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パネラーは
伊藤圭一 全労連調査局長、
増田正人 法政大学社会学部教授
黒川俊雄 慶應義塾大学名誉教授・桜美林大学名誉教授
小越洋之助 國學院大学経済学部教授
真嶋良孝 農民運動全国連合会副会長
筒井晴彦 労働運動研究者の6名でした。
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はじめに本書のまえがきに次のような記述がありました。
アメリカが主導するグローバル化において、新自由主義政策がとられ、格差と貧困が広まっている。日本では「国際競争力強化」を合言葉とした多国籍企業の個別利益優先行動と大企業の膨大な内部留保の蓄積、それを擁護する国家の政策、このことによる雇用・就業不安や賃金・所得の低下と格差の拡大、社会保障の抑制などによって、労働者・国民の労働と生活の不安、ワーキング・プア化か進行している。
本書はこのような状況のなかで、現在の日本において進行している貧困や停滞から脱却するために、グローバル化の視点を重視し、そのなかでの国民的最低限保障の意義、その重要性を提起している。
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ILO(国際労働機関)が提起しているディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の具体化と、全国一律最低賃金制を軸とするナショナル・ミニマム(国民的最低限保障)の確立を柱とした「もう一つのグローバル化」を本書では展開し、問題を提起しています。
多国籍企業の利益を擁護する体制としてのWTOの成立、その特徴と問題点を考察している。また、サブプライムローンの破綻で顕著になった「金融危機」の性格、新自由主義政策の破綻の経過を述べる中で、グローバル経済のメカニズムが労働に基礎を置かないという致命的問題点があることを指摘している。そして、労働者・国民のナショナル・ミニマム保障や内需拡大の意義、あるいはグローバル・ガバナンスの重要性を指摘している。ここでは、現在進行しているグローバル経済化という大変化の本質とそこでの課題について、国際経済論の分野から読者への平易な理解を促進することを意図しています。
さらに、WTO体制下で新たな段階に入ったグローバル化への対抗策として「もう一つのグローバル化」の課題が重要なこと、全国一律最低賃金制を挺子(テコ)とするナショナル・ミニマムの法制化と、ILOが提起したディーセント・ワークの実現をめざし、その具体化として、自営業・独立労働を含む広義の労働者の保護や近年問題になっているとくに派遣労働の保護の視点について、ILO条約とその討議の検討を前提として問題提起している。なお、併せて解雇規制や企業の社会的責任についても指摘している。
また、グローバル化が格差と貧困を広げるなかで、日本におけるその特徴について、とくに労働面でのワーキング・プア問題、それと密接に関連する非正規雇用化、男女格差を指摘し、その背後にある低賃金問題に焦点を当てている。ILOのディーセント・ワークの提起を意識しつつ、その解決の展望として、最低賃金の引き上げとともに、全国一律最低賃金制の確立と公契約法・条例の制定の意義を挙げている。
今日の労働者・国民の生活不安の有力な理由に所得保障面でのナショナル・ミニマム保障の不在があるという認識から、日本における公的年金制度を分析し、国民的最低限保障の制度の一環としての最低保障年金制度の必要性と必然性をグローバル化におけるILOの「社会保護」の展望と関連して述べ、諸外国のその形態についてもふれている。なお、本章の末尾で、最低保障年金と関連して生活保護基準・最低賃金・基礎年金の関連について試論を展開している。
日本社会全体として展望のない閉塞感が広がっているとき、この現状打開のために、なぜわれわれがこの問題を重視しているのかについて、ぜひ本書を手にとって、ここでの主張を十分吟味してもらうことを願ってやまない。
増田 正人
黒川 俊雄
小越洋之助
真嶋 良孝