本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

バービー

2024-07-21 07:13:09 | Weblog
■本
63 エッセイストのように生きる/松浦 弥太郎
64 死なないノウハウ/雨宮 処凛

63 「暮しの手帖」の編集長だった方が、自らの価値観を提示しながらエッセイストの心構えとその書き方について教えてくれる本です。主張されている内容は、まさに「丁寧な生活」の見本のような内容です。書かれている内容は概ね同意できるものでしたが、目新しい主張はほとんどなかった印象です。私がひねくれ過ぎているのだと思いますが、書かれている内容や文体が欧米のスラングでいう「Woke」(意識高い系)臭がきつすぎるので、個人的な好みに合わなかったのだと思います。一見誰でもなれそうですが、この本の教えに従うとなると、日々の生活に追われない一部の選ばれた人しかエッセイストになれないと思います。私はこの種のエッセイを読むのであれば、日々の生活に疲れ、社会や他者に対する恨み辛みを詠んだ詩や短歌の方を好みます。エッセイストではなく、ロックに生きたいと思います。

64 貧困問題に取り組む活動家であり作家でもある雨宮処凛さんが、生活保護など、様々な人生の危機に陥った際に利用可能な福祉制度や民間のサービスについて教えてくれる本です。こういった内容が網羅的にまとめられたものは少ないのでとても参考になりました。子どもたちに投資の教育をすることは否定しませんが、それよりも前にこういった知識を学校でも教える必要があると思いました。雨宮さんがおっしゃる通り「自分ひとりで悩まなくて済む」ための知識は、人生の様々な局面を救ってくれますし、個人が抱え込むことによるコストを考えると、社会全体にとっても有意義だと思いました。遠方にいる親の介護を丸投げできるサービス(この社団法人が介護をするのではなく、様々な介護制度をコーディネートして、介護施設などからの問い合わせの一次窓口もしてくれるサービス)が事業として成り立っていることに驚きました。こういった社会課題を解決するサービスが今後持続可能なかたちでどんどんと出てくればよいとも思いました。あえてそうしている面もあるかと思いますが、この本で紹介されているような制度が(定額減税やマイナカードの周知よりも)もっと知られるような活動も必要だと感じました。


■映画 
61 バービー/監督 グレタ・ガーウィグ
62 キングダム 運命の炎/監督 佐藤 信介

61 昨年アメリカで最もヒットした作品です。「オッペンハイマー」と関連付けた「ハーベンハイマー」のキノコ雲を背景にした画像に公式アカウントが反応したことで、日本では少し炎上していましたが、普通によくできたコメディ映画でした。男性優位な社会をユーモアたっぷりに批判しつつ、男性自身もそのマッチョなイメージに苦しんでいる、というバランスの取れた配慮(しかし、ギャグはぶっ飛んでいます)が行き届いている点が秀逸だと思いました。冒頭から中盤にかけて、ライアン・ゴズリング演じるケンがあまりにも馬鹿っぽいキャラクターだったので、なぜハリウッドで一定の地位を確立した彼がこの役を引き受けたのだろうか?と悩みながら観ていたのですが、最後には納得していました。バービーを演じたマーゴット・ロビーは、まさにはまり役です。彼女の派手な可憐さと内に秘めた不気味な狂気が、人形特有の無表情の恐ろしさと見事にマッチしていて、最高に魅力的でした。「レディ・バード」のグレタ・ガーウィグ監督らしく、このバービーとケンが最後に恋愛関係にならない点も素晴らしいと思いました。それぞれのキャラクターが恋愛に頼らず自立していく姿は、癒しを求めて他者に依存しがちな我々に対するメッセージであると受け止めました。バービー人形の過去の失敗作や、この人形の生みの親が不正財務処理で捕まったことをいじるなど、ブラックなギャグの切れ味も抜群で、子どもから大人まで楽しめる素晴らしいエンターテイメント作品だと思います。マーケティング成果と監督や俳優の個性が調和している点にも、ハリウッド映画の奥深さを感じました。

62 「キングダム」シリーズの3作目です。日本での原作アニメ実写映画化作品は、どうしても予算的な制約で映像の迫力という面で難があると思うのですが、このシリーズは本当に善戦していると思います。後半の主人公「信」の突撃シーンは迫力満点でした。前半は王「嬴政」の過去のエピソードで泣かせ(杏さんの熱演が印象的です)、静と動との対比も見事です。何より長編原作の良さを損なうことなく、適切な長さでと区切りで単体の作品としても成立させている手腕が素晴らしいです。王騎を演じる大沢たかおさんを筆頭に、「誇張し過ぎ」にならないギリギリの範囲での各俳優の「大きな演技」も効果的です。理想的な原作アニメ実写映画化作品です。
コメント
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