2日付の新聞に元外務省国際情報局長の孫崎亨さんがインタビューに応じて次のような発言をしていました。
テロ招く集団的自衛権『いつまでもショパン』という音楽ミステリーを読みました。ショパンのピアノコンクールがポーランドで開かれ、そこでテロが起こる。
テロは大統領をも狙う国家に対する復讐ですが、捕らわれたテロリストが大統領に向かって、「あなたたちが遠い異国に派兵しているのは国の体裁や利益のために、肌の色の違う人間を無差別に殺しているだけだ。あなたに復讐を嗤う(わらう)資格などない」と叫びます。
小説はフィクションですが、ポーランドは対テロ戦争でアフガンやイラクに派兵しました。1968年にソ連がチェコに侵攻したときもポーランドは軍を出しました。アメリカのベトナム戦争も含め、集団的自衛権が口実です。
大きな「コスト」
このように集団的自衛権は、自国の防衛と関係なく外国に出て行き人を殺す。恨みを買い、復讐とテロを呼び込むという大きな「コスト」を払うことになります。
日本は、アメリカと違ってテロを念頭に国の安全をつくっていない。新幹線や地下鉄がやられたら一気にだめになる。ほとんどの公共の建物が対策していない。北朝鮮リスクが今まで以上に強くなる。集団的自衛権行使に乗り出すことは日本の安全を害するのです。
集団的自衛権の行使は、ソ連崩壊以降、軍事力で世界を「改革」するというアメリカの戦略に巻き込まれ、それに従って戦争に参加することです。しかし、イラク、アフガンをみれば、アメリカの軍事介入で現地・地域の不安定は高まり、世界が不安になりました。
「中国の脅威」が強調されますが、集団的自衛権は日本の防衛とは関係ありません。アメリカも尖関での日中の衝突は回避したい。結局、アメリ力の都合に合わせて、自衛隊を海外で使うだけです。
平和のルールを
これだけの問題を国民的議論もなく、国会審議もやらずに閣議決定一つでやる、という安倍首相の政治姿勢は異常です。日中の緊張をめぐりいま学ぶべきは、ASEAN(東南アジア諸国迎合)が中国との紛争で追求している「南シナ海行動宣言」です。東シナ海でも、武力の不行使をはじめ平和的ルールづくりの対話が重要です。尖閣の領有権問題で私は共産党と意見の異なる点もありますが、平和のルールづくりでば100%一致します。
聞き手 中祖寅一