私は今まで高齢者の方を対象に「安楽死」「尊厳死」「良い死を迎えるために」といった題名で講演を10回以上行ってきた。その中では,あの世には地獄はないが、この世に、現代医療の中に、地獄がある、だから、それを味合わないためには、死に臨んだ時に何をして欲しいのか、何をして欲しくないのか、本人の意思で決めることだ、と言い続けてきた。
私が担当する外来に通院してくる患者で延命治療不要の意思表示をしている高齢の患者は10数名いるが、大部分の方は無症状、体調の良いときの表明で、あまりあてには出来ない。第一、どんな状態の変化を来すのか、それによって対応はすべて異なるし、他の病院に搬送されることもあるだろう。だから、意思表示がある旨のメモを保険証につけておくように、かつ家族の同意を取っておくように、意思表示をしっかり書き留めた書状を用意し置き場を明記しておくように、と言っている。そこまで本気で実行している人はいないようだ。要するに外来主治医の私との間での納得のレベル、話題のレベルで、実際には殆ど役立たないだろう。外来で時折死を話題に対話できているだけでも良いだろう。
死に臨みつつある患者に、延命となる治療・処置をどこまで行うべきかは明確な指針はない。例え本人の意思表示があっても、疾患によっても異なるし、急な変化なのか、緩徐な変化なのかによっても異なる。人工呼吸器をつけるか否かの判断においては医学的判断が最優先されるべきだが、医師と言えども先を見通せるわけではない。
医師はやるべきことをしなかった場合には、やり過ぎと判断されるよりも厳しい非難を受けることが多い。だから、患者の急変時等には担当医は当座延命治療を開始する。また、家族の意向も無視できない。家族は多くの場合動転しているから、少しでも長く生きていて欲しいと、濃厚な治療を望むことが多い。医師と家族の判断が全く異なることすらある。
延命治療を開始し、それなりの結果が見えてきた時点では医師も、それなりの安堵感、満足感を得る。家族にとっても同様だろう。しかし、その結果、患者が長期にわたって意識も戻らず、自発呼吸もない植物状態あるいはそれに近い状態で安定し、恒常状態になって先が見通せなくなると医療者、家族共にそれぞれの立場で新たなジレンマに陥ることになる。
このような場合の治療の継続あるいは中止についても、わが国には明確な指針はない。
だから、富山県射水市民病院の呼吸器外しの様な悲劇が生じることになる。今回の事件では患者本人、家族、主治医、病院管理者・・関係者すべてが被害者であって加害者はいない。加害者は国であり、社会であり、国民である。
困難な課題であるが避けて通るべきでない。早急に指針を作るべきだ。
私が担当する外来に通院してくる患者で延命治療不要の意思表示をしている高齢の患者は10数名いるが、大部分の方は無症状、体調の良いときの表明で、あまりあてには出来ない。第一、どんな状態の変化を来すのか、それによって対応はすべて異なるし、他の病院に搬送されることもあるだろう。だから、意思表示がある旨のメモを保険証につけておくように、かつ家族の同意を取っておくように、意思表示をしっかり書き留めた書状を用意し置き場を明記しておくように、と言っている。そこまで本気で実行している人はいないようだ。要するに外来主治医の私との間での納得のレベル、話題のレベルで、実際には殆ど役立たないだろう。外来で時折死を話題に対話できているだけでも良いだろう。
死に臨みつつある患者に、延命となる治療・処置をどこまで行うべきかは明確な指針はない。例え本人の意思表示があっても、疾患によっても異なるし、急な変化なのか、緩徐な変化なのかによっても異なる。人工呼吸器をつけるか否かの判断においては医学的判断が最優先されるべきだが、医師と言えども先を見通せるわけではない。
医師はやるべきことをしなかった場合には、やり過ぎと判断されるよりも厳しい非難を受けることが多い。だから、患者の急変時等には担当医は当座延命治療を開始する。また、家族の意向も無視できない。家族は多くの場合動転しているから、少しでも長く生きていて欲しいと、濃厚な治療を望むことが多い。医師と家族の判断が全く異なることすらある。
延命治療を開始し、それなりの結果が見えてきた時点では医師も、それなりの安堵感、満足感を得る。家族にとっても同様だろう。しかし、その結果、患者が長期にわたって意識も戻らず、自発呼吸もない植物状態あるいはそれに近い状態で安定し、恒常状態になって先が見通せなくなると医療者、家族共にそれぞれの立場で新たなジレンマに陥ることになる。
このような場合の治療の継続あるいは中止についても、わが国には明確な指針はない。
だから、富山県射水市民病院の呼吸器外しの様な悲劇が生じることになる。今回の事件では患者本人、家族、主治医、病院管理者・・関係者すべてが被害者であって加害者はいない。加害者は国であり、社会であり、国民である。
困難な課題であるが避けて通るべきでない。早急に指針を作るべきだ。