福田の雑記帖

www.mfukuda.com 徒然日記の抜粋です。

最近の医療状勢(3)医療界の展望(1)

2007年05月31日 06時09分25秒 | 医療、医学
 政府、厚労省は低医療費政策をあらためる気配は見えないし、医師数の絶対的不足すら認めようとしない。今の医療界に展望は殆ど見えない。特に、私的医療関係者は自らの将来に漫然とした不安をかかえて運営している。展望の乏しい将来をかかえての運営は非常にストレスフルである。

 日本福祉大学二木 立教授から私は日本医師会病院委員会の場で日本の医療の問題点等について親しくお教え頂いているが、教授は先の日本医学会総会で「医療改革-敢えて希望を語る」と題する特別講演をされた。その内容が日本医事新報2007/5/26号に掲載された。
 教授は従来から日本の医療制度改革は国民皆保険制度と非営利医療機関主体の医療提供体制を維持する必要があり、そのためには「世界一」厳しい医療費抑制政策を見直し、公的医療費の総枠を拡大する必要がある、と主張しておられる。
 そのためには、医療者がまず自己改革を行い、国民・患者の医療不信を払拭することが不可欠であるとの前提を挙げ、個々の医療機関レベルでは、●個々の医療機関の役割の明確化、●医療・経営両方の効率化と標準化、●他の保健・医療・福祉施設とのネットワーク形成または保健・医療・福祉複合体化の3項目を挙げている。より大きな制度改革としては、●医療・経営情報公開の制度化、●医療法人制度改革、●医療専門職団体の自己規律の強化、の3点を挙げている。
 教授自身も、前政権が強行した厳しい医療費抑制政策が昨年臨界点を越え、このままでは医療荒廃が生じると危機感を持っておられるとのことであるが、同時に、医療界とマスコミ、さらには安倍政権の中に、新しい動きが生まれてきていることに注目されている。

 私どもの病院も決算内容は厳しい状態であった。法人内各施設の収益によって法人全体としては大きな欠損を出さないで済んだ。しかし、今年度は、来年度は・・と考えるとそう大きな展望が目の前に開けているわけではなく、決して気を抜くことは出来ない厳しい状況が続いていくだろう。

 そんな中、私は機会あって教授より原稿を頂き、早々と読む事が出来たが、結果的に気持ちが随分明るくなった。こんな時勢の中、注目すべき論文である。医療関係者の方々には是非一読されることをお勧めしたい。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

エスカレーター(3) 階段代わりに歩くのは間違い、とのこと

2007年05月30日 06時35分26秒 | コラム、エッセイ
 先日、私はエスカレーターを階段代わりにして歩いている、と記載したら早速メールにて注意を受けた。本来、エスカレーターは、ステップ上に立ち止まって利用することを前提に作られているとのことで、片側に寄って立つと荷重バランスが崩れ、不具合を誘発する可能性があること、歩いたり走ったりすると振動で安全装置が働き、緊急停止することもある、とのことであった。その上で社団法人日本エスカレーター協会のホームページを紹介された。

 私は都会地では急いでいる人のために片側に立つのがマナーなのかな、そのために幅の広いエスカレーターが設置されているのだろうと、何も考えずに思いこんでいたが、全くこれは誤解と言うことになる。昇降者が多いときのために2列幅のエスカレーターがあるとのことであった。

 日本エスカレーター協会の危険行為の説明には多数の項目が記載されているが、関連する項目は以下の3点であった。●すり抜けは危険です。他の利用者や荷物と接触して、思わぬ事故を引き起こすことがあります。●歩いたり走ったりすると身体のバランスを崩し、転倒するなど、大きな事故を引き起こすことがあります。また他の利用者を巻き込む恐れもあります。●ケガなどで、片方の移動手すりにしか、つかまることのできない方もいます。たとえば左手を骨折していて、右手でしか手すりにつかまれない方がいらしたとします。その方はエスカレーターの右側にしか乗れませんが、右あけが慣習となっていたらとても不自由で危険です。

 確かにその通りだと思う。ただ、ここまで用意しているのであれば、エスカレーターの乗り口とかに注意書きでも置くべきだと思う。一部の地域、施設ではそのような動きがあるとのことであるが、私は一度も見たことがない。幅広のエスカレーターの場合には是非そうすべきであろう。
 これを機会に私もちょっと反省した。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

院内感染対策の権威、波多江新平先生を迎えての学習会

2007年05月29日 06時08分08秒 | 医療、医学
 本日夕方は院内感染予防対策の世界的な権威、波多江新平先生を迎えての学習会が旧千秋会館で開催された。多忙な方であろうが、一医療機関の学習会のためにわざわざ来秋し、一時間ずつ2回にわたって講演された。実に有り難かった。
 院内感染症対策の権威としての地位は揺るぎないものがあるが、権威等という言葉が相応しくないほど、実に気さくな方であった。経験を十分に積んだ実地医家であり、話の内容は単に院内感染予防策に止まらず、いかにコストを軽減するか、病院経営に寄与するかと言う方面にまで及び大変有意義な会であった。私は第一部しか聴けなかったがその終わりに謝辞を述べた。


 波多江先生、本日は大変ご多忙の中、中通総合病院の感染制御部の学習会のために秋田までおいで頂きましてどうも有り難う御座います。しかも、2コースにわたってご講演いただくとのことで、病院を代表して心から感謝いたしたいと思います。

 私は当院の院長であると共に、血液免疫学をいささか囓ったと言うことなどから秋田県医師会では感染症等危機管理対策部門の責任者をつとめており、新型インフルエンザ対策、麻疹対策等をおこなっております。その関係もあって、日頃から波多江先生の業績に関しましては院内感染の記録集やインターネットでの検索から知っておりました。また、各種の文献を通じて私は常日頃から先生の教えを受けて来たと思っております。まさか、私共の学習会で先生に直接お目にかかる事が出来るなどとは思ってもおりませんでした。

 私どもの病院は残念ながら院内感染対策という面でハード面から見て時代にそぐわない構造をしています。そのために院内でノロウイルス感染者が職員も含めて多数発生しましたし、インフルエンザでもMRSAでもいろいろ苦慮しています。

 新病院建築の際には是非とも感染症対策を意識した、院内感染に強い病院の構造にしていきたいと思っております。それまでの間は、私どもはスタッフの学習意欲と知識、判断力、行動力を最大の頼りにして行かなくてはなりません。本日の第一部の講演では会場に入りきれないほどの職員が出席したのを見て、私は心から安堵しました。

 本日は院内感染対策について、実に分かりやすくお教えいただきまして本当に有り難う御座いました。誤解していた部分もあって目から鱗が数枚落ちました。
 最後になりますが、今日の会の開催にあたっていろいろお世話いただきました明治製薬KKの皆様に心から感謝申し上げます。

 このような楽しい雰囲気の講演ならば後半でもう一度お聴きしたかったと思いましたが、次の会議を控えておりますので、私はここで失礼いたします。
 今一度、大きな拍手を持って波多江先生に感謝の意を表したいと思います。本当に有り難う御座いました。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中通病院(19) 昭和63年7月副医局長になる 

2007年05月28日 06時16分31秒 | 自己紹介・自伝
 昭和63年7月、院内の規定による選挙で信任されて副医局長となった。長く副医局長を務め、今回、医局長に立候補したK医師から協力要請があり、揃って立候補したものである。選ばれれば苦痛・苦悩が増すポストだから対立候補が出るはずもなく、この時は反対者はあまり居なかったようで信任された。
 7月8日の法人内広報紙「日報めいわ」に以下の一文が掲載されている。編集部の求めに応じて記載したものだったと思う。
--------------------------------------------------------------------------
 この度、推薦されて副医局長になりましたが大変なことと緊張しています。まずはあまり構えずに、医局長を補佐するという役割から果たしていきたいと思います。私自身、まだ民医連についてよく分からないこともあり、勉強していかなければなりません。しかし、医局運営委員会がしっかりしているので何かと安心です。最近、民医連医療や民医連資料を引っ張り出して目を通すことも多くなりました。

 大規模病院医局がかかえる問題点の一つとして、多様な価値観を持つ人間が増え、そのままではまとまりに欠けるという事が挙げられます。例えば、今回私が副医局長に選ばれたこともその一つだと思います。価値観が多様だと言うこと自体は素晴らしいことで、大切にしたいものです。
 明和会の医師団としては、少なくとも医療観については一定の方向性が得られるものと思うし、その点でまとまった集合体として病院におけるリーダーシップを発揮できるはずです。

 具体的には今年度の医局の活動方針を形あるものにすることにつきますが、難問も抱えているので1年では出来ないかもしれません。医局会議はいろいろな意見をぶつけ合い、論じ合える雰囲気を大事にしたい。

 また研修医の中からより多くがスタッフとして戻ってきて欲しいと思います。そのためにも医局が医療展望を持ち、各々が責任と義務を負いつつ十分に力を発揮できる様な環境を皆で作らなければならないでしょう。
----------------------------------------------------------------------------------

 もうこれを記載してから20数年にもなる。いま読み返してみると何と抽象的な、何を言いたいのか分からない様な文章である。
 この20年の間病院の機構も変わり、医局のメンバーも随分入れ替わっている。それでも、中段のあたりは当時も今も殆ど変わらない共通の問題点であり、悩みでもある。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の医療状勢(2)医療費削減で現場は夢と士気を失いつつある

2007年05月27日 09時51分42秒 | 医療、医学
 昨年4月に診療報酬が3.16%と過去最大の引き下げが行われた。いま医療機関は患者減と診療報酬削減が、重くのしかかっており青息吐息状態である。
 この状態はもう限界である。こんな状況が更に続くと医療関係者は使命感、夢を失い、医療崩壊が一層進んでいく。

 厚労省は医療を量的拡充から質の向上に視点を移している。それは正しい。しかし、方法が良くない。医療事故とか、院内感染などが問題になると次から次と改善命令の文章を発行する。しかし、人も費用も一切出さない。全て医療機関に自主努力を求めてきている。だから、医療の質を高めようとすると医療機関では自らの頸を絞めるような事態に追い込まれていく。次の診療報酬改訂の際にはその面をクリアしていないと加算が取れないようにするなど経済的に締め付けてくる。それでも医療機関はサービス改善に努めている。患者から利用されなくては運営が出来なくなるからであるが、資金は乏しく身銭を切ってサービスを維持している。

 小泉前首相はいろいろな意味で日本の医療を米国型に近づけようとしてきた。日本の医療現場には患者への医療提供体制の面では米国に学ぶべき点など殆どないが、医療事故が問題になるとマンパワーやコストをかけて問題点を改善するという方向性だけは米国から学ぶべきである。

 わが国独自の国民皆保険制度は最小限のコストで最大の効率を上げてきた。しかし、その背景にはマンパワーや人件費には最小限に抑えてきたという現状がある。だから世界一の効率を上げることが出来た。それを支えてきたのは医療人の使命感であった。しかし、これからも同じ方向で行くならば、医療人は夢を失い、士気を失い、倫理観さえも失っていく。

 日本の医療費がいかに安いか、国民には殆ど知られていない。
 長期療養型の入院コストは一日8000円からであり、病院の条件によっては3000円と言うところもある。最低限の小さな調度と寝具、TVしか置いていないレベルの安いビジネスホテル以下のコストである。この中から医師、看護師、コ・メディカル、事務員、他のスタッフ達の人件費、施設維持費等をどうやって出せと言うのか。これでは乾いたタオルから水を絞り出せと言う論旨に等しい。

 無理ですよ、安倍さん、こんな状況では。もう医療人は気力さえも維持できませんよ。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする