増税分にも届かず
現在の最低賃金は、平均764円。最高額は東京の869円、最低額は沖縄など9県の664円です。目安は都道府県ごとにA~Dの4ランクに分け、A19円、B15円、C14円、D13円としました。目安どおりに引き上がると、平均は780円になり、前年の2・1%増となります。
今年は、安倍政権による消費税増税の強行や物価上昇で、生活が苦しくなり、最賃の大幅引き上げが実現するかに注目が集まっていました。目安は、昨年の平均14円(実際の引き上げ額は15円)より2円高い程度にとどまり、消費税の増税分(3%)にも届きません。
政府と経団連、連合が合意している「できる限り早期に全国最低800円、2020年までに平均1000円」との目標にも、目安は追いついていません。205円にまで広がった地域格差の解消も焦点でしたが、この目安では、211円に広がります。
世界では、最賃引き上げが行われています。米政府は時給7・25ドル(約740円)を10・10ドル(約1030円)にしようと提案。州・自治体レベルでは実現したところもあります。ドイツも全国一律最賃制度の導入間近で、8・5ユーロ(約1165円)とされています。アジアでも貧困打開と内需拡大による経済発展のため、最賃引き上げが取り組まれています。
最低賃金の改定は、10月1日からの適用が目指されています。毎年、多くの地方審議会で目安を上回る引き上げを決定しています。
全国一律制が世界の流れ
労働総研代表理事の小越洋之助さんの話 最低賃金の引き上げ額そのものが低く、Aランクですら時給1000円に届いていません。とりわけC、Dランクという最低賃金の低い地域で大幅引き上げになっていません。さらに今回の目安答申で地域間格差が拡大しました。雇用機会が少なく、賃金水準が低ければ、若者は都市部に流出してしまいます。地域ごとに最低賃金額を決める現行制度は限界です。全国一律最低賃金制は世界の流れであり、日本の現状からも求められています。
最低賃金 これより低い賃金で労働者を働かせてはならないという最低限度。時間額で定められています。最低賃金法で定められているもので、違反すれば刑事罰もあります。中央最低賃金審議会の目安を参考に、地方の審議会で審議・答申し、異議を受け付け、都道府県労働局長が決定します。