福田の雑記帖

www.mfukuda.com 徒然日記の抜粋です。

医療崩壊(27)「厚生労働省第三次試案」(3)やはり在日日本人?

2008年04月30日 07時37分59秒 | 医療、医学
 医療事故に関して中立的第三者機関の設立の必要性について反対する立場の医師は恐らくはいないだろう。作るならより完璧なものを、と考えるのも妥当な考えである。しかし、日医の担当理事連絡協議会で主張された意見には同じ医師として共通の立場ながら必ずしも賛同しがたい点もあった。

■医療は刑法的責任に関しては全て免責であるべき、と言う考え方は自ら置かれている立場を何か誤解しているのではないか、と感じてしまう。医療事故を即警察に届けなければならない、届けなければそのことが問われると言う現状は明らかに異常であるが、医療事故の中には刑事罰を問われてもやむを得ない様な極端な例が少数例ながら存在することも確かであり、これらも含めて医療行為なのだから全て免責という主張には私は納得できない。
 また、社会的に見てもどんな職種であっても業務上の事故は有り得るし、内容によっては刑事罰が問われる。全て免責になっている職種はないのであって、医師だけが免責になってしかるべきという考え方は法的にも、社会的に通用しないだろう。

■ 委員会から捜査機関へ通知するような事例は(1)事故後のカルテ等の改竄など、(2)過失のリピーター医師など(3)故意や重大な過失など、に限定されるとした。しかし、これに対してはその線引きが曖昧である、と言う意見も続出した。確かに、「重大な過失」とは何を指すのか、どのレベルなら重大で、重大でないのかは現状では不明である。しかし、その判断は医師を中心とした委員会に判断が委ねられているし、「重大な過失とは標準医療から著しく逸脱した医療」と定義づけているのだから、現状でこれ以上具体的にせよという方が無理である。

 これらの討論を聴いていて、医師というのはやっぱり「在日日本人」と言われてしかるべき、社会的には通用しがたい常識を身につけた集団だという感じを抱いた。勿論、私自身も常識から些かはずれているのだろうが・・。
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「エイプリルフールでした」、と笑いたい(5)どうやら白の様だが、妙にうつ的になる

2008年04月29日 06時06分45秒 | 近況・報告
 3月下旬から肺の陰影の経過観察中である。4月上旬の2回目のCT判断は要経過観察で、若干ながら白の方向に向いたかな?と言ったところで経過観察中であった。
 3回目のCT検査は5月末頃に予定していたが、心配して下さる方々のアドバイスもあり連休明けにレ線とかの検査してみようと思っていた。

 本日、外来終了後、呼吸器科長が訪室し胸部単純レ線だけでも撮りましょう、と言ってくれた。予想外の申し出であったがちょうど良い、即実行である。早速撮影した。この結果で黒か白の方向がより明らかになるだろう。黒の判定でもやむを得ないと思ってはいたが、現像を待つ5分間ほどはやや緊張した。

 フィルムに未だ陰影がしっかりと残っていたが、ひいき目で見て僅かに淡くなっている。一ヶ月前のフィルムと比較してみても同様の印象でホッとした。呼吸器科長の判定も「軽快」であった。それでも大事を取って連休後に3回目のCTを撮影する事となった。 

 多分、これで恐らくはガンは否定的になった、と思う。未だしばらくは生きられそうだ。ならこの陰影は何なのだ?と言う疑問は残るが、徐々に軽快しているようだからそれは大きな問題ではない。

 で、その後自分の状態がどうなったかというと、嬉しくてルンルンかと言うと全く逆であり、虚脱感というか、緊張感の喪失か、しばらく仕事に取りかかる気持にならなかった。2つの会議終了後、緊張感無くだらだらと定期処方とかの残務を処理し、冷える中のバイクで帰宅した。身体の隅々まで冷えてけだるさは消失したが、何となくうつ的状態で夕食もそこそこにして床に入った。

 この一ヶ月あまり、半信半疑ながら自分としては黒の判定が出たときのことも念頭にして先のことを考えていたから、知らず知らす緊張していたのであろう。確かに充実した一ヶ月半だった。それが一気に緩んだ、ということだろうが、予想外の不思議な感覚を今も味わっている。
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医療崩壊(26)「厚生労働省第三次試案」(2)全国医師会の反応

2008年04月28日 06時16分04秒 | 医療、医学
 医療事故に関して警察に届けるのではなく、中立的第三者機関の設立が望まれてきた。不当な福島県立大野病院の医師逮捕・拘留を機会に現在、厚労省が中心となって準備が進められ、「厚労省第三次試案」が発表された。「医療安全調査委員会設置法案」(仮称)法制化までもう一歩と言うところまで進んでいる。この法の目的は医療死亡事故の原因究明・再発防止や医療の安全確保であり、関係者の責任追及ではない、と強調している。

 日医は「新たな死因究明制度に関する厚生労働省第三次試案」に関する都道府県医師会担当理事連絡協議会を4月24日日医会館大講堂で開催し、出席した。
 秋田県医師会執行部として詳細に討論し合意を得たわけではないが、医事紛争担当として、この「第三次試案」はまだ問題は残っているが、これに基づき「早急に制度化すべき」と言う立場でアンケートに答えた。

 最初に47都道府県医師会を対象にしたアンケートの結果報告があった。
 「第三次試案に基づき制度を創設すべき」が36、「創設すべきでない」が7,「その他」が4であった。先の「第二次試案」については「創設すべき」が43、「創設すべきでない」が4であった。「第三次試案」は「第二次試案」で挙げられた問題点を大幅、かつ具体的に修正されたのに「創設すべきでない」と答えた医師会が4から7医師会に増えた。「その他」と答えた医師会の具体的記述を見るとこのままでは賛成しかねると解釈できたので、併せて11の医師会が「このままでは創設すべきでない」と言うことになる。問題点が修正されているのに反対が増えたのは、奇異であるが、それだけこの「第三次試案」が真摯に検討されたと言うことであろう。

 次いで、担当である木下常任理事は,医療事故調査委員会から捜査機関に通知を行うのは,故意や重大な過失のある事例,悪質な事例のみで,捜査機関は委員会から通知された事例だけを捜査の対象とする,従って「すべてを免責にはできないが,刑事訴追される範囲は大幅に狭くなる」と「第三次試案」の意義を強調した。

 質疑応答は100分以上に渡り、木下常任理事が中心に答弁したが、発言の大部分は「第三次試案に基づいた制度創設に賛同できない」とした医師会の担当者からであった。
 質疑の内容は医療の特殊性の主張と司法当局との関連に終始したと言って良い内容であったが、以下の4点で堂々巡りした。■医療関連事故は一切免責であるべき。■一部免責外になるとしてもその線引きが曖昧である。■司法関係者が出席していると言えオブザーバーであり、権抑的に対応するとしたとしても信用できない。■報告書が司法に利用されるのは納得できない。

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医療崩壊(26)医療の安全の確保に向けた「厚生労働省第三次試案」(1)

2008年04月27日 06時39分14秒 | 医療、医学
 医師法21条の拡大解釈は医療崩壊の一因になっている。
 この法は「医師が異状死体を診た際に24時間以内に警察に届けねばならない」とするもので、本来は犯罪被害者の発見のためである。この条文で異状死体の定義がないが、日本法医学会が異状死体の定義として独自の見解を勝手に発表したことから医療界、司法界ともに一気に混乱することとなった。

 法医学会は医療関連死も異状死、異状死体と見なしたからである。その後この条文は広く解釈される様になり、都立広尾病院の事故例、福島県立大野病院の事故例はこの法の対象となって院長が検挙され、治療医が逮捕拘留される様になってきた。
 この後、医療機関側でも隠蔽とされることを恐れ、警察に届ける事象が増えてきている。届けがあれば警察は捜査せざるを得ないが、この場合は犯罪性の有無を中心に医療関係者は刑事罰の被疑者として、医療に関しては全く素人である警察によって取り調べが行われることになる。

 医療は「大きなリスクを回避するために、小さなリスクを与える」業務である。しかも機械等の修理とは異なり不明の因子が多数絡んでくる。常に期待された良い結果がもたらされるとは限らず、時に患者が死亡することもある。医療行為には基本的には犯罪性は無いはずであるが、患者が死亡した事によって医師を始めとする医療関係者が刑事事件の被疑者扱いされるとすれば、大問題であり、これでは危険度の高い医療行為は出来ない事になる。

 救急医療や高度先進医療を行っている医療機関では高いリスクの重症患者を扱うが、もたらされた結果によってその業務が告訴の対象になるとすれば、業務が成り立たないし、一歩踏み込んだ治療は出来ず、萎縮診療になる。これは医師側にとっても患者側にとっても望ましいことではない。

 現在問題になっている医師不足による医療崩壊は、現実的には救急医療や高度先進医療を行っている医療機関の医師不足が一気に進んだために顕在化してきたが、その背景に医師法21条拡大解釈による医師のモチベーションの低下があり、医療現場から去っていく事も原因になっている。

 医療事故に関しては直接警察に届けるのではなく、中立的第三者機関の設立が望まれてきた。
 現在厚労省が中心となって準備が進められ、具体化しつつある。中立的第三者機関の設立はもう一歩と言うところまで進んでいるが、これは医療界にとって、患者側にとっても意義は大きい。
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医療崩壊(25)救急医療崩壊(5)秋大附属病院がついに広告を出した

2008年04月26日 04時40分04秒 | 医療、医学
 秋田大学附属病院が住民の方々に診療機能を周知させるために地方紙に広告を出し呼びかけた。内容は、以下の2点である。
■『高度・先端医療を提供する特定機能病院です。他の機関からの紹介状を必ず持参してください』
■『高度救命診療を担当する三次救急医療施設です。他の医療機関から救急車で搬送される特に重篤な患者さんの診療を行います』

 これと同じ趣旨の広告はTVスポットでも流したらしい。

 この広告の主たる目的は後半の部分にあり、附属病院の高度の救急診療体制が近隣地区の住民の軽症疾患の急患の受診によって物理的に占拠され、救急対応が限界状況、機能障害の域に達しつつあるからである。若手医師は過重労働で不満も高じて来ている、と言う。

 しかし、この現象は何も大学病院だけの問題ではない。秋田市内の二次救急を扱う救急病院にも特に20:00頃から軽症の患者が受診し救急診療担当医師を悩ませている。何でこの時間帯かというと、夕食を摂り、入浴など済ませてから、さて不調の家族を連れて受診、というような家族が増えてきているからである。救急車をタクシー代わりに利用する傾向も同じである。いわゆる、救急医療のコンビニ化である。これも医療崩壊の一因である。

 附属病院も困り果てたのであろうが、この広告だけでは「軽症者の急患難民」を作るだけである。軽症の患者達はどうすればいいのか、市内の他の救急病院を受診することになろうが、そこでも軽症患者が溢れて機能障害に陥っているという事情は同じであり、そこの負担を増すだけである。広告の前に、あるいは同時にやるべき事もあったように思う。

 救急診療の改善策の基本は、まず適正な受診指導による需要の軽減と、医療提供側の機能分担であり、病診、病病連携である。秋田市の救急診療の今後は医師の学術的・機能的集団である市医師会の理解と行動に負っている。
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