「火の鳥」といえば、手塚治虫さんの漫画やバレエ音楽を思い浮かべる方が多いかもしれません。翼が炎のように輝く、想像上のその鳥が、ソチ冬季パラリンピック開会式の“案内役”を務めました
ロシアの民話に登場し、当地では「幸せ」の象徴とされるのだそうです。しかし、開会式でそんな心境とはほど遠い国がありました。ウクライナです。36番目にアナウンスされると、ロシアの人々で埋まるスタンドは大歓声で迎えました。それが次第に静まっていったのは、23選手のうち1人しか現れなかったからです。抗議の意思をこめて
大会直前、同国にロシアが軍事介入し、選手団はボイコットか否かで悩みました。「平和を願う思いは変わらない。選手の活躍で思いを世界中に伝えるため、ソチに残る」。同国パラリンピック委員会の会長は、決断の理由を語りました。とりあえず、最悪の事態は回避されました。とはいえロシアの行為は、開催国として許されないのは当然です。スポーツを通じて平和な社会をつくるという五輪、パラリンピックの理念を深く傷つけたのは間違いありません
国際パラリンピック委員会のフィリップ・クレイバン会長は選手に呼びかけました。「皆さんは変化の触媒です。皆さんには世界を変える力があります」
きっと選手たちは見せてくれるに違いありません。全力でたたかった後、互いにたたえ、結びつき、国境の「壁」を溶かしてくれることを。“平和の触媒”としてのかけがえのない姿を。(しんぶん赤旗「潮流」より)