安倍首相の福島原発の放射能は「ブロックされている」などという発言がうそであり、放射能汚染は深刻な事態にあることはすでに明らかになっていますが、9月29日、NHKEテレが「海の放射能に立ち向かった日本人ービキニ事件と俊鶻丸(しゅんこつまる)」という番組を放映しました。
1954年3月1日、アメリカが太平洋ビキニ環礁で行った水爆実験で、日本のマグロはえ縄漁船・第五福竜丸が被ばくしました。船長の久保山愛吉さんが原爆症で死亡しました。被害は水産物にも及び、日本各地の港では放射性物質に汚染されたマグロが相次いで水揚げされます。
しかし、核実験を行ったアメリカは、放射性物質は海水で薄まるため、5キロ圏外ではすぐに無害になる、800kmをこえるとゼロになると主張、ところがこのとき、アメリカ国内では日本のマグロを輸入規制をする矛盾した態度をとりました。
当時、水産庁は漁業の危機をすくうため、日本独自に海の放射能汚染の実態を解明しようという一大プロジェクトが始動、海洋や大気、放射線の分野で活躍する第一線の専門家が結集、「顧問団」と呼ばれる科学者たちのチームが作られました。ビキニ環礁への調査船を派遣します。これが「俊鶻丸」です。
俊鶻丸の活躍でマグロの放射能が高い食物連鎖を確認、水爆実験の危険性を暴露しました。
さらにマグロの臓器に放射性物質が蓄積すること、それが水爆の破片である亜鉛であることも明らかにします。ところが政府はマグロの放射能の測定を中止します。アメリカの原子力委員会が最大許容量なるものを示し、日本に水揚げしているマグロはすべて超えていないとしたためでした。
これに対し27人の科学者が公開質問状を政府に提出しますが、アメリカ言いなりの政府はこれを無視します。60年間対米従属という姿勢は変わっていないのですね。番組ではさらに海流にそって、マグロから放射性物質が発見された場所も明らかにされます。拡散しているのです。
海流は30年を周期に日本の南の海洋をまわっていることも明らかにし、一度、海洋に放射能がでたら、薄まるどころか滞留してしまうということもわかりました。
番組では福島原発からの放射能汚染水が水深500m程度で大量していることも科学者が追跡していることを紹介、安倍首相が完全にブロックされているなどということがウソであることを見事に証明しました。
さらに俊鶻丸の科学者グループは日本科学者会議で放射能対策として「環境放射能研究所」を立ち上げて、原発も含む放射能汚染から国民を守るための活動を開始するよう提案していました。歴代自民党政権はこうした科学者の提案を無視し、原発の「安全神話」に取りつかれ何もしてこなかったことが明らかになりました。
なお、1954年59年前のリーダーであった気象研究所の三宅泰雄さんが「死の灰とたたかう科学者」という単行本を発行しています。岩波新書です。
なお、この番組はNHKオンデマンドでみることができます。