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震災と原発で大揺れの日本、私たちにとって不動の場所とは何か

水資源 実戦教師塾通信八百八十号

2023-09-29 11:38:42 | 福島からの報告

水資源

 ~エネルギーというもの~

 

 ☆初めに☆

8月の山梨・長野旅行レポートで書きませんでしたが、松原湖畔を歩いた時、小さな掘っ立て小屋を見つけました。

発電所でした。中部電力。昭和43年運転開始。取水量が0,91㎥とあります。出力は200kWを切ると思われます。私が良く紹介する広野火力発電所は1号機~6号機合計が440万kW。桁違いに小さいことが分かります。

今回の記事は、福島県楢葉町の水力発電所を見学して来た時のレポートです。この場を借りて、丁寧で親切な対応をしていただいた東北電力・水力電気課の方々に御礼申し上げます。

 

 1 発電現場

 このように、水力による小さい発電所が、日本という国ではたくさん稼働している。2017年のエネルギー白書によれば、その数は1500基以上に及び、前の年からも増えている。1万kW以下の小水力発電の設備容量は、国内の一般水力発電全体の約15%に相当するという。もっとも規模の小さい200kW未満の小水力発電設備については、300件以上が設備認定されており、そのうちの半分がすでに運転を開始している。1000kW以上の中小水力発電についても、1000kW未満(200kW以上)についても、多くが運転を開始している。

 案内していただいたのは、楢葉の木戸川第三発電所。80年以上働き続けている、最大出力1000kWの水力発電所だ。国道6号線沿いの楢葉の役所からだと車で約5分。タイトな山道を登っていくと、姿を現す。電力のもととなるダムから続く木戸川は、ここの山道沿いを静かに流れている。猛暑の日差しを和らげるように、水の流れは柔らかだ。

木戸川第三ダムからの水を引いてタービンを回す、いわゆるダム水路式発電だ。少し分かりづらいが、建屋後方に見える丸い煙突のようなものが鉄管内の急激な水圧上昇を逃がす調圧水槽(サージタンク)という設備である。下がいただいた資料の概略図だ。

多くの計器が並ぶ部屋に案内されて説明を受けた。東北電力の水力発電所は200個所以上に及び、全体を水力運用センターで遠隔監視規制している。水の流量・貯水量・落差が水力発電のかなめとなるわけだが、常に各所の発電量、ダム水位等を把握し、各発電所の運転停止、出力等の調整制御等を行っている。

ヘルメットと軍手を渡され、建屋に案内された。音がすごいですよと言われていたが、ホントにすごい。社員の方が私の耳元で叫びながら説明してくれるのだが、聞き取れない。写真が発電器機だが、地下のタービン(水車)と連動して回りながら発電する。地下まで行けば涼しいのかも知れないが、うだるような暑さが轟音と共に襲い掛かって来る。

 

 2 日本の水

 運転操作を開始して実際に発電するまでの「時間」がある。これが水力発電は数分と、他の発電方法とは桁違いらしい。また、水力発電は数ある自然エネルギーの中で、自然に負荷をかけない発電方法だという自覚を語る方々に、この仕事へのプライドを感じた次第である。

 福島原発からの「処理水」放出をめぐって、中国が「安全な水なら捨てることはないはずだ」という、私たちからすればズレた批判があったようだ。これは、日本での「湯水のように使う」という言葉が示すような、水事情の違いを表すとも思っている。日本の水使用の道は農業・工業、そして家庭用・飲料用にまで及ぶ。日本の水は、世界に有数の優秀な水である。だが、水が豊かな日本ではあっても、すでに開発が進み、技術的・土木的観点からすれば、電気事業用に水力発電所を建設できる場所は、ほとんどないらしい。自治体レベルの予算で設置できる川沿いの発電所や農業用水を利用したマイクロな発電などが実際に行われているのだが、そう簡単なことではないようだ。しかし、歯切れのよい自信に満ちた社員の方々の表情に、この日改めて、日本の水を考えるきっかけとなったことも確かである。

  発電所で仕事を終えた木戸ダムの水が、木戸川に戻っていきます。

 

 ☆後記☆

猛暑だったこの日、待ち合わせ場所になかなか到達できず、社員の方々を厳しい日差しの中で待たせてしまいました。携帯の電波が届くかどうか不安なのでと、目立つところに立っててくれたのですが、待ち合わせで失敗する私です。

伝言館から見える、この日の宝鏡寺。実は宝鏡寺脇の道を行くと、木戸川第三発電所はありました。

渡部さんが言うのです。オレたちが小学校の時、遠足は低学年が天神岬、中学年は木戸川の発電所に行ったもんだよ。みんなで弁当持ってな、と渡部さんの顔がほころびます。

 ☆☆

対馬市長の決断、すごいですね。市議会で通過した文献調査受け入れですが、僅少差だったことが「市民間の分断を招いている」と判断したこと。また、文献調査費用をもらった後の、いわゆる「食い逃げ」も同じ判断で一蹴したことです。お金の問題は「交付金20億円ではまかないきれない対馬の産業」と、具体的です。「感情論になってはいけない」とよく言いますが、こういうことなら納得ですね。


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