みどりの一期一会

当事者の経験と情報を伝えあい、あらたなコミュニケーションツールとしての可能性を模索したい。

「悩みのるつぼ」回答者:上野千鶴子/「ニーズ中心の福祉社会へ~次世代型福祉戦略」

2010-02-02 18:40:15 | ジェンダー/上野千鶴子
東京のシンポから帰ってきて、たまった新聞を順番に読んでいたら、
朝日新聞土曜日beの「悩みのるつぼ」の記事で、
東京でわかれたばかりの上野さんに、またお会いしました。

   

今回のテーマは、「33年前に別れた恋人と再会し」の質問。
上野さんの、「人生の黄昏に出会いや再会があることは恵み」
「歳月がもたらした贈り物」の回答が、すばらしい!です。

 悩みのるつぼ
(朝日新聞be 2010年1月30日)

 「33年前に別れた恋人と再会し」

   相談者   主婦 50代

50代の主婦です。
 33年前に別れた恋人と、再会しました。私たちは結婚するつもりでしたが、若かったこともあるし、気持ちの行き違いがあって別の人と結婚し、遠くへと嫁ぎました。夫は彼のことを知っていますが、私が今でもそういう思いを持っていることは知りません。子どもたちも独立し、夫婦2人で何ごともなくしあわせに暮らしています。
 でも私は彼を忘れていなかったのです。12年ぶりに里に帰ったとき連絡を取りました。彼も素直に喜び、学生の頃のように心から笑い、思い出話に花が咲き、お時間あっという間にすぎてしまいました。
 お互い幸せな結婚をし、立場もわきまえていますので誰もきずつけることなく心の中だけと決めていますが、いつかまた会えると、2人とも考えています。
異性というより肉親のように何でも話せてわかりあえる相棒のような存在です。私たちは生きていくことが新鮮になり、優しい気持ちになり、お互いの仕事の励みにもなっています。遠くてあえないので、時々メールや電話で近況報告しようと約束しました。家族を愛してきた私がこういう気持ちになって、やさしい夫に申し訳ないと思っています。お互いの配偶者を裏切っていることになりますか?
 私が逆の立場ならいい気持ちはしません。少しずつ心も離れていった方がいいのですか?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
 回答者   社会学者   上野千鶴子

歳月がもたらした贈り物として


 昔の彼と再会してよかったですね。33年とは気の遠くなるような時間。ふつうは相手の変貌ぶりに(自分の変化のほうは棚に上げて!)がっかりするものですが、お互いに失望するこもなく、昔のように気持ちが通い合ったとは、まことにうらやましいことです。
 夫を愛し、家庭を愛し、33年間の自分の過去を愛しているあなたに、新たな出会いがあったからといって、どうしてそれが「裏切り」とか「申し訳ない」とか恐ろしいことばで呼ばれなければならないんでしょうね。これが「逆の立場」ならあたなは夫を責めますか?
 人生の黄昏に出会いや再会があることは恵みといってもよいもの。いまさら家庭を作り直そうとか、夫を取り換えようとかいうのでなければ、親しい友がひとり増えたと思えばよいのです。結婚した女性は、異性を友にしてはならないと誰が決めたのでしょう? 人口の半分は異性。その半分を友人関係から排除するなんて、もったいなさすぎます。
 子育てを終わったあとの長い老後には、もういちど男女共学の交友関係が生まれてもおかしくありません。友人なら親しい友がいても、もうひとり友が増えるのはウエルカム。それが異性というだけです。
 それに親しい友ができたからと言って以前からの友にわざわざ報告する義務はありませんから、夫にいう必要もないでしょう。あなたが機嫌よく幸せに暮らしていることが、お互いにとって何よりなのですから。
 妻の老後の豊かな交友関係を嫉妬したり妨げたりする夫が狭量なように、もし「逆の立場」であなたが異性を含む夫の交友関係を妨げるとしたら、やはり狭量なことでしょう。まさか自分さえいれば夫はそれで十分と思うほど、傲慢ではないでしょうね。
 ま、それにしても一度や二度の再会で舞い上がらないことですね。33年の時間はお互いを確実に変えています。 もっとじっくり会ってみればお互い知らなかった暮らしの澱や変化がわかっていくもの。
 そのうえでなお培われる成熟した友情なら、歳月がもたらした贈り物と考えて、その滋味を味わいましょう。そして自分がそんなに豊かな経験を味わうことができたなら、夫にも同じ経験を味わわせてあげる気になるでしょう。



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以下は、1月31日(日)午後に秋葉原UDXビルで開催された、
「当事者主権によるニーズ中心の福祉社会に向けて」のシンポジウムの簡略な報告です。

シンポジウムは、
「ニーズ中心の福祉サービス」を実現するためには、いかなる財源を使い、どのような制度を作り上げていくのか。
また、その財源を可能とするシステムのあり方、また市民の合意はいかにしてとるのか。」
などがテーマ。




前半はシンポジストの上野千鶴子さん、樋口恵子さん、大沢真理さん、
中西正司さんの4人が、20分ずつ基調報告。

上野千鶴子さん(東京大学大学院人文社会系研究科教授)
   

  

  

樋口恵子さん(高齢社会をよくする女性の会理事長)
   

大沢真理さん(東京大学社会科学研究所教授)
   

   

中西正司さん(全国自立生活センター協議会常任委員)

   

       

休憩をはさんで後半は、上野さんのコーディネートで、
会場からの質問票の内容を交えながら、シンポジストによるディスカッション。

最後に、会場から「女性は人工呼吸器をつけたいといえない」と発言された、
ALS(筋萎縮性側索硬化症 amyotrophic lateral sclerosisの当事者女性の痛切なことばを聴いて、
思わず涙があふれてきました。

期待どおり、内容の濃密なシンポで、参加してよかったです。


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