南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

原告は「詐病」と断じた裁判例 上

2006年02月06日 | 未分類
交通事故にあった被害者が「詐病である」と断じた裁判例をみかけました。(さいたま地裁 H17,12,14判決 自保ジャーナル1623号2頁)
この被害者、交通事故にあったことは、間違いないようなのですが、「介助具がなければ歩行困難の状態」との後遺症診断を受け、身体障害者手帳(2級)を取得しています。
しかし、自賠責での後遺障害の認定は非該当。そこで、本件訴えを提起したようですが、「詐病」と判決で書かれてしまいました。
判決文によれば
(1) 医療記録からみて、客観的な所見が一切発見できない。
(2) 原告は車両運搬用のトラックをひとりで運転し、そのトラックに軽自動車を運転して載せたり、降ろしたりという作業をした。
(3) キャスターのついた板の上に、仰向けに横たわった姿勢で、自動車の下に潜り込んで作業をした後、その仰向けの姿勢から、跳ぶように元気よく立ち上がったりもしている。
(4) (2)や(3)のときには、杖も介助具もなしで普通に歩行している。
とのことで、つまり、普通に仕事をして、車を運搬する仕事をしているではないか、と認定されてしまったのです。
(2)~(4)がどうして認定されてしまったかといえば、調査会社がビデオをとっていたのです。


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脳脊髄液減少症の勝訴判決の記事

2006年02月04日 | 未分類
 毎日新聞は交通事故関係の記事に結構きを使っているところですが、脳脊髄液減少症で勝訴判決が出た記事が載っていました。
 訴えされている事案もぽつぽつ出てきており、潜在的には10万人いるのではないかということですから、これから大きな問題になってくるかもしれません(以下記事の引用です)。

<脳脊髄液減少症>鳥取でも被害者勝訴 「事故で発症」認定 [ 01月29日 03時00分 ]

交通事故で「脳脊髄(せきずい)液減少症」と診断された鳥取市内の男性(36)が、加害者の男性を相手取って治療費など約980万円の支払いを求めた訴訟で、鳥取地裁が今月11日、加害男性に治療費など約670万円の支払いを命じていたことが分かった。古賀輝郎裁判官は判決で「事故で発症した」と因果関係を明快に認定した。脳脊髄液減少症を巡り、被害者側勝訴が明らかになったのは2件目。潜在的な患者は国内だけで10万人以上ともいわれており、国の対策が待たれている。【山下貴史、渡辺暖】

 判決によると、被害男性は02年9月、車の助手席に同乗中に加害者の車に追突され、さらに対向車に衝突された。被害男性は体調不良が続いたが、加害者側の損害保険会社は「けがは軽い首の痛み程度」として半年で治療費の支払いを打ち切ったうえで、加害者がさらなる治療費の支払い義務がないことを確認する裁判を起こした。このため被害男性が反訴していた。

 訴訟では、脳脊髄液減少症の治療経験が豊富な医師が被害男性の症状に関する鑑定を行い、脳や腰部のMRI検査などから、脳脊髄液減少症と診断する鑑定書を提出した。判決は、この鑑定結果を「信頼性が高い」としたうえで「頭痛、けい部痛、腰部痛、めまい感、吐き気などに関する男性の訴えが虚偽だとうかがわせる証拠はない。事故の結果、脳脊髄液減少症が発生した」と結論付けた。

 加害者側は、脳脊髄液減少症の概念を全面否定している著名な整形外科医が「3週間以内の治療で済む」とした意見書を提出したが、判決は「意見書はことさらに傷害の程度を軽く見ようとしている。到底信用することができない」と一蹴(いっしゅう)した。

 ◇司法、因果関係認定の流れ=解説

 「交通事故で脳脊髄液減少症が発症した」と認めた鳥取地裁判決は、周囲の無理解から二重三重に苦しんでいる患者を勇気付けるとともに、因果関係を認める司法の流れが定着しつつあることを示している。国は、脳脊髄液減少症を巡る医学的な論争を、事故当事者や司法に負わせたままにしており、被害者保護の観点からも早急な取り組みが必要だ。

 事故と発症の因果関係を認めた民事判決は、福岡地裁行橋支部判決(昨年2月)に続いて2例目。津地裁伊勢支部でも因果関係を認めた和解成立(同7月)があった。加害者の刑事処分でも、「被害はむち打ち症の軽傷」とした当初の医師の判断が覆ったケースが分かっている。

 脳脊髄液減少症は、脳と脊髄の周囲を循環している髄液が漏れると、頭痛やめまいなどの症状を起こす。交通事故などの難治性むち打ち症の「真相」とされる。

 むち打ち症の患者の中には、痛みや周囲の無理解に基づくトラブルに耐え切れず、自殺する人さえいる。脳脊髄液減少症の研究は数年前に始まったばかりで、治療に取り組む医療機関は全国に数十しかなく、患者が診察を予約することすらも困難な状況にある。さらに、事故との因果関係を巡る当事者間の争いが、司法の場に持ち込まれるケースが増加している。

 国に脳脊髄液減少症の研究を求める意見書を採択した都道府県議会は、この約2年間で16都府県に達した。厚生労働省や国土交通省、法務省など関係する省庁は、患者が置かれた実態を調査し、早急に対策を講ずる時期にきている。【渡辺暖】


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高次脳機能障害2級の裁判例(横浜地裁)下

2006年02月02日 | 未分類
このケースは
H11年5月    事故
H13年2月    自賠の当初の認定=神経系統について9級
H14年9月    異議申立てに対して精神症状について2級認定
という経過をたどっています。

 事故の当時は、高次脳機能障害の等級認定のシステムが、確立していなかったとはいえ、当初の認定が9級にしかならなかったということには、驚きを覚えます。
自賠の認定は書面審査ですから、きちんとした後遺症診断書や、医師の所見を記載した意見書を提出しませんと、適正な認定がなされません。
このケースでも、当初の認定から異議申立てに至るまでに、医師の意見書等が提出されているようであり、これが自賠の認定を大きく変更させるようになった理由だと思います。

 2級というような重度の後遺障害ですと、介護料を請求することが可能ですが、 このケースでは症状固定前の介護料として
・ 入院期間については半分しか認めない
・ その間の介護料は日額6000円
・ 通院期間は日額6000円
を認めました。
 入院期間の介護料が低くなっているのは、病院の看護体制が完全看護であることが理由として記載されておりました。

症状固定後の介護料は
 日額6000円を平均余命まで
認めました。
この額を認めたポイントとしては、
・ 将来介護は必要であるが、その内容は基本的には声掛けと看視である。
・ 日常動作は基本的には自分ですることができる。
・ 将来介護体制について、原告の年齢などからして近親者の付添が基本となる。
ことをあげてます。
 将来の介護料をどのように考えるかは、大変難しい問題ですが、ひとつの参考になる裁判例であるとはいえるでしょう。


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