徒然地獄編集日記OVER DRIVE

起こることはすべて起こる。/ただし、かならずしも発生順に起こるとは限らない。(ダグラス・アダムス『ほとんど無害』)

2003年6月 空のあなたの道へ/レイ・ブラッドベリ「火星年代記」

2012-06-11 00:19:37 | Books
<車が動き出した。「さようなら、ティースさん」
「でなきゃ<ドライ・ボーンズ>か」
「さようなら、旦那様!」
「勝手にしやがれ、ロケットが爆発したって知らねえぞ!」
車は誇りを巻きあげた。少年は立ちあがり、両手をメガホンのように口にあてて、ティースに最後のことばを叫んだ。「ティースさん、ティースさん、これから毎晩何をするんですか。毎晩何をするんですか、ティースさん」
静寂。車は道の彼方に消えた。見えなくなった。「ありゃどういうことだ」とティースは考えこんだ。「おれが毎晩何をするかって?」
(中略)それは見事な質問だった。ティースは胸がむかつき、心はからっぽだった。そう。本当におれたちは毎晩何をしたらいいんだろう、とティースは思った。やつらがいなくなった今、何をしたらいいのか。心は完全にからっぽで、手足は萎えたようだった。>
(レイ・ブラッドベリ/小笠原豊樹・訳『火星年代記』「2003年6月 空のあなたの道へ」より)

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