本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

町長選挙

2021-07-03 05:39:01 | Weblog
■本
53 町長選挙/奥田 英朗
54 演劇入門 生きることは演じること/鴻上 尚史

53 破天荒な精神科医を主人公にした連作小説の3作目。私が世界観やドクター伊良部のキャラクターに慣れてきたのか、これまでで一番面白かったです。本作はナベツネやホリエモンなど、実在する人物を連想させるキャラクターが多数登場するのですが、その極端な精神構造を大げさに描写しつつも、ギリギリのラインで美味しく料理している手腕が見事です。完璧な善人は一人も登場しないのに、混乱を経て、最後は登場人物のさまざまな精神的な課題が克服されるところは、カタルシス効果抜群です。なかなか難しいですが、さまざまなこだわりを時には捨てることの大切さを教えてくれます。

54 引き続き大好きな鴻上尚史さんの本を。この本は、鴻上さんの最近のメインテーマである「世間」や「同調圧力」の問題は後退し(当然、通奏低音のように全編に存在していますが)、演劇を通じてエンパシー(他人の気持ちを想像できる能力)を育てることの大切さについて、語られています。特に、演劇と映像や小説の違い(「リアリティの幅」という言葉を用い、詳細なイメージを提供できる映像はそれがゆえに正確に伝えないとリアルには感じられない一方で、読者の想像に多くを委ねる小説は多少非現実な描写を用いても許容されやすく、演劇はその中間くらいという解説がなされています)や、芸術と芸能の違い(芸術は「あなたの人生はそれでいいのか?」と挑発するものであり、芸能は「あなたの人生はそれでいいのですよ」と肯定するものである、と説明されています)が興味深かったです。今から演劇を始めるのはなかなかハードルが高いと思いますが、仕事等への応用もできそうな、「アイスブレイク」(会議等の参加者の緊張を解いてコミュニケーションを活性化させるための、演劇のノウハウも用いた手法)については学んでみたいと思いました。


■映画
50 ピーターラビット /監督 ウィル・グラック
51 ザ・ファブル/監督 江口 カン

50 子ども向けの、ほのぼぼのとしたファンタジーだと思っていたのですが、想像以上にブラックな内容でびっくりしました。家に入ると、うさぎたち動物が乱痴気騒ぎしているなんて怖すぎます。対立していた元家主は、あっさりショック死してしまいますし。でも、その攻めた毒がいかにもイギリスっぽくて嫌いではないです(結構ディスられているにもかかわらず、ロケを許可した「ハロッズ」も素敵です)。人間側のメインキャラクターが、単純な美男美女ではなく、一筋縄ではいかない性格なのも個人的には好みです。テイストとしては、「シュレック」や「カンフーパンダ」を制作していたころのドリームワークスのCGアニメ作品に近いと思いました(本作は実写とCGの組み合わせですが)。過激な内容なので、幼児と一緒に観るのはお勧めできませんが、小学生以上の大人も含む幅広い年代が楽しめる作品です。

51 上司から1年間殺人をしてはいけない、という制約を課された殺し屋の物語です。現代版「るろうに剣心」といった趣の作品でしょうか。るろ剣と同様に迫力あるアクションシーンが魅力です。主演の岡田准一さんが、素晴らしい身体能力を見せつけてくれます。木村文乃さんのいつもとは違ったチャラい演技や、福士蒼汰さんの悪役も新鮮です。なにより、柳楽優弥さんの凶暴さとチャーミングさが入り混じった怪演が見事です。あえてやっているベタなギャクは好みが分かれると思いますし(個人的には、宮川大輔さん演じる滑り芸の芸人は、FUJIWARAの原西さんの方がイメージが近かったです)、ストーリー展開はかなり予定調和ではありますが、しっかりと創りこまれた良質のエンターテイメント作品だと思います。
コメント
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