かう営業マン)と姿なきトラッカーが互いに煽り煽られながら悪意が積み重なっていく展開は圧巻。果てしなく続くかのように描かれる地獄のカーチェイス(しかも一方通行)、心理的に追い詰められたホワイトカラーがドライブインのブルーカラーやスクールバスの子供たちにも煽られていく姿。ここに描かれているのは1971年当時の「現代の恐怖」であると同時に、サディスティックなストーカーや安易に、そして無慈悲に<自己責任>や<自業自得>を叫ぶ心無い人々とのネットトラブルにも通じる、現在の恐怖、悪意のスパイラルでもある。
40年経っても、40年経ったなりに現代にフィードバックして感じ入ることができる名作。あ、まあ、通じる要因というのは構成にかなりゲームっぽいところがあるからかも。デニス・ウィーヴァーもチキンレースの序盤でPlay the game!って叫ぶしな…。しかしアクション映画としても、いつか劇場で観たい作品すな。

続報を待つ

2011-01-08 02:11:06 | Sports/Football
亡くなられたお婆さんは気の毒だが、康平はこれからどうなってしまうのだろう。
最後に観たのは、あのときもアホなカードを貰っていた5年前の天皇杯決勝か。
もう何年も前の所属プレーヤーとはいえ、やはりショックだ。
とはいえ一方的な状況だと断定されているわけではないし、警察も調査しているようなので続報を待つ。
しかし、本当に康平はどうなってしまうのだろう。
地域リーグ所属とはいえ、まだ現役なんだからね。

ちなみに一部マスコミのアンチJリーガーキャンペーンはもういりません。

しかし、よく考えたらエスパルスクラスタの情報以外に続報なんて出てこないような気もする…が。

季節の終わり/天皇杯決勝・鹿島戦

2011-01-03 04:59:02 | SHIMIZU S-Pulse/清水エスパルス06~10
健太「やっぱり一人ではなかなかできない。やっぱりチームがしっかりとした協力者がいないと勝てるチームはなかなか作れないなという風に思いましたし、いろんな意味で監督業はホントの意味で孤独なんだなということも、この6年間でつくづく思い知らされましたし、仲間うちで「楽しい」っていうわけじゃないですけど、協力して、みんなでという想いもありましたけど、やっぱり責任は自分は取らなければいけない。自分自身がしっかりしなければいけないという中で、やらなきゃいけない職業だなと、厳しさというところをこの6年間で思い知らされましたし、ホントに勝つということになれば、なんでしょうね、別にクラブのせいに……逃げるつもりは全くないですけど、ただやっぱり現場といろんな意味で一体になって戦わないとやっぱりタイトルというのは転がってこないんだなという想いはあります」(Sの極み 1月1日付)

元旦は天皇杯決勝戦、鹿島アントラーズ戦

結局家を出たのは8時を過ぎてしまったが、12番ゲートの上に場所をキープした。周囲も声を出す人たちが多かったので心強く、最後まで声を枯らした。

ゲームが終了後、松葉杖の兵働がゴール裏に姿を見せ、ひとりひとりと抱き合う。その印象的な姿を見送ってからは、しばらくは声も出なかった。前列とプレーヤーや関係者がトラブルを起こしたという情報もあるが(YOU TUBEに動画も公開されていた)、もはやそれも瑣末なことである。驚くほど心の動きがなかったのは、この「強い」チームが結局何も残せないまま終わってしまったからであり、その「強さ」すら儚いものだったことを実感してしまったからだ。
ゲーム終了後に飛び込んできたニュースには耳(目)を疑ったほど、余りにもサポーターには残酷なものだった。本当にこのチームはひとつにまとまっていたのか、結局バラバラだったのではないか。実に寒々しい思いがした。
この件も含めて移籍選手情報は公式に発表されるまでは信じ難いが、タクに「この」アントラーズに行って欲しくはない。

兵働「頼むから勝ってくれと思いながら、優勝して今シーズンを締めくくれれば、良い形でみんな送り出せると思ってみてました。(中略)準優勝で悔しい思いをしたので、来シーズンもまた頑張れるだろうと、また頑張ろうと言いました」(J'sGOAL 1月1日付

兵働のコメントの真意はよくわからないが、他サポはこの状況を「チーム崩壊」と呼ぶ。
ある程度の情報と状況を知る清水サポにとっては、個々の事情や報道のニュアンスに違和感を感じるので一概に「崩壊」とは思えないのだが、他人の不幸が大好物のマスコミのフィルターを通して見てしまえば、確かにそう見えても仕方がないような状況ではある。
かつてのヴェルディやジュビロのように、栄光を背負った主力が離脱することでチームを崩壊させるということもなく、タイトルを獲り続けることで強さを維持し続けたアントラーズ。一方チームが「高く評価」されながらも、結局何のタイトルを獲れずに終わってしまったエスパルス。
天皇杯優勝によってACL出場権を得るという、これ以上ない「タイトル」を決勝のモチベーションに変えたアントラーズ。「このチーム、このメンバー」という余りにも儚いモチベーションで勝ち上がったエスパルス。
準決勝で、三連覇という「おまけ」のようなモチベーションで挑んできたガンバ相手に準ホームのエコパで対戦するという状況で、エスパルスが「このチームらしさ」を発揮した、思い通りの快勝を果たすことができたのも、それはそれで納得できる。このチームはノンタイトルの、フラットな状況であれば実に素晴らしいゲームを魅せる「強い」チームだった。個々のプレーヤーのクオリティがアントラーズに劣っているとは絶対に思えない。むしろクリエリティブでは勝っていただろうと思う。しかしプレーヤーを突き動かすモチベーションやリーダーシップを得ることはついにできなかった。

アントラーズとエスパルスは実に対照的であると言える。それは紙一重とも言えるし、彼岸にあるとも言える。まあ「アントラーズに学べ」とは思わないけれども。
ただひとつ、今大転換の過程にあるチームが「アントラーズになれた可能性」はあった。
例えば2008年のナビスコカップ、2009年、そして2010年のリーグ戦、そして2度の天皇杯決勝。タイトルがひとつでも獲れていれば、このチームの未来は大きく変わっていただろうと思う。タイトルを獲ることで強い個性が強い絆を保ち続けるアントラーズのように。

しかしこのエスパルスの大転換が単なる一クラブだけの転換ではない可能性もある。
清水の場合、移籍ルールの変更に加えて、報道されているプレーヤーの多くが今シーズンでの契約満了を迎えてしまったがゆえに過剰な混乱を引き起こしているが、移籍ルールの変更と元旦の読売新聞が報じたニュースを併せて見れば、この状況は今後、他クラブでも起こる可能性が間違いなく、ある。プレーヤーの意識の変化、クラブ運営が見直されようとしている。他クラブが「(現在の)エスパルスになる可能性」もあるわけだ。

<2013年シーズンからJリーグに導入される毎年の資格審査、クラブライセンス制度の概要が31日、明らかになった。 3年連続で赤字を出したクラブはJ1からJ2に降格させる方向で調整されている。公式参加条件を明確にすることで、リーグの価値向上を目指す。(中略)赤字については緊急の選手補強などで発生する可能性のある単年度の赤字は容認するが、3年連続は認めない。 Jリーグ関係者は「財務でもフェアプレーを求めていく」と話している。(中略)審査基準は、J1はJ2より厳しくすることが検討されている。2012年6月にはライセンス申請を締め切る見込みで、今年は試行期間として仮の手続きを進める予定だ。>
読売新聞 1月1日より

この決勝戦で6年間を振り返るのは重過ぎる。
この6年間、あまりにも無邪気に一喜一憂してきた。

淳吾「格好良くいえば、このチームの次に進むときが来たと思うので、そういうタイミングじゃないかと思います」(J'sGOAL 1月1日付

お前が言うな…とは思わないでもないが。
淳吾の言うとおり、個々のプレーヤーだけではなく、チームは次の段階へ進む時期に来ていたのは間違いない。健太体制と同時に加入した兵働は6年、淳吾にしても5年、選手寿命が短い大卒プレーヤーという意味でも、彼らがエスパルスで過ごした時間は決して短くはないし、重くもあるだろう。それでも彼らに失望してしまうのはほとんど感情的な部分でしかなく(しかしそれが大きいんだな、これが)、プレーヤーとしての判断はそれなりに尊重できる。自己プロデュースとしてはあまり良い判断とは思えないけどね…。

5年前の元旦、オレたちは「チーム」に確信を抱いた。最後まで残留争いをしたこのシーズンの終わりに、このチームは強くなると確信した。そして、それは「ほぼ」間違いなかったと今でも強く思う。「浦議」のキャッチコピーではないが、Jリーグの中で「健太エスパルスほど熱く語れる対象はな」かったのだ。それは自信を持って言える。
しかし、その5年後の元日の国立競技場で<心血を注いだものが破壊されるのを見て>しまった。
それでもオレたちは<腰をかがめてそれを拾い、古い道具で再建する>の見守るしかないのよね。

ひとまず今月中には陣容が固まる。もちろんオレも腹は括った。
どんなカテゴリーであってもプレーヤーはチームによって変わる。そしてチームを変えるのは監督であり、フロントである。
あまり…というか、この冬はほとんど良いニュースがないのだけれども、個人的には意外と今季を楽しみにしている。残るプレーヤーたちが、本当にこのチームを「オレのチーム」と呼べる、戦えるチームに変わっていくことを願う。そして、また清水エスパルスを熱く語れる季節がやってきてくれることを祈る。

岩下「(清水は)力のあるチームだと思うし、タイトルを取ることによって、それぞれの選手たちの自信にもつながって、違うチームになれるぐらいの刺激とかきっかけにもなるので、タイトルが本当に欲しかったですね。だから、取れなかったのはすごく悔しいし、まだまだ力不足だと思います」
J'sGOAL 1月1日付

真希「いや、勝ちたかった……サッカー人生で一番泣いたかも知れない(中略)(Q来季はマサキが中心でやるぐらいのつもりで?) そうっすね。ホント気持ちはそのぐらいで、やらなければいけないと思いますし、やりたいっすね」

宏介「心機一転、また気持ちも切り替えて、全員ゼロからのスタートなんで、また勉強になることも多いだろうし、そん中でポジション争いに勝って、来季はずっと出続けられるように頑張ります」
(以上、Sの極み 1月1日付)


健太ありがとう。どうしたって清水との縁が切れるわけじゃないんだし、また第二次体制の時期がやってくることを願っている。今季を最後にチームを離れる健太チルドレンたちありがとう(鹿島はもちろん、個人的にクズクラブに認定した名古屋と柏は絶対に負けられねェけど)。
そしてバーケンさんありがとう。あなたのお陰で密度の濃い6年間を過ごせたと思うよ。あなたは本当に大事な場面で去ってしまったけれども、エスパルスの戦いはまだ続いていく。
この6年間はJの歴史には残らなかったけれども、オレの心の中には歓喜と失望がはっきりと刻まれた熱い季節だった。

今季のプレイバックと愚痴と恨み節は今季の陣容が固まり次第…たぶん。
変わるのは楽しみ、だが、さすがにフロントもサポを生殺し状態にするのはいい加減にして頂きたい。
本当、どうすんの? 今年のカレンダー。グルーポンの謹製おせち詐欺じゃないんだから…。

(1月3日追記)
何か煽られたようなので追記しておく。
Twitterにも指摘があったし、サポも認識しているはずだけれども、このブログのスタンスも以前から「エスパルスの選手層はリーグトップレベルの厚さ」と主張してきた。ということで「ひとつのサイクル」が終わった時点で「選手層」が見直され、大改革が断行されるのは当然である。
もちろん6年という時間を共に過ごし、「清水の顔」とも思えるプレーヤーにまで噂が立っていることは残念だし、寂しいことでもあるけれども、清水の厚過ぎる選手層を前提に考えた場合、心ないマスコミや他サポのいうような「崩壊」というニュアンスには違和感があることを表明しておく。「崩壊」した方がマスコミや他サポには都合のいい話のタネになるのはわかるけれども、そういう安直な話題作りには徹底的に抵抗する。
井原のCMじゃないが、「メンバーが足りません」みたいな状況だったらわかるがw
オフィシャルの情報が少なすぎるためにフロントのスタンスは実にわかりずらいのだけれども、現イラン代表監督のゴトビ氏を招聘する以上、残留争いの危険性も秘める賭けとはいえ、何のヴィジョンもないとは思えない。ゴトビ氏については昨年の年末に書いた。
あとは陣容が固まってから振り返りたい。

ことよろ

2011-01-01 03:29:33 | 素日記
皆様、あけおめことよろでございます。

30日の夜に草ナギ君か海老蔵かというくらい、我ながらちょっとどうかと思うぐらい呑み過ぎてしまったので、今年の大晦日は深く反省をしつつ大人しく呑んだ。二日酔いで内臓が疲れていたということもあるけれども。
当然、元旦を万全の状態で迎えたいということもある。
体調もだいぶ戻ってきた。オレひとりならともかく、今回は連れがいるので整列の時間には行けそうもないが、キックオフ6時間前には国立へ行く…予定。

今年の最初の夜は祝い酒で迎えたい(また酒か)。
そろそろ仮眠。

勝利の時も、敗北の時も、再び

2011-01-01 03:19:23 | SHIMIZU S-Pulse/清水エスパルス06~10
もし周囲の人がみな度を失って あなたを非難しても 落着きを失うことがないなら
もしみんなの者があなたを疑っても 自分に確信を持ち 人の疑いを思いやることができるなら
もしあなたが待つことができ 待ちくたびれることがないなら
もし偽りを言われても 偽りを返さないなら
そして善人ぶったり りこうぶったりしないなら

もし夢を持っても その夢に振り回されないなら
もしよい思いが浮かんでも それを最後の目標としないなら
もし勝利を得ても 敗北をなめても 勝利に酔わず 敗北にくじけないなら
勝利と敗北のふたりの詐欺師を同じように扱えるなら
もしあなたの語った真理のことばが 無頼の徒によって
愚か者をとらえるわなとしてゆがめられるのを聞いても 耐えることができるなら
もし心血を注いだものが破壊されるのを見て 腰をかがめてそれを拾い 古い道具で再建するなら
(中略)
地はあなたのもの そこにあるすべてのものもあなたのもの
--私の子よ もうあなたは一人前だ
(ラドヤード・キップリング「もし」/『人生の訓練 新版』V・レイモンド・エドマン/海老沢良雄・翻訳/いのちのことば社)

<自分としては、サッカーの試合の結果などにできるだけ影響されないようなふりをしています。しかも本当はふりをするのではなく、実際そういうことに影響されないよう心がけたいと思います。キップリングの有名な詩があります。

あなたがそれら二人のペテン師とうまくつきあうことができれば、
勝利と時も敗北の時も
あなたがそれら二人のペテン師と同じようにつきあうことができれば
あなたは男なのです

しかし現実はそう簡単なものではありません。私はまだサッカーを生きているからです。>
(『勝利の時も、敗北の時も』オスヴァルド・アルディレス/鍋田郁郎・構成/NHK出版)

決戦直前

2011-01-01 02:48:39 | SHIMIZU S-Pulse/清水エスパルス06~10
健太「すべてをこの試合にぶつけたいと思います。それは何かといったら、一口では答えられないですよね。もちろん、(試合への)持って行き方にしても、6年間いろいろ試行錯誤して、チームをどう作るのかとか、どういう形でというのをやってきたわけですから」

淳吾「前からアグレッシブに、裏を狙い続けるぐらいの意気込みで。あと、セーフティーなプレーだけはしないように、失点したくないなとか、決勝だからという気持ちを出さないで、平常心でできれば大丈夫だと思います」

オカ「自分は5年前の(天皇杯)決勝が初先発だったので、ちょっと運命的なものを感じるけど、そこはあまり気にはしないです。僕らは失うものはないので、みんなと最後に一緒にやれるという気持ちですかね」

イチ「僕のエスパルスでのプロ生活は、天皇杯で始まっているので、最後にこういう決勝という舞台で終われるので、エスパルスでのプロ生活を最後に良い形で締めくくりたいです」
(以上、J'sGOAL 12月31日付

イワシ「自分の価値だったり、チームの価値を上げるためにも大事な試合になると思うんで、サッカー選手として長くやって行く中で『あの試合が凄いきっかけで良くなれたな』という風に思えるような試合にしたいと思いますけどね」

宏介「(2008年ナビスコ決勝)ちょうどそれ、車停めて車のナビ(テレビ)で観てたんっすよ。(笑)『いいなぁー』とか思って。ホント『清水に来て良かったな』と思いますね
(以上、Sの極み 12月31日付)

イビツァ・オシム「監督ではなくて去年まではやはりブラジル人の問題があったんじゃないでしょうか、このチーム(エスパルス)は。でまあすごく有名な選手とかがいて、周りの期待が大きかったんじゃないでしょうか。清水は今回監督が決めて、若い選手を多用しているということで、そういう意味では優勝するとかそういうことじゃなくて、やはり清水のクラブとしてのプランによって、そういう風に若い選手を使い続けることによって、今シーズンが終った頃には若い選手が一人前の選手になっているんじゃないでしょうか。そういう意味では『清水というのは若い選手がたくさんいるよ』という一つの方向性が生まれるということでも良いことではないでしょうか。
あとはまあそれで、どうゆう結果になるかっていうことですけど。まあただ、やはりこの自分たちの地方の選手が良いプレーをしたときにはやはり良いものですよね。」(Sの極み 2005年4月23日付)