マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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下笠間I家の正月のモチ

2010年01月22日 07時30分17秒 | 宇陀市(旧室生村)へ
下笠間のI家では年も押し迫った暮れの28日に正月に供えるモチを作る。

翌日の29日は「苦」が付く日なのでモチはこしらえない。

朝早くから搗いたモチは家のそれぞれの神さんに供えるもので膳に並べる。

膳には長い髭のような根があるトコロイモ、ゴマメの田作り。

昔は雑魚を川で採って来てそれを炊いたという。

コウジミカンにクリと決まっている。

モチの上には串ガキが置かれる。

いつもニコニコ、仲睦まじくの語呂良く10個の干し柿だ。

膳はイタダキサン、ダイジングウサン、ダイコクサン、エビスサン、サンポウコウジンサン、センゾサン、ミズコサン、イナリサンの8種。

イタダキサンはモチを四つ並べられた。

家族が増えますようにとモチの数は家族の人数に一つ加えた数にする。

サンポコウジンサン(三宝荒神さん)は竈に供えるもので三段の重ねモチ。

福の神とされるダイコクサン(大黒さん)、エビスサン(恵比須さん)(※1)の一枚モチは大判小判の形にする。二段重ねのモチはダイジングウサン(大神宮さん)で、二つ作る。

同じく二段重ねのモチにはセンゾサン(先祖さん)、ミズコサン(水子さん)、イナリサン(稲荷さん)がある。(※2)



膳以外に真ん中にヘソ(※3)と呼ばれる突起したモチをくっつけているミカヅキサン、ゴヤサン、ジュウゴヤサン、ニジュウサンヤサン、ニジュウロクヤサンがある。

正月明けの三日に食べるミカヅキサン(三日月さん)(※2)、旧暦五日はゴヤサン(五夜さん)、十五日がジュウゴヤサン(十五夜さん)、ニジュウサンヤサン(二十三夜さん)、ニジュウロクヤサン(二十六夜さん)と続く。

ヘソが無いのがツキノカズノモチ(月の数のモチ)(※5)で、一年間の月の数だけ作られる。

閏年の場合は13個になる。

ヤマノカミ(山の神)(※6)は平べったいモチで山の神さんに供える。

大晦日の午前0時を越えたときといえばお正月。

当主はイタダキサンに財産目録や通帳を膳に乗せて、アキの方角に向かい頭の上に持って拝む。

「健康で働かしてもろうたおかげで一年間、これだけも増やすことができた。今年も増えますように」と祈る当主の膳は「イタダキの膳」と呼んでいる。

ダイコクサンとエビスサンには「カケダイ」と呼ぶ干したタイがつきもの。

まさに恵比須さんが釣った鯛のようで、豊作始めとされる11日に食べる家があったという。

I家では田植え始めと4月末頃の田植え仕舞いに食べるそうだ。

このように古来より万物平穏の願いを込めて、家族繁栄の願い正月さんのモチを供えてきた。

(※1)御杖村では「コバンノモチ」と呼ぶ。
(※2)御杖村では「ミズノモチ」がある。水神さんに供えるモチで、初水を汲む時に供える。
(※3)御杖村では「チョボ」、淡路島南淡では「ホシサン」と呼ぶ。
(※4)御杖村では「ミカヅキサンノモチ」と呼ぶ。
(※5)御杖村では「十二ガツサンノモチ」と呼ぶ。
(※6)御杖村では「大判小判ノモチ」と呼ぶ。

(H21.12.30 Kiss Digtal N撮影)