南斗屋のブログ

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調査事務所のビデオ撮影を不相当とした裁判例 下

2006年11月18日 | 高次脳機能障害
 調査事務所のビデオ撮影を不相当とした裁判例は、
  横浜地裁平成18年5月15日判決(自動車保険ジャーナル1662号2ページ)
です。

 このケースで、調査事務所が行ったことは、
1 被害者らを2週間にわたってひそかに追跡調査した
2 写真などの撮影が禁じられている施設内で被害者の水泳の様子等を写真とビデオで撮影した
3 被害者らの自宅の玄関付近で室内にいる姿をビデオで撮影した
というものです。
 
 判決は、これを
 「社会通念上許容される限度を超えた不相当な行為」
であると認め、慰謝料を増額する理由としました。

 この判決のポイントは、ビデオや写真の「撮影行為」を
  社会的に不相当だ=許されない
としたことにあると思います。
 個人に肖像権(顔を同意なく撮影されない権利)があることは、最高裁判例も認めており、刑事事件の捜査でも一定の条件が整ったときでなければ違法であるということが定着しております。

 横浜地裁のケースでは、撮影禁止場所や玄関付近で被害者を撮影したことが問題とされており、肖像権の侵害が明らかであるといえるでしょう。

 しかし、それ以外のケースではどのような判断がこの先出るかはまだ明らかではありません。
 たとえば、単なる尾行にとどまり、撮影がなんらされていないケースも考えられますが、尾行の態様が一般常識に照らして不相当でなければ、このような調査も適法であるという判断がでる可能性はあります。

 現在、会社には法令順守(コンプライアンス)が求められており、損害保険会社も例外ではないのであり、今後どこまでが調査として認められるのかは注目していく必要性があるでしょう。 
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