本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

赤めだか

2009-04-12 06:00:42 | Weblog
■本
29 トラウマの国ニッポン/高橋 秀実
30 赤めだか/立川 談春

29 「目から鱗」のいい本です。高橋秀実さんの本では「からくり民主主義」と並ぶ良書だと思います。主要なマスメディアとは違った視点で、日本社会の現状を伝えてくれます。特に、「地域通貨」や「「田舎暮らし」は私がマスメディアから得た認識と正反対(成功事例として取り上げられている草津でも「地域通貨」は使われていない」ということや「田舎暮らしはかえってのんびりできない」という事実)の話だったので、驚きました。強引な例えですが、マスメディアの報道がアンケートなどの定量調査だとすれば、高橋さんのルポは特定の人に焦点を当てたデプスインタビューのような定性調査のように読めばいいのかもしれません。どちらの情報が正しいか、正しくないかではなくて、複数の情報源から立体的に事実の輪郭を把握するのがよいということに改めて気づきました(もちろん一次情報に接触できるのであればそれが最も望ましいのでしょうが)。とはいえ、ゆるいタッチで書かれているので、大上段に構えずに、気楽に読んで、日本という国の奇妙さや矛盾する人間の性質などについてしみじみと考えるのがよいと思います。本の帯にあるように「抱腹絶倒ルポ」という売り方が正しいとは思いませんが、気楽な気づき(それだけに時にやるせなさも感じますが)を与えてくれる本です。

30 面白くて一気に読みました。おそらくあちこちで評価されていると思いますが、落語家らしく、リズム感のある文章が素晴らしいです。師匠の立川談志さんや一緒に修行をした仲間への愛情、怒り、嫉妬などの生々しい感情が巧みに表現されています。多くを犠牲にし、一つのことに集中して取り組み、成し遂げた人だけが得られる濃密な青春時代が描かれていて、うらやましくもあり(僕にはとても真似できませんが)感動的でもあります。それにしても立川談志さんって本当に変人なんですね。しかし、その言葉は妙に説得力があり真理を表しているような気もします。「根多が自分の人生にシンクロ」という言葉に落語の深さと凄みを感じました。


■映画
11 フロスト×ニクソン/監督 ロン・ハワード
12 おくりびと/監督 滝田洋二郎

11 ウォーターゲート事件について知っているようであまり知らないので、お勉強のつもりで観ました。ニクソン役のフランク・ランジェラの圧倒的な演技力を観るための映画ですね。なんとなく、「カポーティ」でのフィリップ・シーモア・ホフマンの演技を思い出しました。アミン大統領を演じたフォレスト・ウィテカーも高評価でしたし、アメリカ人って実在の人物のそっくりさん演技を結構評価しますよね。フロスト役のマイケル・シーンがニクソンとは対称的な軽い演技を巧みにしているところも評価できます。主演二人の安定感からかロン・ハワードのいつものオーバー・プロデュースがあまり見られないところも個人的には好きです。二人の対決は緊迫感がありエンターテインメントとしても成立していると思います。ただ、ニクソンが真実を思わず語るに至った葛藤や、フロストが私財まで投げ打ってこの企画にかけた情熱の背景が今ひとつ伝わってこないので、少し浅い印象は拭えませんでした。

12 よくできた映画ですね。「死」をテーマにしながら重過ぎないところが好きです。山崎努さんを筆頭に本木雅弘さん、広末涼子さんもいい演技をしていますし(あんなに物分りがよくて、自分で収入もある奥さんがいたらいいなあと思いました)。山形の風景やバックに流れる音楽も美しく、また、日本の伝統文化も描かれているので、海外で評価されているのも頷けます。ただ、もう少し人間のいやらしさを生々しく描いてもいいのではと思いました。個人的な経験で恐縮ですが、さすがに一人の人間の存在がなくなるだけあって、引力など人間間のバランスが崩れるのか、葬式前後はあらゆる人間関係がもっと劇的に変化(いい意味でも悪い意味でも)すると思います。本作でもそのあたりは巧みに配慮されていましたが(納棺夫に対する叱責や差別的な発言、家族や被害者とのいざこざ、など)、少し紋切り型過ぎる気がしました。現実はもっと、複雑で残酷でいやらしい、と思います。「赤めだか」を読んでも思ったのですが、「型」ってものごとを美しく見せる上では大切ですね。この映画でも死者を着替えさせ、化粧をし、納棺するにあたっての、納棺夫の立ち居振る舞いがとても美しく見えました。立川談志さんはこのあたりの落語の「型」を完璧に覚えた上で、自分の人生とシンクロさせつつ、独自の芸風を身につけろという指導をしたのだと勝手に解釈しています。僕も普通のサラリーマンではありますが、基本的なビジネスマナーは今一度確認したうえで、自分なりにアレンジする必要があるかなと、少し思いました。

コメント
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