親から子への「貧困の連鎖」を断ち切ることをめざす「子どもの貧困対策法」の具体化が進んでいません。今年1月に法律が施行されたのに、政府の対策会議は開かれないままです。それどころか、4月から消費税増税を強行し、困窮状態にある子どもや親の暮らしに追い打ちをかけようとしています。貧困に拍車をかける逆行した政策を根本から改め、子どもの貧困克服にむけて本腰を入れる政治が求められます。
子どもの貧困対策法の具体化がすすまない
苦しい家計を考え進学をあきらめた。お金がないのでクラブ活動参加を我慢している。修学旅行に参加できない―。経済的理由から、つらく悲しい思いをする子どもたちが後を絶ちません。子どもの貧困は年々広がり、最新の政府統計(2009年)では子どもの6~7人に1人が貧困状態という過去最悪の水準に達しています。
人生が始まったばかりの時期に、教育を受ける権利や機会を奪われ、将来にたいする夢や希望すら持てない人たちが増え続けていることは一刻も放置できません。
昨年6月の国会で制定された「子どもの貧困対策法」(全会一致で成立)は、深刻な事態の打開をめざした重要な法律です。同法は目的に「子どもの将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう、貧困の状況にある子どもが健やかに育成される環境を整備する」ことを掲げ、教育や経済的な支援など行うことを、国の責務として明記しました。子どもの貧困克服を求める世論と運動が、実を結んだものです。
同法は、政府が基本方針などを盛り込んだ大綱を策定し、都道府県が大綱にもとづく計画をつくることなどを求めています。しかし、安倍政権は、対策の出発点となる大綱を決定する「子どもの貧困対策会議」を一度も開いていません。せっかくできた法律を“たなざらし”にすることは、実施に期待を寄せる国民の願いに背きます。
安倍政権は、子どもの貧困対策法の理念に真っ向から逆らう政策を次々と打ちだしています。その象徴は、一人親世帯の生活をささえる児童扶養手当の削減です。13年度の0・7%削減に続き、14年4月からは0・3%の削減を実行します。8割以上が働いている母子世帯の総所得は、子どものいる平均世帯の4割以下にすぎません。ワーキングプア家庭を直撃する児童扶養手当の削減は、あまりに容赦ないやり方です。
昨年から実施している生活保護扶助基準の引き下げは、子どもの人数の多い世帯ほど減額幅が大きく、すでに深刻な影響が出ています。扶助基準の引き下げの影響は、生活保護世帯にとどまりません。貧困世帯の子どもの義務教育を支えるための就学援助の対象縮小につながりかねません。子どもを抱える貧困家庭を追い詰める政策はやめるべきです。
「自己責任」でなく政治の責任で
子どもは生まれてくる親や家庭を選ぶことはできません。子どもの貧困は、個人の「自助努力」や「自己責任」では解決できません。政治と社会の責任が問われます。
子どもの貧困をさらに深刻化する消費税増税は中止すべきです。大企業・大資産家に応分の負担を求めて必要な財源を確保し、子どもの暮らしと福祉、教育を充実する政治への転換が急がれます。