東京郊外の国立市。1月中旬の朝、ホームヘルパーの岡田千奈美さんが雪道を自転車で急ぎます。都営住宅の3階で1人暮らしの栗田栄子さん(93)が待っていました。「お変わりありませんか」。健康状態を確認し掃除の準備をします。要支援1の栗田さんは週1回訪問介護を利用。「ヘルパーさんが掃除機をかけて、拭き掃除もしてくださるので助かっています」
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同市は昨年4月から要支援者の総合事業への移行を開始。「緩和した基準による訪問型サービス」を導入し、ヘルパーによる「生活援助」の時間を1回45分に15分短縮。報酬を23%カットしました。市内の全訪問介護事業所がこれに参入。総合事業の訪問介護の95%を占め、栗田さんも同サービスを受けています。
たちまち40分が経過。「時間ですよ」、栗田さんがヘルパーの岡田さんに声をかけました。「お話しする時間がなくなりましたね」と栗田さん。岡田さんは実働時間が減り収入が落ちたと言います。
ヘルパーを派遣する地域福祉サービス協会・コスモス国立の服部文恵管理者(63)は訴えます。「これまでヘルパーが要支援の方といっしょに家事をすることで重度化を防いできました。それなのに時間や単価を削るなんて『予算削減先にありき』。重度化する危険があります」
総合事業への移行でコスモス国立の収益は減り、要支援者の受け入れを控えざるを得なくなっています。市当局も「『減収になる』と面と向かっていう事業者があることは否定できない」(高齢者支援課)と認めます。
さらに同市は研修を受けた無資格者による生活援助を計画しています。報酬は49%減です。服部さんは言います。「今後認知症の方が急増します。生活が組み立てられなくなる初期の認知症の方に必要なのは、生活全体を見通すことができる有資格のヘルパーによる援助です。なくなれば地域で暮らせません」
安倍政権 要介護1・2外しも狙う
自治体が介護サービスからの「卒業」や、基準緩和サービス導入に走るのは、国が総合事業費の伸び率を75歳以上の高齢者人口の伸び率(3~4%)以内に抑え込むよう規制しているからです。2035年度には2600億円の介護給付費の大削減になります。
改悪はこれにとどまりません。安倍政権は要介護1・2のサービスの保険外しまでねらっており、17年の通常国会への改悪案提出を計画しています。
介護保険改悪に反対してきた大阪社会保障推進協議会の日下部雅喜介護保険対策委員は語ります。「さらなる改悪を止めるためにも国に総合事業の撤回を求めるとともに、自治体に『卒業』や『基準緩和サービス』の導入をさせないたたかいが大事です。国に総合事業費の上限撤廃を求めながら、当面、事業費が不足すれば自治体にも財源投入を迫っていく必要がある」しんぶん「赤旗」より
要支援者の保険外し 介護保険の要介護認定は軽度な者から、要支援1、2、要介護1~5に分かれます。改悪では、170万人の要支援者の5割以上が使う訪問介護と通所介護を保険から外し自治体に丸投げします。