本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

秒速5センチメートル

2018-01-07 10:49:28 | Weblog
■本
1 サーカスの息子〈上〉/ジョン・アーヴィング
2 頭に来てもアホとは戦うな!/田村 耕太郎

1 お正月休みを利用して、数年前に買ったままになっていたジョン・アーヴィングの長編を読んでいますが、あまりに長いのでまずは上巻の感想を。この作品前後の「オウエンのために祈りを」と「未亡人の一年」は、彼の作品にしてはどちらかと言えば抒情的で静かな世界観の作品ですが、本作はインドを舞台にしていることもあり、もっと雑然としてパワフルな印象です。ジョン・アーヴィングの作品は、人生の不条理さが露悪的なまでに描かれている点が特徴的な反面、人間の悪意はさほど強調されていない印象でしたが(人間の癖の強さはこれまでもかというくらいに描かれますが)、本作では残酷な殺人犯というかたちで、悪意がしっかりと描かれています。多数の登場人物が描かれているにもかかわらず、ほとんど混乱させない手腕はさすがです。その登場人物が複雑に絡み合う壮大で読み応えのある作品です。隅々にまで張り巡らされた伏線が下巻でどのように解消され結末に向かうかが楽しみです。

2 朝日新聞の書評に取り上げられていたので読みました。タイトルこそ過激ですが、ご自身の会社員や政治家というキャリアを踏まえて、社会で生きていく上で必要な処世術をわかりやすく説明してくれます。魑魅魍魎が蠢く政治の世界に身を置かれていた方だけに、説得力も抜群です。「時間という有限で最も貴重な資源を、一回きりの人生を充実させるために最大限に活用する」という視点に貫かれていて、書かれている内容はどれも腹に落ちるものです。ピカピカのキャリアの作者にありがちな、失敗談を語っているようで結局は自慢話になってしまっている点に評価が分かれるかもしませんが、それもご愛敬だと思います。こういうエリートでも、自分と同じようなところでつまずいているという気づきがあれば、そこから改めていくという読み方がふさわしいかもしれません。


■映画
1 ミッション・トゥ・マーズ/監督 ブライアン・デ・パルマ
2 秒速5センチメートル/監督 新海 誠
3 ジャック・リーチャー NEVER GO BACK/監督 エドワード・ズウィック

1 定番の火星探検ものです。ブライアン・デ・パルマ監督作品らしい手堅い演出です。屈託を抱えた主人公が、仲間の助けや犠牲を乗り越えながら無事火星に到着し、取り残された友人と合流するという、オーソドックスなキャラクターとストーリー展開で楽に観ることができます。そこから火星人に出会い、哲学的な領域の話へと進展するところも、テーマパークや科学館の映像を観ているかのようなお約束の展開ですが、火星人の描写が古臭くて2010年代の今となってはなかなか衝撃的でした。過去の同種の作品への敬意を感じられるところは好ましいですが、ちょっとオリジナリティには欠けている印象が残りました。繰り返しになりますが、手堅く楽しめる作品ではあると思います。

2 言わずと知れた大ヒット作「君の名は。」の新開誠監督の過去作品です。乗り鉄としては両毛線など沿線風景や駅の描写の緻密さに感心しましたし、種子島の素朴で美しい風景シーンも感動的でした。「君の名は。」でも見られた音楽との見事なシンクロも非常に印象的で、この監督の迸る才気が感じられました。逆に、人物造形については、私が歳を取って純粋さを失ったためか、その青臭さにちょっと共感できませんでした。ある意味、観る人の年齢を選ぶ作品かもしれません。キャラクターとストーリーを魅力的にし、卓越的な風景描写と音楽との親和性という最大の特徴を活かして、わかる人だけにわかる単なるセンスの良い作品から、スケール感を伴った開かれた作品へと飛躍させた点で、「君の名は。」はやはり画期的な作品だと思いました。

3 前作「アウトロー」のトム・クルーズらしくないクールでマッチョな「ジャック・リーチャー」というキャラクターが気に入っていたので続編のこちらも観ました。しかし、本作では、ジャック・リーチャーがいつものトム・クルーズっぽい、女性や子供に優しい、甘めのキャラクターになっていたので失望しました。これなら、予算がもっと大規模そうな「ミッション インポッシブル」シリーズを観た方がよいと思います。本作はストーリー的には先が読めない面がありそれなりに楽しめるものの、アクションシーンは前作同様淡泊で見せ場はさほど多くないです。前作の延長線上で原作に忠実なキャラクターを貫けば、独特のサスペンス作品となり得たかもしれないので少し残念です。
コメント
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