本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

神と黒蟹県

2024-08-11 06:40:08 | Weblog
■本
69 街場の成熟論/内田 樹
70 神と黒蟹県/絲山 秋子

69 内田さんの各所に発表された文章を集めた本です。比較的近年に発表された文章が収録されています。一応「成熟」をテーマにされているようですが、ウクライナ危機、日本の国力低下、ジェンダー問題など、幅広いテーマで語られています。また、書評もいくつか収録されていて、私が昨年読んだ「ストーリーが世界を滅ぼす」に対する感想(「科学」の重要性を強調されている点が印象に残りました)など、興味深かったです。個人的には、「はじめに」でいきなり、私が最近持っている問題意識である「リベラルに欠ける可愛げ」に対するヒントをもらえたのが有意義でした。「政治的に正しいことを機嫌よく言う」のは難しいが、この困難なミッションを果たさないと、子どもたちに「成熟することへのインセンティブ」を提供することはできない、と喝破されている点に感銘を受けました。正しいことを機嫌よく言える人間になりたいと思いました。

70 タイトル通り、モンスターエンジンさんのコントに登場するかのような「暇を持て余した神」が、吉田戦車さんの漫画「ぷりぷり県」のような架空の県、黒蟹県で生活する様子を中心に、その周辺に住む人々のエピソードを描いた連作短編集です。地方都市あるあるを随所に挿入しつつ、そこで生活する人々の葛藤や喜びが包容力たっぷりに描かれています。それぞれの短編の登場人物が微妙に絡み合う点も読んでいて楽しいです。絲山さんの作品に共通する、「仕事」をする上での理不尽さや楽しさも丁寧に描かれています。個人的には50代の人間の中途半端な立場に対する優しい描写に共感しました。仕事に先が見えなくても、家族とうまくいっていなくても、なりたかった自分になれなくても、新しい仲間とそれなりに楽しく暮らしていける予感に満ちた描写に救われました。50代以上の人間にとって、それほど激しい刺激は不要なので、こういった地方都市に移住して、適度に新しい刺激を受けつつのんびりと過ごすのもよいかと思いました。それはそれで、心地よい刺激だけではないとは思いますが。


■映画 
66 化け猫あんずちゃん/監督 久野遥子、山下敦弘
67 ナバロンの要塞/監督 J・リー・トンプソン

66 大好きないましろたかしさんの漫画が映画化されるということで観に行きました。ロトスコープという、俳優(あんずちゃんは森山未來さんが担当されています)が演技した実写映像をトレースしてアニメ化する手法で制作されたそうですが、特に良い印象も悪い印象も持ちませんでした。主人公の37歳の化け猫あんずちゃんは、いましろさん作品らしくオフビート感漂うキャラクターで、その自由さに憧れます。長編映画化作品なので、仕方のない面もあるのですが、映画用に登場した少女とその父親のキャラクターが、俗にまみれ過ぎていて世界観に合っていないのと、これまた映画用に付け足された地獄の描写が「千と千尋の神隠し」の劣化版のような感じで興ざめでした。個人的には、映画向けに付け足された要素は全て失敗に終わっていると感じました。一方、中盤までの原作に忠実なパートは、南伊豆の素朴な風景で繰り広げられる、世慣れないキャラクターとあんずちゃんとのとぼけた掛け合いが楽しかったです。映画版しか観ていない方には、原作漫画も読むことをお勧めします。厳しめの評価になりましたが、いましろたかしさんの作品を映画化して下さったことには感謝しております。

67 先日聴いていた村上春樹さんのラジオ番組で、 「ナヴァロン洋裁店」というダジャレと共にテーマ曲が紹介され、映画もお面白いとおっしゃっていたので観ました。ナチス・ドイツがナバロン島に保有する、要塞砲の破壊を命じられた6人の癖が強めの精鋭(と言いつつ、まあまあ早い段階で隊長が怪我をして足を引っ張りまくるのですが、それはそれで意外な展開で興味深かったです)が、任務に奮闘する姿を描いた作品です。若干ご都合主義的なストーリー(ドイツ兵が無能過ぎます)ですが、先が読めない展開で、裏切りなどのどんでん返しもあり、エンターテイメント作品としてはかなり良質です。絶壁踏破や戦闘のシーンなどは、今の技術であれば、もっとリアルかつ迫力満点に仕上げられたと思いますが、カット割りを工夫して緊迫感を出している映像は味がありました。なにより、それぞれのキャラクターが立っていて魅力的です。随所に表現される男同士の友情が泣かせます。「ミッション:インポッシブル」のようなスタイリッシュさはありませんが、難易度の高いミッションを完遂する男臭いアクション映画です。
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