本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

永い言い訳

2015-12-06 10:18:30 | Weblog
■本
105 ぼくたち日本の味方です/内田 樹、高橋 源一郎
106 亡国の集団的自衛権/柳澤 協二
107 永い言い訳/西川 美和

105 内田 樹さんと高橋 源一郎さんの日本政治状況をテーマにした対談集です。1作目の方は読んでいないのですが、この本は続編らしいです。東日本大震災を含む、2010年秋から2012年春にかけての政局について語られています。期待されていた民主党政権への失望が広がった時期ということもあり、政治やシステムの劣化が話題になることが多いですが、東日本大震災を契機にこのお二人が、日本という国の政治によりコミットしていかねばという、決意のようなものも伺え興味深いです。橋下徹さん批判など、内容は予想通りのものが多いですが、司会者的立ち位置の渋谷陽一さんのコメントがいいアクセントとなっていて、議論が思わぬ方に展開するのも面白いです。

106 少し前に話題になった集団的自衛権について勉強したくて読みました。実務家らしい視点で、冷静に集団的自衛権の問題と、安倍政権の主張の不備が指摘されていて参考になります。まだまだ、私自身勉強しなければと思いますが、少なくとも議論が十分に尽くされていないことだけはよく理解できました。理念優先の抽象的で感情的な議論に陥らずに、想定される危機に対処する上で、何が足りていて、何が足りていないのか(そしてそれには本当に集団的自衛権の行使が必要なのか)について、しっかり考える必要があると思いました。

107 本を読んでいて、久しぶりに放心状態になりました。人間の内面の醜さ、弱さをこれでもか、とえぐっていく内容に圧倒されました。大人だけでなく少年の内面にも容赦なく迫っていて、自分の子ども時代のいろんな複雑な感情も呼び起されます。作者の西川美和さん監督の前作「夢売るふたり」は、人間のグロテスクな面が強調されすぎて、救いがあまりありませんでしたが、この作品は、悲惨なストーリーの中にも、かすかな希望が見えて、来年に完成するという映画版も楽しみです。西川さんは一貫して、兄弟、親子、夫婦といった家族関係をテーマとした作品を発表されていますが、本作はその一つの到達点とも言える完成度で、複合的な視点から、肥大するエゴと家族との関係について描かれていて、傑作だと思います。お勧めです。

■映画
81 俺はまだ本気出してないだけ/監督 福田 雄一
82 アジャストメント/監督 ジョージ・ノルフィ
83 コードネーム U.N.C.L.E./監督 ガイ・リッチー

81 原作が思わぬ展開をみせる感動作だったので映画版も観ました。原作とイメージが全然異なりますが、堤真一さんが主人公のダメ中年を熱演されていますし、演出もコミカルでかつツボを押さえた内容で楽しめました。ただ、原作の一番のクライマックス(主人公の娘が留学先から帰ってくるところ)にまで、話が及んでいないところが少し残念でした。この作品の本当の主人公は、主人公の娘だと勝手に思っているので、橋本愛さんはこの役を淡々と巧みに演じてられているものの、脚本上その過去や感情の掘り下げが十分になされていないところが物足りませんでした。生瀬勝久さんが、主人公の友人役を普通に演じられている点は新鮮でした。

82 「ブレードランナー」、「トータル・リコール」、「マイノリティ・リポート」といった作品の原作者であるフィリップ・K・ディックの短編小説の映画化だそうです。短編だけあって、先述の名作ほどの世界観の広がりはないですが、面白かったです。「よりよい世界にするために、そのキーとなる人の運命を操作する」という設定の説明が、若干まどろっこしいので、好みは分かれると思いますが、個人的にはこういう独特の世界観を持ったSFは嫌いではないので、楽しめました。主人公は、ベン・アフレックの方がイメージに近いですが(酔って局部を露出したため選挙に敗れるのですが、いかにもそのようなことをしそうです)、マット・デイモンも育ちは粗野ながらも、志は高い政治家を好演しています。

83 1960年代にアメリカで放映されたテレビドラマのリメイクだそうです。冷戦時代の米ソ対立を背景としたスパイものという設定が、ノスタルジックな世界観を醸し出しています。ガイ・リッチー監督らしい、センスの塊のような映像とカット割りが、この世界観に絶妙にマッチしています。ヒュー・グラント以外、あまり知っている俳優はいなかったのですが(観終わってから、主人公が「マン・オブ・スティール」のスーパーマンの人だと気づきました)、どの役者さんも忠実に個性的なキャラクターを演じていて、かえって余計な情報がなくてよかったです。特にヒロイン役の女優さんが魅力的でした。悪役のキャラクターも立っていて、まるで漫画を読んでいるかのうようなわかりやすさの、気楽に楽しめる良質のエンターテイメント作品です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする