福田の雑記帖

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医療の時代と死生観(11) 健康寿命 平均寿命 平均余命

2015年09月11日 17時52分28秒 | 医療、医学
 今は人生80年時代。過去400年間人生50年以下だった。
 人生50年時代は死生観などなかった。勿論、宗教家とかは考えていたと思われるが、一般の人たちは常に常に必死に生きて働いて、ただ死ぬだけであった。 
 現在はのびた寿命に身を任せ、死を待つ日々が長い。死生観の大切さが浮かび上がってくる。

 有史前から疫病が流行っていたと思われるが、人口も増え、集団生活を営むようになってからは飢餓と疫病に散々苦しめられてきた。その古い記録は「古事記」「日本書紀」に記録されている。
 当時疫病は神仏の祟りと信じられていた。とりわけ大流行する疫病は失政によって天地に怒りが生じて発生すると信じられ、疫病が発生すると天の支配者、すなわち神に対して大々的に祈祷を行ってきた。これが自然宗教である。

 古代日本人にとって、死とは魂が肉体から離れることを意味していた。当時生命の代わりに魂が体を支配していたと考えていた。
 古代日本人を悩ませたのは飢饉と疫病。日本書紀の疫病の最初の記述は崇神天皇のこととして記載がある。「国内に疫病多く、民の死するところ半ば以上に及ぶ・・・」などとある。
 当時の疫病としては、結核、マラリア、ツツガムシ病、住血吸虫、天然痘などが蔓延していたと考えられる。

 当時の医療はどうだったのか??
 決して手をこまねいて座して死を待っているだけではなかった。実際には医師も居て、治療薬もあった。しかし、神の怒りを鎮める祈祷はそれらを凌駕していた。
 聖武天皇の死去(755年)に伴い光明皇后から東大寺に薬品が奉納され、それが正倉院に納められている。「大黄」、「人参」、「甘草」などが含まれる。これらは今でも使われている薬物である。

 寿命の表現には幾つかの種類がある。
 
 (1)平均寿命:縄紋人の平均寿命を推測すると、20歳に達するかどうかという状況。多くの縄紋人が若くして、病気や事故で死亡していたと考えられる。江戸時代にもせいぜい30歳程度と推論されている。

 現在の平均寿命は女性86.83歳で世界一 、男性80.50歳で世界三位となっている。この値は誤解されている。個々人の方には毎年発表される平均寿命は関係ない。平均寿命はその年に生まれた新生児が生きられる可能性を示す値である。

 平均寿命の延長は、(a)平和、(b)社会格差の縮小、(c)医衣食住・生活環境改善、(e)食生活、(f)国民皆保険、(g)医療技術、・・であり、寿命延長がもたらした問題点は医療費増大、介護、寝たきり、認知症、孤独死・・など問題点は多い。どう人生を終えるか、自らが考えなければならない。

 (2)平均余命:各人にとって関係のあるのは平均余命である。各年代の方々があとどれだけ生きられるかは余命として推定される。例えば現在70歳の方は男性で15.5年、女性が19.9年で、一般的に平均寿命より数年長い。若死せずに70歳まで生きたという実績があるからである。ちなみに現在90歳の方は4.5年ないし5.5年余命がある。

 (3)健康寿命:人生はただ単に生きているだけでいいわけではない。健康上の問題がなく自立して日常生活を送れる期間の平均を健康寿命という。日本の場合、男性が約71.19歳、女性が約74.21歳でともに世界一であるが、男性が約9年、女性が約13年要介護状態で生きることになる。

 この健康寿命こそが人生であり、どう生きるか、どう死を迎えるか、人生観が問われることになる。認知症、寝たきり状態になって判断力、自由を失えば人生観なんてそれほど価値を持たなくなる。
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