尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

文楽『源平布引滝』をシアター1010で見る

2023年12月14日 22時57分00秒 | 演劇
 北千住のシアター1010(せんじゅ)で文楽の公演を見てきた。国立劇場が建て替えのため閉場になって、文楽はどこでやるのかと思っていたら、地元に来たのである。歌舞伎や落語は他でいくらでもやっているけど、東京の文楽公演は国立小劇場だけだった。そこで数年間の代替劇場を探して、北千住にも来ることになった。そして、都民劇場の半額鑑賞会に出てたから、申し込んだら当たった。ということで、珍しく夫婦で見てきたわけ。近いから30分で帰れるのがうれしい。

 入院したときに思ったけど、映画、演劇、落語などなど僕の好きなものは、じっと座って見ている必要があるものばかりなのである。これじゃ「エコノミークラス症候群」にわざわざなりに行ってるもんじゃないだろうか。今後血栓みたいなのが出来たら、生活に支障が出てしまうかもしれない。ということで、演劇や寄席は長いからちょっと敬遠気味である。しかし、今回のものはずっと前に申し込んで当たったものである。果たして一緒に見に行けるだろうかと病院で気になっていた。やはり、たまには必要だな。
(シアター1010)
 今日は2時間20分程度で、間に25分も休憩があるから短くて良い。出し物は『源平布引滝』(げんぺいぬのひきのたき)で、全然知りません。作者がチラシに書いてないから調べてみると、並木千柳三好松洛の共作で、1749年に初演されたものである。
この作者は『仮名手本忠臣蔵』『菅原伝授手習鑑』『義経千本桜』の三大狂言を書いた人だという。そう言えば、忠臣蔵を書いた人を多くの人は知らないだろう。ちょうど12月14日なんだから、文楽の千住デビューは忠臣蔵にすれば良かったのにな。

 話はメチャクチャで、木曽義仲出生秘話というようなものである。竹生島の近くの琵琶湖で、平家方の武将斎藤実盛(さいとう・さねもり)が源氏の白旗を手にして逃げる女「こまん」の片腕を切り落とした。一方、源義賢が平家に追われて、子を宿した葵御前が近江の九郎助の家に匿われている。そこで清盛の命令で斎藤実盛と瀬尾十郎がやってくる。葵御前が産んだ子が男子なら見逃せないのだが、そこへ「こまん」の腕が拾われてくる。実は「こまん」はこの家の娘だった。実盛は「こまん」の片腕が葵御前の産んだ子として場を収めようとする。って、いくら何でもムチャクチャすぎるだろ。

 それ以前に、義仲が生まれたのは埼玉県の武蔵嵐山近くである。前に散歩して紹介したことがある。義仲の父、源義賢は平家に追われたのじゃなく、兄である源義朝と関係が悪化して、義朝の長男義平に襲撃されて殺されたのである。源氏の内輪揉めなのに、強引に源平の争いにしている。ま、江戸時代からしても数百年も前の話であり、見ている人もどうでも良かったんだろう。話は怪異譚縁起譚になっている。それは昔の話は大体同じである。物語は個性のぶつかり合いじゃなく、此の世は絡まる因縁で動くというのが当時の人々の世界観なのである。

 ちょっと舞台から遠く、人形の動きが見えにくかった。その分、浄瑠璃語りの太夫が近くに見え、熱演ぶりが興味深かった。これが場所が違うと人形ばかり見ることになり、その方が面白い。はっきり言って話は大したことなくて、人形や語り、三味線は批評するほど知識がない。たまには古典芸能もいいんだけど。これからも時々北千住でやるはずだから、東京東部の人はチェック。
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