福田の雑記帖

www.mfukuda.com 徒然日記の抜粋です。

警察、検察、裁判官には業務上過失が問われないのか(3)足利事件 

2010年01月29日 10時41分53秒 | 時事問題 社会問題
 1990年5月に足利市で父親がパチンコに熱中している間に4歳女児が行方不明になり翌日河川敷で遺体が発見された事件が足利事件である。半年も後の12月に逮捕され、無期懲役で服役中に釈放された菅家氏が先日NHKのラジオ深夜便のインタビューに登場した。

 菅家氏は無罪判定となる予想のもと現在再審公判中であるが、先日取り調べの様子を記録した録音テープが再生された。新聞報道で見る限り身体的な拷問というよりは精神的に追い詰められた様子が見て取れる。かなり厳しい状態に追い込められた状況をラジオでも語っていた。

 氏の話を聞いていてかなり誠実な方だとの印象を持ったが、更にご本人は幼少の時からの自らの性格を、身体的にもひ弱であったが、とても気が弱く、周りの強い意見に反論できず黙ったり、納得できなくとも従ってしまう性格であったと述べていたが、聞く限りそのような印象も受けた。事件に関する詳細は私には分からないが、アリバイに関しての情報はどうなっていたのか、私が知っている範囲の情報には無く、分からないが当然アリバイ証明は出来なかったと言うことになる。しかし、半年前のアリバイを証明する事は困難である。私が生活記録を付け続けているルーツは職質の時に味わった恐怖感である。

 氏が述べた性格の特徴は私自身のそれとそっくりである。私も職質を3回受けたが、自己の正当性を何所まで主張できるか自信はない。自分がもし菅家さんの立場だったらと、背筋が寒くなる。この事件の判決に大きな役割を演じた当時のDNA鑑定であった。氏を真犯人にするには矛盾点もいくつかあったとされるが、科学的新知見が優先され、それに辻褄を合わせるために疑わしい事実は次々と修飾され、氏を犯人とする事件のストーリーが仕上がっていった、と言うことである。 

 密室での取り調べが録音すされていたことは朗報である。取り調べの「可視化」は重要であるが、捜査当局は一部の可視化には同意しているが全面実施には抵抗が強い。

 菅谷氏が犯人とされるプロセスには警察、検察、裁判官、鑑定者とかが大勢関与している。冤罪を生むと言うことは真犯人を逃した事でもあり、無実の人の人生を台無しにしたと言うことから業務上の過失を問われてしかるべきである。当時の検事は証人として出廷したが、菅家氏に謝罪はしなかった。国家権力の元で業務をしていた方にとっては個人的見解や感想を述べられないのであろう。

 一人の担当検事に責任を負わせるべきではない。関与したすべての関係者が責任を問われるべきであり、場合によっては罪が問われてしかるべきだろうと思う。
 私ども医師は判断がリアルタイムに要求され、時には考えるまもなく治療を開始せざるを得なくなることも少なくない。その際、間違いをおかしていることが後日分かった場合には医療過誤として刑事、民事的に罪を問われることになる。同じ国家資格でありながらこの違いは何なのか、私はまだ納得できていない。
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医師の行為規範(5)医師の異常な労務状態(3)過労死

2010年01月28日 19時34分55秒 | 医療、医学
医師の過労死報道記事からの概要の続き。

■2004年12月○○病院の部長医師53歳。1999年自宅で自殺。公携災害認定。99年1-6月までの残業時間は月平均90時間、外来や入院患者の診察や手術も担当。同年7月に不眠などを訴えて1ヵ月休職。復職後、出身大学から医師派遣を断られ翌日に死去。
■2001年8月○○医科大付肩病院の耳鼻咽喉科研修医26歳。1998年自宅で急性心筋梗塞により死亡。地裁は研修医を労働者と判断。死亡前の2ヵ月、午前7時30分から指導医の捕助で連日午後10時頃まで勤務。終日休んだのは6日間のみ。
■1999年4月○○病院産婦人科医師35歳。1996年帰宅車中にて急性心筋梗塞で死亡。死亡直前の1ヵ月は休日が2日、夜間当直勤務は10日、当直明けもそのまま勤務。産婦人科責任者として治療や分娩の合間に事務作業。
■1990年1月○○大学付属病院の小児科女性医師43歳。1907年当直室で倒れクモ膜下出血で死亡。労災認定。死亡直前の最低12日間は休日なしに働き、この間に夜間当直2回、当直明けも夕方まで勤務。
■1997年6月○○病院外科医26歳。1990年自宅風呂場で急性心不全により死去。公携災害認定。死亡直前の1週間は病院の76時間勤務に加え、自宅で約15時間の学会準備作業。
■1992年8月○○病院院長代行61歳。1987年院内で倒れ心不全により死亡。公務災害認定。1月から院長心得となり新病院建設などで多忙を極め、肉体的・精神的な過労が持病在悪化させ、当日の議会答弁準備による精神的ストレスが直接的要因となった。
〔上記報道記事は中居あさこ氏作成 Medical ASAHI 2007 Juneから引用し内容を簡素にした〕

 これらの例の勤務状況は極端であり、異常としか言いようがない。
 詳細は不明であるが、病院の管理者はこの様な死に至った医師達の勤務実態を把握していなかったのだろうか?はなはだ疑問である。

 2007年3月○○病院の男性小児科医44歳は1999年に病院屋上から身を投じて自殺した。日常業務は8:00am-6:00pm、月平均6回、多いときには8回の当直をこなしていたという。全国の小児科医の平均は3.5回というので明らかに異常状態である。労働基準局は当初労災と認めなかったが裁判で労災認定されている。
 労働基準局の判断は月8回の当直があっても仮眠は出来ていたはずだ・・等として認定しなかったと言うが、本来労働者の権利を擁護すべき立場にあるものとしてあまりの非常識さに驚くばかりである。

 この医師の遺族は勤務先の病院に対し12.000万円の損害賠償を求めていたが、一昨年10月遺族側の控訴を棄却した。判決では医師の加重状態と死亡との間の因果関係は認定したが、本人が病院に相談しなかったから、病院が健康状態に対する配慮などの注意義務を怠ったとは言えない、と裁判は結論づけている。遺族は上告するとの意向だったとのことであるがその後どうなったのかフォローしていないので不明である。

 これらの記録を読むと、医師が社会的にあまりにも不当な扱いを受けている事が分かる。だから、医療崩壊は社会が作り上げた状況である。
 古くから権利意識を捨てて社会に貢献してきた医師達、今でも権利意識の乏しい集団を見なされており、そこにも問題があったのだが、権利意識に目覚め始めた時にあまりにも大きな壁に突き当たり、自らの限界を感じて病院から立ち去っていく。そして、病院医療が崩壊していく。それが実態である。

 
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医師の行為規範(4)医師の異常な労務状態(2)

2010年01月28日 05時27分10秒 | 医療、医学
 勤務医の勤務状況は厳しい。
 厚労省のまとめでは常勤医の勤務時間は週平均70.6時間である。
 労働基準法にある法定労働時間週40時間を大幅に上回り、月平均の時間外労働時間は月100時間を超え過労死レベルを超えている。
 医療環境は各国の歴史や文化によって異なるので単純比較は出来ないが、ヨーロッパでは週約40時間程度だから約2倍働いている。世界一受診率が高く、数的にも多い受診患者を少ない医師で診療している。わが国の医師は欧米の6-8倍の患者を診療している。
 厚生省ではなく、厚生労働省が上記のまとめを発表しながら何ら問題として提起せず、最近まで医師不足すら認めず、医師のエゴによる偏在が医療環境を悪くしていると言ってきた。労働基準法の視点から異常性を認めていながら何ら労務改善もしてこなかったのは犯罪的である。

 医師の過労死は10数件報道されている。
 以下に概要のみを示すが、何れのケースも大変な環境にあったことが分かる。これらのケースは労災認定とかされている、しかし、裁判等では個々のケースは論じるが、根底に潜む問題点をえぐり出すことはない。だから、同じような不幸なことが繰り返されていく。

 死に至らないまでも勤務医の健康は厳しい労務環境の中でむしばまれている。本当は勤務医を続けたいのだがこれ以上の業務は無理、と諦め立ち去る医師は少なくない。すると、残った医師の労務環境は一層悪くなる。これが病院医療の負のスパイラルであり、これが病院医療の崩壊につながっていく。

■2007年4月○○大学医学部付属病院の女性研修医26歳。2006年4月自宅で筋弛緩剤を注射して死亡。労災認定。05年4月から臨床研修。救命救急センターでは多い週で78時間勤務、日当直は月10回。過労からうつ状態に。
■2007年3月○○総合医療センター男性麻酔科医33歳。1996年自宅で急性心不全にて死去。
■2007年3月○○病院の男性小児科医44歳。1999年病院で自殺。労災認定。
■2007年2月○○病院の男性小児科医31歳。自宅にて心原性ショック死。労災認定。月の時間外勤務が平均100時間超、夜間当直が3-4回。院外での待機当番も月20-25日。1晩に5回呼び出された日もあり。
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ブタインフ(42)感染症対策の必需品となった石鹸は歴史が長いが普及は最近

2010年01月26日 13時10分12秒 | コラム、エッセイ
 実は私はそれほどではないが、一般的に日本人はとてもきれい好きな国民だといわれている。風呂好きで身体を良く洗うし、洗濯も普及しほぼ毎日怠らない。これは水が豊富だという風土に深く関連している。
 今は全自動洗濯機、乾燥機の時代で、人差し指一本で洗濯が出来る。私は、過度のきれい好きがエネルギーを多大に消費し、洗剤による環境汚染の源になっていると考えて実は心安らかではない。

 桃太郎等のおとぎ話にもある様に、洗濯は川辺から始まったが当時は実に大変な作業だったのだろう、汚れを落とすのに役立つものをいろいろ模索したと思われる。洗濯には、サイカチの実、灰汁や石灰など、また洗顔や入浴には、油分のある小豆の粉や米ぬかが使われて来た。これはそう古い話でなく、私が子供の頃はサイカチの実を拾いに山に出かけたものだし、また風呂場には小さなぬか袋があってそれで身体をこすった、と記憶している。

 実は石鹸は国産石鹸が誕生する300年も前、16世紀半ばに、鉄砲とともに日本に伝来していたが何故か殆ど普及していない。石鹸が一般の人びとにもたらされるのは、明治6年に国産石鹸が製造されてからのことで、生活必需品として定着したのは大正時代とされている。

 一方、ヨーロッパでは紀元前3.000年頃に脂と木の灰からつくる洗剤らしい配合が記されている。だから、歴史的にはかなり古い。長い時間をかけてヨーロッパで改良が重ねられ、12世紀ごろには現在の石鹸とも見まがう香料入りの高級品まで作られた。しかし、ヨーロッパは概して水が貴重で、水と石鹸で汚れを洗い流すよりも、安い香水で臭いをごまかす方が安上がりだったと言う。当時の女性はどんな臭いをプンプンさせていたのか、想像するだけで鼻が曲がりそうで具合が悪くなる。

 長い歴史を経て、現在、私たちの暮らしに必需品となった石鹸であるが、感染症予防には欠くことが出来ない存在になっている。ただ職場では殆ど固形石鹸は見ることが無くなり、すべてプッシュ式の液体石鹸になってしまったのは些か寂しい。
 固形石鹸にはさまざまな個性があって新しく取り出すときなど心ときめくものがあった。
 「ミツワ」「牛乳」「エメロン」などの良いにおいがしたブランド品は今どうなっているのだろうか。
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患者の入退院が激しく書類処理が間に合わない!! 医療秘書がもっとほしい

2010年01月25日 09時03分09秒 | 医療、医学
 医師の診療外業務が増えている。何とかしなければならない問題である。

 私は比較的病状が落ち着いた慢性期の患者が入院する療養病棟を受け持っている。そこでの受け持ちは30名ほどで、一般病棟にも5-8名ほどいるので入院患者数は数の上では多い方である。療養病棟の患者は病状が比較的安定していると言え高齢だからいつ何時何が起こるか分からない。死亡する方もおられるし、施設や慢性期病院に転院していく方、いわゆる居宅系とされる施設のデイサービス、グループホームを利用する退院も多いから患者回転は早い。

 患者の入退院時、主治医として用意すべき書類はとても多い。紹介状や介護保健の主治医意見書、訪問看護の指示書、身体障害者申請などなどで何時も看護師、病身連携室などから催促される。
 中でも最も時間がかかって大変なのは退院時総括書である。

 私は木曜午後から日曜午前までのかなりの時間を費やして懸案書類等を処理している。年末年始休暇も出てきてかなり処理したが、本日午前にやっと2009年分の退院時総括を終了した。実に大変な作業であった。
 ホッとしたところで、机上の未総括カルテコーナーに置いてある年明け以降に退院した患者の未総括カルテを数えてみたら24人分あった。一日一人のペースである。1月に入ってからは死亡された患者も多かった。小児科とか産婦人科領域では更に患者回転が速いから総括書も多いだろうが、あまりためていないようで大したものだと感心している。

 最近、医師不足、勤務医の業務改善のために医療秘書を配置した際の加算が認められ、私どもの病院でも書類の一部を代行入力あるいは記載してもらえるようになった。まだ代行業務はほんの一部でしかないが、僅かであってもとても助かっている。
 今年の医学部定員は09年度と比べて360人増の8846人となり、過去の最大募集者数と並んだとされるが、これの効果が出るのは10年以上も後のことでそれまで医師不足は解消されない。

 現状で医師に診療外業務を担わせるのは無駄である。医療秘書をもっと増員できる診療報酬上の采配が期待されるところである。医師の診療外業務を軽減し、勤務時間を診療に従事させれば、勤務医のモチベーションは高まるし、医師不足のかなりの部分が解消する。喫緊の問題である。
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