徒然地獄編集日記OVER DRIVE

起こることはすべて起こる。/ただし、かならずしも発生順に起こるとは限らない。(ダグラス・アダムス『ほとんど無害』)

“他人”は違う/「ぼくたちの近代史」

2011-09-15 14:36:28 | Osamu Hashimoto
<全共闘の時代が終わって七〇年代になって、誰が口きき始めるかっていうと、最初は『限りなく透明に近いブルー』で、あれは完全に高校生べ平連ですね。で、次が『僕って何』。あれは完全に、自分が一般学生だっていう自覚のない「一般学生」ですね。それが一般学生の最大特徴だけど。
 高校生ベ平連、一般学生と来て、七〇年代の最後はワタシのような類ですよ。アチャラカ色物のセンね。全共闘は出てこない。やっぱりなんか膨大な類の人間は沈んでるんだと思うのね。何故沈んでいるのかっていうんで、自分の言葉がないっていうことにやっと気がついたらしいのね。やっと気がついたというよりも、全共闘が終息していく段階で、みんな「あ、自分の言葉つかまえなくちゃいけない」っていう、そういう入り方をしてったんだと思うんだけどさ。ただ、「自分の言葉ってどういう言葉なんだろう?」って考え始めると自分の言葉がなくなっちゃうっていうぐらいに、言葉って、ある意味で他人の言葉を借用してどんどんどんどん自分で使っていくようなことだからさ、それを使う“自分”ていう位置がはっきりしてないかぎり“自分の言葉”って生まれないのね。
 で、自分の言葉を生み出す為に、自分をはっきりさせる方法っていうのは、「あ、その言葉、面白そ」って、他人の言葉を取り込むことによって、他人になることだと思う。他人になることによって、「“他人になった自分”とやっぱり“他人”は違う」って形で、他人と自分の引き算をすることしかないと思う。>
(橋本治「ぼくたちの近代史」主婦の友社1988)


ぼくたちの近代史
<本書は、橋本治スーパー6時間講演会「ぼくたちの近代史」(於:池袋コミュニティ・カレッジ,1987年11月15日)の内容に補筆したものです。鬼才橋本治が語り尽くした「近代の検証と行方」の感動の書。>

登録情報
単行本:218ページ
出版社:主婦の友社 (1988/09)
ISBN-10:4079275471
ISBN-13:978-4079275477
発売日:1988/09
商品の寸法:19x13.2x1.6cm

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