庭の祠(ほこら)
~現場/場所・下~
☆初めに☆
楢葉の木戸川を越えてすぐの信号を右折すると、遠足の子どもたちとすれ違いました。3年生か4年生の子どもたちの長い行列。笑ふるタウンまで行くのでしょうか。先生たちも笑顔。いいお出迎えを受けたような気持ちになりました。
コーヒーを飲んでいると、今度は観光バスから制服姿の高校生が、ぞろぞろと出て来ます。修学旅行のコースだったのでしょうか。にぎやかな笑ふるタウンです。
1 長い時
渡部さん宅の庭先の祠(ほこら)に咲いた見事なボタン。二月にみんなで来た時、写真を撮ったところ。
これはお稲荷さん?という私に、渡部さんの「氏神様だよ」という答。そして、あたりの樹木からは見えない向こう側を指さす。昔、渡部さんの祖先は海の方に暮らしていたという。
また思う。ここに来ると、私たちがずっと遠い昔に手放してきたものが残っている。何百年も前、よそからやって来たものが大地を踏み土着した。その時に降臨したか祀ったのか、それが「氏神」の基本中の基本だ。国や村の神様ではない、土着したものを守る「土地の守り神」だ。そうと分かっているつもりでも、いざこうして言われて見ると全く身体が受け付けていない。渡部さんが、説明しようにもどうにもしょうがないなという顔をする、その全く反対側に自分がいる。家によっては、これが石だけのところもあるし、オレんとこはこうやって周りを建物で囲ったんだ、と講釈を入れてくれた。ここの時間は、原発事故から十余年の時ばかりではない。ここに別な時間が流れるのは、人や土地が暮らしという場所を綿々と重ねて来たからなのだ。今も様々な生き物や牛が、そして渡部さんたちが何百年も前からそうして来たように、何百年も前からの土地を踏みしめている。
2 和牛・乳牛の相場
競りに出される牛は、古い方の牛舎だ。通りかかると、怖がるどころかカメラの真ん前に顔を突き出してくる。
「人懐こくてね」、奥さんが笑います。
外食産業が再開し始めたことで、牛の値崩れが止まった。「少し落ち着いてきたよ」と、渡部さんだ。ウクライナ戦争で、小麦・トウモロコシの供給減はひどい。前も書いたが、国の飼料高騰への補助は「ないよりはまし」程度のものらしい。子牛の相場変動を見せてもらった。グラフは上下に動くけれど、下降が基調となっている。
令和4年(2022年)の2月に始まったウクライナ戦争の影響がはっきり見える。ここに右肩上がりの円安が重なって、輸入飼料は暴騰した。コロナが追い打ちをかける。渡部さんは「原油の値上がり」も挙げた。牛に暖房のハウスは要らないが、飼料の乾燥がバカにならない。グラフは暮れあたりに、ようやく回復のきざしを見せている。賢明な読者は気が付いたかもしれない。グラフでは、軒並み牝牛の値が低い。しかも、虚勢牛の値段が高水準だ。もとはオスだった肉の方が大きくなることを思い出しただろうか。和牛(肉牛)の不思議、だ。
そんなわけで、和牛はオスが生まれてもいい。問題は乳牛だ。同じ畜産でも、蛭田さんのところは酪農だ。「乳を出さない」オスが生まれたら、手の施しようがない。しかも、乳牛はエサを良く食べる。飼えば飼うほど赤字がかさむのがオスの乳牛。肉にしたらどうかなんぞというド素人の浅はかな思い付きは、オスなら繁殖の役に立つのではないかという、血統など考慮しない発想と同じだ。ニュースが伝える「20万円で購入した子牛を1000円で売る」理由が、ようやく少しだけ分かったように思えた。
☆後記☆
居間で話す私の前に、奥さんの作った竹の子の煮物が。やや少しあって、残りわずかとなったこしあぶらが、天ぷらとなって出て来たのです。酒が要りますねぇ、口から冗談が出て来ます。もったいない。残して、お土産にいただいて、夜にお酒といただきました。ほんのりした苦みは春の味。♬短い旬の味は、その季節まで待てばいい♬(吉田拓郎)。
新しい方の牛舎。左下にぶら下がっている馬の毛のようなものはコキア。何本もありました。カラス除けだそうですが、ちっとも効き目がないそうです。「カラスは頭がいいよ」、奥さんが笑います。
☆☆
竹の子と言えば、二日前、東京・檜原村の敬愛する先輩から、立派な竹の子が届きました。
年賀状では、愛犬の死でペットロスになってると。今は「最後のペット」を探しているといいます。猟犬(甲斐犬)を勧められたけど、寿命が10年は長過ぎるなと思ったそうです。自分がいなくなって、残されたら気の毒なのです。資産運用だのカツラだのと、一体オマエらいつまで生きるつもりだという連中とは違うんだゾと思った次第です。
☆☆
次回、オオタニさんのことなど少し書きたいことが出て来てしまって、GWの記事は先送りしま~す
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