尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

「常識」より大切な「良識」ー都知事選ポスター掲示板問題

2024年06月22日 22時01分22秒 |  〃  (選挙)
 2024年6月20日に都知事選が告示され、何と56人もの候補が立候補した。事前に用意したポスター掲示板は48人分しかなかった。あらたに掲示板を増設するんじゃなくて、何でもクリアーファイルに入れて自分で留める方式なんだとか。選管がまさかそんなことを考えているとは思わなかった。東京以外から見ると、さぞ東京では知事選で盛り上がっているように思うかもしれないが、自分の実感では今までになく盛り上がってない。主要政党が軒並み(建前上は)推薦、支持をしてないから、いつもならよくあった自民、公明、共産などのビラ配りがない。「つばさの党」問題があったからか、遊説日程も余り大きく出てない。
(自宅近くの掲示板)
 ところでマスコミでは「ポスター掲示板問題」、まあ「掲示板ジャック」というか、いわゆる「N国党」による「掲示板販売」が問題になっている。そうすると、東京ではどこもポスター掲示板が大変なことになっていると思うかもしれない。だけど、上記画像にあるように、僕の自宅近くの掲示板(午後5時頃)には、9枚のポスターしかない。朝方には8枚だったから、今日1枚増えた。東京辺境部の掲示板には今のところ全然貼ってない。いつもこんな感じで、東京23区でも外れの方は無視されているのだ。

 「掲示板ジャック」なんて、どこの話だろう。多分島しょ部や奥多摩などは、もっと少ないのではないか。それでも48人分もする掲示板を用意しなくちゃいけない。僕は昨日は新宿、今日は池袋に出掛けたけど、駅前に全然掲示板がなかった。昔は駅前にもあった気がするが、こんなに大きくなると、設置場所も限られる。公立学校や公園なんかの周り以外は難しいかもしれない。週末なのにどの陣営の駅前広場で選挙運動をやってなかった。立候補者ばかり多くても、選挙運動がないんじゃ盛り上がらない。
(「掲示板ジャック」)
 画像を探してみると、確かに掲示板周囲に同じポスターがズラッと並んでる写真があった。これは一見して「おかしい」し「あり得ない」だろう。選管に抗議が集中しているというが、選管ではなく「やってる政党」に抗議するべき問題じゃないか。選管は公職選挙法で明確に禁止されている事項しか注意出来ないだろう。だが、「明文で禁止されてなければ、やって良い」というもんじゃない。違法じゃなければ合法だというのは、「常識」の世界ではそうかもしれない。だけど、そんなことを実行したら「品位」が疑われる。「子どものヘリクツ」みたいなことを大人がやってる。

 ホントに公職選挙法で禁止されてないのか。ネットで検索して2度読んでみたが、確かに明文の禁止規定はないと思う。ただし、公選法の第一条「総則」では「この法律は、日本国憲法の精神に則り、衆議院議員、参議院議員並びに地方公共団体の議会の議員及び長を公選する選挙制度を確立し、その選挙が選挙人の自由に表明せる意思によつて公明且つ適正に行われることを確保し、もつて民主政治の健全な発達を期することを目的とする。」となっている。

 まあ当たり前のことしか書いてないとも言える。だけど、選挙は「選挙が公明適正に行われることを確保」という大原則が書かれている。立候補する自由があっても、ポスター掲示板に選挙に関する政見以外ことを貼ることは、違法じゃないとしても適正ではない。「掲示板を売る」ことは、ポスターを見て立候補者の名前や政見を知るという目的を阻害している。本来そこは立候補者の政見を書いたポスターが貼られるはずのスペースである。その意味では、はっきり違法とは言えないとしても、選管が「注意」または「中止勧告」することは可能なんじゃないか。

 こういうことを見ていると、大切なのは「良識」なんだなと思う。「常識」では違法じゃなければ禁止できないとなる。だが「良識」では、法の規定に関わらず選挙の目的から外れているからやるべきじゃないと自ら判断出来るはず。この「良識」という感覚を多くの人が共有していないと社会は成り立たない。その意味で困った問題で、法改正によらず是正する道がないか日本国民にも問題が投げかけられている。方法がなければ法改正の必要があるだろう。

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