足立区の生きがい奨励金を削減する条例案が強行されました。削減に反対する討論を紹介します。
ただいま議題となりました第14号議案、足立区生きがい奨励金支給に関する条例の一部改正する条例に日本共産党足立区議団を代表し、反対の立場から討論を行います。本案は生きがい奨励金の支給金額を現行4000円から3000円に減らすための条例改正であります。区長は今年の予算編成を「明日のために時代の変化に挑む」と特徴づけ、その象徴に生きがい奨励金の削減をあげています。その理由として生きがい奨励金対象者が10万人を超え、事業総額が4億円を超えていることや人口減少社会の到来と高齢者が増え、ピラミッド型の人口構造がこれまでの騎馬戦型から肩車型にかわり、扶助費が増え続ける。そうしたことを含めて痛みを伴う改革もやむを得ないとしています。
しかし、人口構造が高齢者一人を3人で支える騎馬戦型から高齢者一人を一人で支える肩車型になると予測しているのは、48年後の2060年で、今、そうなっているわけではありません。しかも、政治の努力によって人口減少に歯止めをかけることを放棄した考え方にもとづくもので、「時代の変化に挑む」どころか「時代に変化にただ従う」消極的な姿勢であります。
区財政の現状についても、生きがい奨励金を設立した平成2年度と現在の財政状況の対比でみても、平成2年の財調基金は68億円、減債基金はゼロでした。しかし、22年度決算では財調基金220億、減債基金219億と現在の方がすぐに使える基金で6倍の余裕があるのです。さらに24年度予算では基金総額は23区第2位の857億円と区民施策を支える余力は充分にあります。
しかも、削減した財源を高齢者の肺炎球菌ワクチン助成に活用するとしていますが、包括予算制度のもとでは、義務的経費は各部に振り分けられており、もともと予算の款が違うものです。これをあたかも肺炎球菌ワクチンにふりむけたかのようにというのは、区民を欺く議論であり、生きがい奨励金を削減する理由にはなりません。
生きがい奨励金はもともと戦後の日本社会を築き上げてきた高齢者を敬い、労苦をたたえる敬老の精神から発したものですが、平成2年制定された条例では「高齢者が生きがいある人生を送るための生涯学習活動、地域活動、福祉活動への参加を促進し、支援するためのもの」と事業目的を発展させました。そのため、条例制定時には70歳以上5000円、75歳以上7000円でしたが、生きがいを奨励するにはもっとお金がかかるので5000円では足りないという議論があったほどです。
しかし、前区政のもとで、7000円から5000円にさらに4000円に削られました。これをさらに3000円に削減してしまうことはまさに生きがいの削減です。高齢者の生活実態調査によると区政にのぞむ施策について「生きがいを見つけられるような地域団体や活動の育成など生きがいづくりへの支援」が33.1%と高い要望となっており、「生きがい奨励金」は区民ニーズや高齢者の生活実態からみて、削減どころか増額すべきであります。わが党はそうした区民ニーズをうけとめ、区民委員会では現行の4000円から5000円に支給額を増額する修正案を提案したのであります。今からでも遅くありません。高齢者に住んでいてよかったといえる足立区にするため、生きがい奨励金の削減は認めないという議会の意思を示すよう求め反対討論を終わります。