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チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

着物が繋ぐもの 33

2018年10月14日 14時17分49秒 | 日記
「女は入ってはいけない!」
徳島の藍染の工房に行った時男だけしか入ってはいけない
カメラマンが中に入り私はあまりよく見えない窓から作業を覗き込んでいた
(今年うちのスタッフが同じ工房に取材に行ったら平気で釜の周りを歩いたそうだ)

当然ここでも「どうして?」と聞く
「昔からそういうことになって居る」という答えだ
何か理由があるのであろう

そのあと各織物の産地に行き宿泊場所を探すのが困難だった
「女の一人旅は危険」
自殺するかもしれないのだそうだ

男のカメラマンと一緒に行くと一部屋しか与えられず
部屋に入ると布団が二つ敷いてある
慌てて一部屋ずつだと説明する
当時は女性のカメラマンは少なくなかなか割り当てに当たらない

1人の時も各部屋にお風呂はなく
共同風呂で女風呂もない最後の湯を使うくらいなら入らない方がいい
頭を巡らせ自腹を切って高級旅館に泊めてもらう事にした

そういう高級旅館ではほとんどおかみさんが仕切っていてすっかり仲良しになり
今だに交友が続いて居る旅館もある
いまでは遊びに行くのだがその度に当時の話で盛り上がる
いまではその頃の若女将が取り仕切っていて大女将も暇なのでのんびりと話し合うのも一興
二人で近くを散策するのも楽しい時間

江戸浴衣の長板染を取材した時
徳島での言いつけを守り藍甕のある室内には立ち入らないように気をつけていたら
「藍が立ってる状態見なくていいの?」
「えっこの部屋入っていいんですか?」
「いま混ぜるからね音を聞いていて」
カランコロンいい音色、それに泡の立ち方が美しい
「機嫌がいいんだよ」
こういう藍はいい色に染まるよと言って布をつけ始めた
窯から引っ張りあげてはまたつける
色が緑から藍色に変わって行くどういうわけか呼吸を詰めて居る自分に苦笑

連れて言ってくださった問屋の社長に
「お江戸は男女平等だわ」
と言うと
「尚
比佐子さんが女の部類に入ってないのかもよ」
と軽口を言われてしまった

確かに昔は神聖の場所なので不純な女は避けられたそうな
何が不純なの?というより酸性の女は色を変化させるという話らしい

またある時は
「ここからは遠慮してください」
と言われるところもある
それだけ藍染のというものは男の世界だったのだろう

「藍は立てるというでしょう?」と意味深に笑う男たち
こういう時は何も気がつかないふりをしていないと男達は増長してどこまでも話を作って行く
そういう意味では今の男はお品がいい

男と女の役目がきちんと決まっていた時代だったのかもしれない

父にこのような話をしたら
旅先は必ず一流ホテルをとって安い部屋にしなさい
汽車は2等車で移動するようにと注意を受けた
「その分出してくれる?」
「バカ言っちゃあいけないこれは先輩の忠告自分勝手に好きなことをして居るんだから自分の稼ぎのかで工面しなさい」
と付きはされてしまった

(つづく)


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