実戦教師塾・琴寄政人の〈場所〉

震災と原発で大揺れの日本、私たちにとって不動の場所とは何か

楢葉の学校へ 実戦教師塾通信六百一号

2018-05-25 11:23:12 | 福島からの報告
 楢葉の学校へ
     ~一度目の訪問として~


 ☆初めに☆
昨年春に新校舎が完成して、楢葉の中学校と小学校(北小と南小)が新たなスタートを切りました。初めての訪問です。
翌日(よくじつ)が小中合同の運動会だったのですが、この日は風雲急を告げる空模様、職員の皆さんが大変な中をお邪魔しました。

 1 校舎
 真新しい校舎、周囲の地面もまだ若々しさを感じさせるものでした。

「あれは、もともとあそこに作りかけてた校舎なんだよ」
あとで訪れた楢葉の渡部さん家だが、そう解説してくれた。
 その基礎が震災でやられたらしい。
「まだコンクリートが固まってなかったんだろうな」
いったん更地(さらち)に戻してからの作業だったという。
 校舎に入ります。初めは玄関。

これは図書室。

廊下から外が見えます。

「立派ですねえ」
私は思わず、案内してくれた中学校の教頭(織田島賢嗣)先生に言います。
「でもね、二階までしかない、小さいんですよ」
震災前の児童生徒数250名を収容できるよう、イメージしたという。
 運動会を明日に控えた廊下には、道具一式がひしめいていた。

天気予報では、東北地方の大雨を通知しており、
「これから実施かどうかの会議なんです」
と言う。翌日朝の前に決めようという判断なのだ。
 ちなみに渡部さんは、昨年の運動会、消防団として「参加した」そうです。
「でも、リレーは若い奴らが走ったんだよ」
と、思い出して笑うのでした。

 2 給食
 ニュースや「広報ならは」で話題になったランチルーム、そこでみんな給食を食べる。

小学生が食べてます。左側の空席、ここに授業時間が長い分、遅れて中学生が席に着く。
 この日のメインはマーボ豆腐。あとシューマイと野菜。牛乳に、デザートのパイナップル。

「中学生はこれで大丈夫なんですか」
栄養士さんに聞く。メニューは同じだが、分量は多いらしい。この写真は小学生のトレー。
 豪快な食べ方をする子を見ると、ついそばに行ってしまう。

左利きですね、この子。女の子です。ご飯にマーボ豆腐をかけて、マーボ丼にしてました。けっこうこの食べ方多かった。
 そして、中学生。配膳です。

均等に配ったり、食缶(しょっかん)を持って「追加」のリクエストがないかと、聞いて回ったり、いろいろでした。
「学年によって違うみたいですよ」(栄養士さん)

 食器からあふれんばかりにご飯を盛っている男子を見ました。バドミントン部だそうです。
「(復帰した)桃田みたいになるの?」
そう聞く私に、周(まわ)りが笑います。

 3 「分かるものではない」
 中学校の校長(荒木幸子)先生と教頭先生、北小学校の校長(佐藤昌則)先生、南小学校の校長(堀本晋一郎)先生に話を聞けた。荒木先生は、双葉郡小中学校校長会の代表である。
「やっと始まった学校もあれば、仮設の校舎もある。そして、今も臨時休業中の学校もある。ひと言ではくくれないんです」
私は前日の『福島民友』の、仮設校舎が始まる記事を思い出していた。富岡町の「東洋学園児童部」仮設校舎が、いわきの四倉で始まるのだ。そしてもちろん、大熊町や双葉町は帰還そのものが、スケジュールに上がる困難を抱えている。
「すべての子が、なんらかの被災をし、傷を負っている。被災したものの気持ちは、被災したものにしか分かるものではない」
楢葉ではないが、ずっと行方(ゆくえ)がわからずにいた生徒3人の最後のひとりが、昨年みつかったということも知った。
 ここの教職員も多くが被災しているという。9回の引っ越し、住居はもちろん生活用品やアルバムも含めすべてが流された、2年間の避難所での生活等々。聞いているうちに、申し訳ない気持ちになってしまう私だった。でも、たったの一カ月だが、震災当時に避難所暮らしをした、という私の話を聞いて驚く校長先生に、恥ずかしく思う私だった。
 思い出す。震災の年の4月、いわき豊間の海岸に、ワゴンに乗り合わせて作業に行くときだった。道を行く正装の親子連れとすれ違った。入学式に行く二組の親子だった。晴れがましいその姿に、学校が始まるんだ!という驚きと感動をしたことを。そしてその時、私と一緒のとなりに乗る男子は、「まだ卒業式を終えていない」「入学が見通せない」「中3」の子だったのだ。
「避難指示が出たんですが、私たちの町はバスをチャーター出来なくて、みんなお互い乗り合って逃げたんです。でも、車を持ち出せたことは良かったかも知れません」
多くの人が、自分の車を置き去りにし、そのままとなった。
 「あの時」の話をしてくださるのが、ただありがたかった。そして、またいらしてください、の声に頭が下がった。



 ☆後記☆
雨は未明(みめい)から本降りとなったのですが、夜明けとともにやみ、運動会日和(びより)の土曜日でした。
 ☆ ☆
渡部さんの畑です。相変わらずネギのような姿ですが、

近くでよく見れば、やっぱり玉ねぎなのです。

先日の「タラメ(たらの芽)の天ぷら」を「もらって帰れば良かった」という私の感想に、いやいや皆さん大笑いで。
「来月は新ジャガが出来るよ」
おばあちゃんの言葉に、恥ずかしい私です。
 ☆ ☆
ニュースでご存じと思いますが、福島の日本酒が今年も日本一。史上初の6連覇です。古殿町の小さな酒蔵「豊国」が金賞だったことで、私も喜びました。いわきのちっちゃな日本酒のお店「さはこ」で喜びを分かち合いたかったところですが、半年ほど前、デイサービスのお店に変わってしまったのです。
ところで全国の日本酒党の皆さんは、会津坂下の「飛露喜」が入賞しなかったことを、ずいぶん残念、いや危惧したのではないでしょうか。私もです。
でも嬉しい。福島の酒、おめでとう!
 ☆ ☆
前号で講演会の時間変更をお知らせしましたが、598号を修正しておきました。良かったら確認してください。

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