本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

武器としての「資本論」

2021-01-23 07:01:17 | Weblog
■本
7 武器としての「資本論」/白井 聡
8 みうらじゅんと宮藤官九郎の世界全体会議/みうら じゅん 、 宮藤 官九郎

7 最近、「民主主義」とともに限界が問われることの多い「資本主義」について学びたくて読みました。タイトル通り、「資本論」の入門書というよりは、そのエッセンスやロジックを、閉塞感漂う社会でどのように武器化してサバイブしていくかについて書かれた本です。「永続敗戦論」の白井さんらしく、切れ味鋭く、新自由主義についてぶった切って下さっています。難解であると評される「資本論」ですが、この本では「商品」、「剰余価値」、「包摂」、「本質的蓄積」といった概念について、高度資本主義社会に生きる私たちの視点から、わかりやすく説明してくれています。現代社会の生きにくさの原因としては、増殖し続けることを目的とする資本によって「労働力という商品」の価値を上げるために、我々賃金労働者が常に世界レベルで競争させられていることに一因があることがよくわかります。冷戦が終了し共産主義化する危険性が減り、労働者を保護をする必要性が下がったことにより、資本家サイド(新自由主義者)が過去に与えた労働者の既得権益を剥奪しようとしているので、その流れを再び逆に戻すべく階級闘争を再開しよう、というのがこの本の大きなメッセージだと思います。そして、その階級闘争を再開するにあたり、暴力的手段に訴えかけるのではなく、まずは、資本主義は所与のものではなく起源があり、逆に言えば終わらせることができるものであるということと、我々は搾取され続ける存在ではなく、少なくとも健康的で美味しい食事をするだけの権利がある価値ある存在であるという認識を持つことから始めよう、と主張されていると私は理解しました。スキルや生産性に還元されない、自分自身の価値を認識することが重要であると気づかされました。

8 みうらじゅんさんと宮藤官九郎さんの対談本第二弾です。目玉である中二男子っぽいエロトークはとても面白いのですが、これだけまとめて読むとさすがに飽きてきます。逆に時折挟み込まれる、お二人の「人生論」、「日本人論」はさすがの視点のユニークさで、いろいろと気づかされることが多かったです。「コンプレックス」をテーマにした回の「”人それぞれ”の部分をどう活かすかっていうのを早い段階から知っとくのは意外と大事なことだと思います」など、人生の先輩として、上から目線ではなく若者にさりげなくエールを送る姿勢も共感できます。何より、アラカン、アラフィフのお二人がここまでくだらない話を楽しそうにしているのを読むだけで、不思議な勇気が湧いてきます。結局は、好きなことを楽しんでやっている人は幸せだし、魅力的であるという当たり前のことが再確認できます。

■映画
7 汚名/監督 アルフレッド・ヒッチコック

 父親がナチスのスパイであったという「汚名」を晴らすために、ナチス残党の幹部と偽装結婚し、潜入スパイとなった女性を描いた作品です。主人公は、母親や自分が生まれ育ったアメリカへの愛国心から危険な任務を引き受けるのですが、その動機の描き方が弱いので、いまひとつ共感できません。彼女をスパイとして勧誘するFBIのエージェントは、簡単に彼女と恋に落ちますし、その上司も彼女のリスク管理が全くできていない無能振りなのも、あまりにも不自然です。潜入されるナチスの残党側も脇が甘すぎます。このようにストーリー全体としては粗が目立ちますが、さすがヒッチコック監督だけあって、要所要所の緊迫感のあるカットは素晴らしいです。特に、主人公がスパイであることがばれたのではないかという疑念を募らせるシーンや、妻がスパイであると仲間にバレたナチス幹部のエンディングのヒリヒリとした心理描写が見事です。何よりも、主人公のイングリッド・バーグマンがとても美しく、それを観るだけでも価値がある作品です。
コメント
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