福田の雑記帖

www.mfukuda.com 徒然日記の抜粋です。

国際 ウクライナ問題(7) ロシアの侵攻1年(5) 正義、倫理観が通用しない専制国家ロシア

2023年02月28日 11時52分07秒 | 政治・経済 国際関係
 「平和」は誰もが希求する。民主的政治もそうだ。まして戦乱の地であれば、その思いはひときわ強いに違いない。
 しかし、これは日本にいるからの第三者的論理なのではないか。

 国際社会を見ていると、平和の希求、正義感、戦争による犠牲、指導者たちの倫理観、人道性など、日本に居て期待するような事項は国際社会では通用しない様に思える。だから、侵攻問題は日本の地で軽々に語るべきではない。

 それでも、私は1日も早く平和が戻ってほしい、と思う。

 (1)プーチン大統領の非人道性
 ウクライナ侵攻1年を前にプーチンは年次教書演説を行い、今回の侵攻は西側が始めたもの、ロシアはこれに対抗している、などと信じ難い論旨で国民に「祖国防衛」を呼びかけ、ウクライナ侵攻の責任を欧米になすりつけた。

 「戦争を始めたのは彼らだ」、 「西側は18世紀から、今ではウクライナと呼ばれ歴史的な領土を我々から引きはがそうとしてきた」。プーチン氏は演説でそう訴え、ウクライナ侵攻の責任を何度も欧米になすりつけた。

 プーチン氏はウクライナ政府を一方的に「ネオナチ」と糾弾。「彼らを前に我が国の存続がかかっている」とまで主張した。

 プーチン氏は昨年来、欧米の脅威をあおり、自ら始めた侵攻を正当化し続けてきた。
 昨年2月24日の侵攻開始時の演説では、ウクライナを「非ナチ化して、非軍事化をしなければならない」 を侵攻の目的に掲げ、短期間でゼレンスキー政権を転覆させ、 ウクライナに自らの意思に従うロシアの傀儡政権を打ち立てる計画だったとされる。

 だが、侵攻によってゼレンスキー政権に対する世界の支持と支援が高まった。
 追い込まれたプーチンは、国民の支持をつなぐ必要に迫られている。そのために侵攻した側のロシアが、欧米諸国から集団的な攻撃を受けているかのような構図を描き出した。これが、国内で発揚するのだから恐ろしい国である。

 (2)ウクライナの世論調査 「平和」より「正義」の希求
 昨年11月にウクライナで実施された世論調査では、ロシア軍による占領が続く状態での停戦を求めた人は、わずか1%だった。停戦の条件として、93%が「クリミア半島を含むウクライナ全土からのロシア軍撤退」を挙げた。

 多くのウクライナ国民は、現在の状況では平和を得るよりも、戦う道を選ぶ。つまり一般的「平和」希求とは異なる価値観を有している。その価値観の中心は「正義」なのではないだろうか。

 なぜロシアから攻撃されるのか。あまりに理不尽ではないか。このような市民の怒りが、「いのち」を賭しても「正義」を望む意識に結びついているのだろう。

 ウクライナの弁護士たちはロシア軍が占領期に手を染めた戦争犯罪行為に対する訴追活動を、ボランティアで続けている。国際司法裁判所(ICC)には被害者救済制度が設けられており、損害賠償への道も開けるという。この動きの効果は不明瞭であるが、ロシアを糾弾することにも結びつく大事な活動である。


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国際 ウクライナ問題(6) ロシアの侵攻1年(4) 世界はどう行動しているか(2)

2023年02月27日 06時59分16秒 | 政治・経済 国際関係
 第2次大戦後、米国が秩序形成を先導し、なんとか均衡を維持してきた「ポスト冷戦時代」は、ロシアのウクライナ侵攻で終焉した。

 その結果、「米欧と日本を中心とする民主主義陣営」「中ロを核にする専制主義陣営」の対決が、 世界情勢の基調になった。

 以下の図は両陣営の分布を世界地図上にプロットしたものであるが、国名を挙げられて説明されても分かり難いが、画像化すると分かりやすい。
 世界はこの図の如く分断されている。EU諸国、チベット、日本、オセアニア地区はその接点にあり、緊張が高まっている。また、日本から見て理解し難い、NATOにおける米国の重要性はこの地図を見ることで理解できる。

(スエーデン調査機関「V-Dem研究所」の解析による「民主主義陣営」「専制主義陣営」の概要 秋田魁新聞より引用)

 「帝国主義的な野心」を抱くプーチン大統領の侵攻は、国家の主権や領土の一体性との保全といった国連憲章の原則を無視した暴挙であり、国際的秩序を根底から覆した。 

 米中対立も相まって大国間競争が激化している。戦後秩序の中核に位置した国連安全保障理事会の常任理事国」はロシアによる 「憲章違反」(欧米首脳) という暴挙で機能は一層低下した。その影響は計り知れない。 

 「ロシアの侵攻で全ての民主主義国家が試練にさらされた」。バイデンはキーウ訪問後、ポーランドでの演説でこう訴え、一層の結束を訴えた。
 しかしながら、民主主義陣営の多国間協調の在り方も再考を迫られている。
 バイデン氏は大統領就任前から「プーチン政権は最大の脅威とみる欧米の民主主義を攻撃する」(2017年の米外交誌への寄稿)と警戒していた。2年後の就任時以降、トランプ前政権で揺らいだ民主主義の再興を急いだ所以である。

 民主主義国家の連携はウクライナへの強力な軍事支援につながったが、21年12月に開催した「民主主義サミット」では「二者択一を嫌う途上国からは敬遠された」(東南アジア外交筋)との声もあり、バイデンのもくろみ通りに進んでいるわけではない。

 中国は米国の予測を上回るスピードで核弾頭数の増強など軍拡を進める。 バイデン政権は意思疎通を通じた衝突回避を図るが、中国の偵察気球を米上空で撃墜した問題もあり緊張は緩和されていない。

 対ロシア、対中国と二正面作戦を迫られる米国は、かつての冷戦期よりはるかに難しい立場に立たされている。





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国際 ウクライナ問題(5) ロシアの侵攻1年(3) 世界はどう行動しているか

2023年02月26日 07時00分20秒 | 人権問題
 独立国の主権を武力で踏みにじるのは国際社会の秩序をないがしろにする暴挙であり、断じて容認できない、と私などは単純に思うのだが、国際社会ではその様に考えない国民や指導者が多いらしい。

 プーチン大統領は2022年2月21日にウクライナ東部独立を一方的に承認し、住民保護を名目に派兵を命令。2月24日、ロシア軍がウクライナへの軍事侵攻を開始した。

 これは暴挙であり、侵略は重大な代償が伴うことを国際社会が一致して示すことには意義がある。米国と欧州諸国、日本などは経済制裁を発動した。

 北大西洋条約機構(NATO)が冷戦終結後、東方への拡大を続けてきたことにプーチン氏は反発。米欧寄りのウクライナが将来的にNATOに加盟すれば、安全保障上の重大な脅威になると主張していた。ウクライナには独立国家として自らの安全保障政策について決める権利があり、ロシアの要求には無理がある。

 プーチン氏はロシアとウクライナは「一つの民族」と主張する。そうは言っても、ロシアが過去にソ連邦の一員であった近隣の独立国を「属国」の様に扱うのは時代錯誤である。

 国際社会の側も外交による解決の道を閉ざしてはならない。多くの国がロシアに対する厳しい制裁を通じて毅然たる態度を示し、粘り強い外交努力を継続することを期待したい・・・のであるが、国際状況はそう単純ではない。ようだ。

 2年目に入り込んだウクライナへの侵攻は国際政治・経済・社会の各分野に大きな影響を及ぼしている。国際経済的側面から見てもエネルギー・食糧危機が高まっており、世界的供給網もまた揺れ動いている。

 国際規範や価値観の代わりに自国の経済的利益を優先視してEU側とロシアの間で「日和見的静観国」として行動する国が大きく増えたという点が注目される。

 英シンクタンクの王立国際問題研究所が2月21日に発表した「戦争1年報告書」で、以下の如くボベている。
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◉アジアではウクライナを擁護するのは韓国と日本、シンガポールなど少数。
◉インド、パキスタン、イラン、インドネシア、南アフリカなどは自国の利害関係により行動している。ここでは国際規範や、自由・人権・民主主義のような理念のは軽視されている。
◉イランはロシアにドローンを輸出し、代わりに自国のヒジャブデモ無力化に必要な監視装備を導入した。
◉インドはアジア太平洋戦略では米国など西側諸国と肩を並べながらも値段が安いロシア産石油輸入を持続するなど経済的利益も手放していない。
◉アフリカと中南米、中東など、開発途上国の「日和見的静観国」も注目される。
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 拒否権を持っているロシアと中国の反対で国連安全保障理事会の機能が事実上麻痺した状況であるが、国連総会は昨年3月に2回、4月、10月の4回にわたり対ロシア決議を採択した。
 これに対し上記の途上国地域を中心に45-48カ国が棄権または欠席した。特に昨年4月の対ロシア人権決議案には反対24カ国、棄権58カ国、欠席18カ国と193カ国の加盟国のうち100カ国が否定的・留保的反応を見せた。

 「日和見的静観」を決め込んでいる国を味方に引き込むための民主主義陣営とロシア・中国など権威主義陣営間の、表に出難い戦いも一層激しくなる見通しだ。

 この様に、国際社会では「国際的規範、正義や道義」が通用し難い状況に陥っているが、それらの国の国民や指導者たちの考えを直接確かめる術がないのが残念である。
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国際 ウクライナ問題(4) ロシアの侵攻1年(2) 要人たちの動き

2023年02月25日 04時05分03秒 | 政治・経済 国際関係
 侵攻1年を前に米ロ両国の大統領が演説を行った。

(1)ロシアのプーチン大統領は戦争を始めたのは米欧の側だと強弁し、侵攻を正当化。「ロシアに勝つことはできない」と述べた。

 だが、独立国であるウクライナに一方的に侵攻し、国際法を踏みにじったのがロシアであることは明白な事実。プーチン氏の発言に道理はない。

 当初はウクライナの首都キーウ周辺まで軍を進めたが、予想を上回る反撃に遭って後退。主な狙いだった東部ドンバス地域の全面制圧も果たせないまま、戦闘は泥沼化している。ロシア軍は万単位の死者が出ていると推定される。

 さらなる犠牲の増加にロシア国民が理解を示すかは不透明。国民に情報が浸透しているとは思えない。ロシアは戦闘を長引かせ人命を失う愚に気付き、直ちに撤退を決断すべきだ。

 プーチン大統領は21日にモスクワで100分間にわたり演説をし、米ロ間の新戦略兵器削減条約(新START)中断を宣言した。これまでも核使用を示唆する発言を繰り返しており、今回の条約不履行も到底容認できない。

 22日の祖国防衛の日の記念演説で3大核戦力、すなわち戦略爆撃機と大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)などの保持を強調した。現在ロシアは兵力と兵器を増強し新たな攻勢を予告している。

 (2)米国のバイデン大統領はキーウを電撃訪問し、開戦以来初めてウクライナの首都キーウを訪問してゼレンスキー大統領と会談した。ウクライナを支え続ける決意を表明した。その後、ワルシャワで演説し「決してロシアの勝利にはならない」と断言。米欧各国の結束を誇示した。ひとつの国が侵略を受ければ集団で対応するNATO憲章第5条も繰り返し強調した。

 (3)北大西洋条約機構(NATO)加盟の各国はドイツ製戦車の供与などを決めた。ロシア軍による一般市民の虐殺など戦争犯罪が明らかになっている中、各国の団結は評価されよう。

 (4)日米欧はロシア産原油の禁輸や資産凍結、金融取引からの排除などの経済制裁を続けている。
 しかし、中国など制裁に加わらない国への原油輸出などが堅調で、制裁の効果は限定的なものに留まっている。日米欧はこれまで以上に結束し、制裁を強化してロシアの戦闘継続能力を奪うことが求められる。

 (5)日本は今年のG7議長国であり、2年間は国連安全保障理事会の非常任理事国。いかに困難であっても、外交を通じ平和を回復する努力を放棄してはならない。日本には平和外交で主導的な力を発揮することが期待される。

 (6)中国の王毅共産党中央政治局委員は22日にモスクワでプーチン大統領と会い協力を確認した。これから中国がどう動くか、ウクライナ侵攻に大きな変化をきたしうる重大事項である。中露は協力関係にあるが、ロシアの暴挙に対して冷静な判断が求められる。中国による武器供与が行われれば侵攻は一層泥沼化する。

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 このように侵攻1年を迎え米中ロの首脳クラスの要人の注目すべき動きが続いた。国際社会では自由民主主義陣営と権威主義陣営間の「代理戦争」の様相が鮮明になりつつある。
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国際 ウクライナ問題(3) ロシアの侵攻1年(1) ロシア vs NATO

2023年02月24日 02時52分13秒 | 政治・経済 国際関係
 ロシアによるウクライナ侵攻が始まって今日で1年経過した。

 この間、よくわからない部分もあるが、戦闘はウクライナ側の強力な応戦で膠着状態にあるようだが、ウクライナの一般市民を含む多くの生命、ロシア兵の生命が失われた。プーチンは当初、経験の乏しいゼレンスキー大統領の能力を見誤り、数日で陥落させることができると考えたようだが、これは誤算であった。

 戦闘はNATO側からの武器供与を背景に、ロシア  vs  NATO の戦いの様相を帯びた。いまだ戦闘終結の見通しは立っていない。いや、プーチン  vs   NATOというべきかもしれない。

 旧ソ連時代から周辺諸国に少なくない影響を及ぼしてきた巨大国ロシアに対する不信感が背景となって結成されたNATOの位置付けが確個たるものとなった、とも分析される。同時に、西側勢力を牽引してきた米国の世界的リーダーシップもまた挑戦を受けている。
 欧州とNATOの「対ロシア恐怖症」の拡散も西側諸国がNATOを中心にひとつになる要因として作用している。長く中立基調を維持してきたスウェーデンとフィンランドがNATO加盟を申請したのが象徴的だ。

 一刻も早くロシア側が撤退し、ウクライナに平和が戻ることを願う。
 今回の如く、武力による一方的な現状変更を許すことは、ウクライナばかりでなく世界全体の平和の維持に影を落とす。
 さらに、今回の侵攻は二国間の戦闘問題でなく、経済・食糧・エネルギー流通に全世界的に深刻な問題を醸し出している。

 国際社会、日本も含め、改めて結束を確認し、ウクライナへの支援を強化すべきだ。同時に事態打開に向け、粘り強い外交努力を続けることが求められる。

 ロシアのウクライナ侵攻から1年を迎えた国際社会が以前とは全く変わった局面と向き合っている。
 国連は23日に緊急特別総会を開き、ウクライナを侵攻したロシアの無条件かつ即時の軍撤収を要求する「ウクライナ平和と原則関連決議案」を通過させた。
 決議案は賛成141票、反対7票、棄権32票で可決され、国際的に孤立したロシアの現実をそのまま見せた。韓国も米国と欧州連合(EU)などが中心となって推進した決議案に共同提案国として参加し賛成票を投じた。反対国はロシア、ベラルーシ、北朝鮮、シリア、ニカラグア、エリトリア、マリだけであった。

 今回のロシアの暴挙に対して国際機関である国連の機能不全が明らかになったが、上記の経過を見る限り、国際社会は新しい局面を迎えつつあるように見える。
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