リタイア暮らしは風の吹くまま

古希を迎えて働く奥さんからリタイア。人生の新ステージで
目指すは悠々自適で遊びたくさんの極楽とんぼ的シニア暮らし

ああ、芸術の秋の虫

2013年10月10日 | 日々の風の吹くまま
ワタシが尊敬するアリス・マンローがノーベル文学賞をもらった。カナダのチェホフと言
われ、エレガントな白髪のおばあ様という感じで、ワタシには憧れの人だな。だだっ広
い国に3300万人しかいなくて、しかも英語を母語としない人口の比率も高いカナダで
は、5千部売れたらベストセラーの範疇に入るくらいに市場が限られているので、有名
になっても作家業だけで食べて行くのは難しい。そのカナダからノーベル賞文学者が
出たんだもの、うれしいを通り越して誇らしい気持。

ゆうべの芝居の構成や心理の絡み合わせの巧妙さにいたく感銘を受けて、だれていた
ワタシにもまた創作意欲がわいて来たところだった。気持はだれていても、翻訳業と言
う、まあ一応は「書く」仕事をやっているせいか、頭の中も心の中も様々なドラマや感情
がいつも万華鏡の状態。それが何らかのきっかけに刺激されて、もやっとした形を作っ
ては「言葉で表現しろ!」と要求して来る。最近はいろんな意味でその「きっかけ」が重
なって、ワタシの「書きたい虫」が卵から孵ったのかもしれないな。

卵から孵りたての書きたい虫はまだ「青虫」なんだけど、一緒に「絵描き虫」も「弾きたい
虫」もぞろぞろと孵化して来てしまったから、「芸術の秋」は罪深い。とりあえず「書きた
い虫」が這い回った手書きノートを出してみた。壊れた自分を再構築するつもりでカレッ
ジの創作講座を受講し始めてから書き始めたノートは3冊。気持が穏やかなときは細
かな字で書いてあるけど、心の中で嵐が吹き荒れているときは字も大きくて乱雑な書き
方。さすがに3冊目になるとそういう荒れた文字はめったにないけど、自分の精神状態
がもろにわかる貴重な記録でもある。

ジャーナルと呼ばれるこの種のノートは手で書くことに意義があるんだけど、ワタシの
手は漢字もカナも忘れてしまったし、日本語では自分の深いところにあるものを表し切
れないというもどかしさもあったので、すべて英語で書いてある。3冊目はあと数ページ
で終わりだから、新しく4冊目を始めようか。柔らかな革のカバーには新しいワタシのイ
ニシャル。いつかこの中からドラマの種が芽を出すかもしれない・・・と「永遠なる劇作家
志望」のワタシは果てしない夢を見る。ああ、芸術の秋とはよく言ったもんだ。